ある満月の夜。一人の男がいた。
男は、無言で廊下の柱にもたれながら月を見ていた。今日は、雲もなく煌めく星とともに月は大きく周りの景色を照らしていた。
男は、誰かここに来る気配を感じ目線を月からその人物に合わせた。
「…ここにいましたか、殿」
「…ジィか。どうした?」
「殿こそ、どうしたんですか。もう、寝る時間ではありませんか」
男は、また月に視線を移して、
「…今日は、月が奇麗だな」
「そうですね」
ジィも月に視線を移して、月を見た。しばらく、沈黙が続いてジィが、
「殿、風邪をひくといけないので、中に入られては…」
ジィの言葉に、殿は。
「…そうだな。もう充分に満足に見たから。寝るとしよう。明日は、早い…」
男の言葉に、ジィは少し沈黙しながら、
「もう、布団が敷いてありますので、私はこれで…」
「ああ。お休み…」
「…おやすみなさい。殿」
そう言って、ジィは隣の部屋の襖を開き、中に入った。それを見送った男は、
「…もう、この満月を見るのはこれが最期になるのか・・・。だが、負けるには行かない。護るためにも…」
男は、誰もいない廊下で呟き、もう一度満月を見て自分の部屋へと向かった。
オワリ