ヒカルは、中心街で出発の準備を済ませた後、白浜に立ち寄った。彼女は、この地に移り住んでから海を見ることがとても好きになった。打ち寄せる波を見ていると幼い頃繰り返し枕元で、母が歌ってくれた唄を思い出す。ヒカルは、幼い頃両親と生き別れた。なんとなく母親のことは覚えている。いつもおやすみ前に、必ず本を読んでくれた。ものごころついたときから、彼女は猛烈に本を読みあさった。夜明けから漆黒の闇に辺りが包まれるまで、彼女はあらゆる本を読み尽くした。本を読んでいるとなんとなく、母が側にいてくれるような気がしたからだ。彼女は、優しかった母親に感謝した。そして、できることならば生きてまた再会したいと思っていた。しかし、父親については彼女は会いたいのか会いたくないのか、よく分からなかった。いつも家を留守にしていたから、彼女の記憶にはほとんど残っていない。生まれてから父親に会ったのはほんの数える程度だ。大地震が起こったのもちょうど彼の留守中だったから、その地震で大好きな母と生き別れてしまった悲しみと大事なときにそばにいてくれなかった彼をヒカルは心の奥底で許せていないのかもしれない。あまりにも幼すぎた彼女は、どうして母親と別れることになったのかも覚えていない。成長してから、周りの大人に教えてもらったのは、命からがら逃げてきた彼女達を町外れに住むコリンズが介抱してくれたこと。しばらく、コリンズの家にお世話になっていたのだが、回復した彼女の母親、サイファは、村人の知らせを聞くと、突然出かけたきり、そのまま行方知れずになっているということだ。コリンズは、姿の見えないサイファを心配して、ちょうど訪れていた政府視察団の一人ゲオルクに相談した。ゲオルクは仲間とともにサイファを探し歩いたが、なんの消息も掴むことはできなかった。独り身のゲオルクは、ヒカルを養女として迎えることにし、アリシパンに連れて帰った。彼女はゲオルクの愛情を一心に受けすくすくと成長した。