「きれいね、ここでこんな素敵な星空をみるなんて思いもしなかった。アミュータウンにもほんのわずかだけど自然が残されているのね。」
「ここはとても静かでしょ、喧騒のない穏やかな楽園。この丘から町を見下ろすとネオンが蛍みたいに輝いている。ヒカルあなたはまだ機密調査の仕事を続けているの。あなたこそ危険と隣り合わせじゃない。」
「ええ、まだ続けている。私どうしても母に会うまではやめられない。まだお母さんは元気でこの世界のどこかにいると思うの。世界各国を飛び回っていると、いつか出会える気がするから、何か手がかりがつかめると思うから、それまではやめることできない。」
ヒカルはテレサの手を握り締めた。
「こんなに大勢で押しかけてしまって、ごめんなさい。明日には出発します。あなたにまた合う事が出来で、本当に嬉しい。ありがとう。」
「ヒカル、あなたがここを訪れてくれて私もうれしいわ、あの時のお礼もできて、よかったと思っている。また困った事があればいつでも私を頼りにして。あなたの役にたてること、何よりも幸せだと思えるの。」
「ありがとう。」
その後ひとしきり、互いの近況を話し合った。言葉がつきることはなかったが急に冷え込んできたので急いで家路についた。
「ただいま、ハヤテ。ハヤテ、どうしたの、顔色悪いわね。」
「ヒカル、すまない。頼みがある。ミンヨたちは君だけで無事にキャルサンに送り届けてほしい。急用ができてしまった。」
「急用って」
「申し訳ない、どうしてもやらなければならないことがあるんだ。」
ヒカルはさっきまで、テーブルに置いていた新聞の号外がないことに気がついた。確かその号外はルピナスの反乱軍が、宰相であるセネカを捕らえ幽閉したと大きく掲載されていたはず。
「ハヤテ、あなたもしかして…。そういえばさっきブレアが話題に出たわね。あなた植物博士のハヤテ、そしてあなたはセネカ大統領のご子息でもある、そうに違いない。」
ハヤテは無言でうつむいた。
「何も言えない、君たちを巻き込みたくないんだ。ひとりで行かせてくれ。」
「ハヤテ、あなたそれはないわ。もう十分巻き込んでいる、このまま知らない顔なんてできない。あなたはもう大切な友人、そしてベリーも大切な仲間なのよ。」
ハヤテは深く息を吸いこんだ。
「実は私の父は、いま大変な状況にいるらしい。わが国ではクーデターが起こり、反乱軍が父を捕らえた。分かっているのはそのことだけ。もっと情報がほしい。新聞によると、父が汚職事件を起こしたのが引きがねとあるが父上に限ってそのようなことは断じてない。これは陰謀だ。私は父の潔白を証明し、父上を窮地から救い出したい。」
「何か考えはあるの」
「いやとにかくルピナスに戻る。」
「ハヤテ、はやる気持ちはよく分かるわ。でもなんの策もなく相手の懐に飛び込むのは、感心しないわ。まずはいろんな情報を集めて、最善策を考えましょう。テレサ、もう一つお願いを聞いて欲しい。ミンヨを無事にキャルサンに連れて行って。」
「もちろん」
ハヤテは天を見上げて祈った。
「どうか、ご無事で。」
ヒカルたちはまずはアリシパンに戻ることにした。自宅につくとゲオルクが温かくヒカルを迎えた。