今回、ローストポークを、①理論編と、②実践編に分けて解説しますので、お付き合い下さい。
実践編はこちら。
実はプロでも難しいのが豚肉の加熱です。豚肉は生焼けは食品衛生上もよろしくないし、中途半端な加熱だと歯応えも悪いので、焼き過ぎてパサつきがち。
でも安心して下さい。加熱温度と加熱時間を理解すればジューシーで完璧なローストポークが焼けます。
ちょっと文字ばっかりですが、これさえ掴めばあなたも一流シェフ!
まず、覚えていただきたいのが、調理する上で重要な3つの温度。
▪️調理温度の特性
①62℃ 動物性タンパク質が凝固し始める温度。
②68℃ 動物性タンパク質が収縮し始める温度。筋肉細胞の破壊が始まり、ドリップ(肉汁、肉中の旨味の元です)が流れ出し始めます。
③70℃~80℃ コラーゲンが分解する温度。牛、豚等の筋っぽいところ、すなわちコラーゲンはこの温度に達しないと柔らかくなりません。
これまで、エビや鶏胸肉の加熱方法をご紹介する際にも触れておりますが、①と②の間の温度帯で加熱すれば、硬くなることはありません。
ただ豚肉の場合は、食品衛生上中心温度を67℃以上に加熱しなければならないんです。これが焼きすぎる原因なんですね。
では、ローストする上で重要な温度と時間についてご説明します。
▪️ローストのコツ 〜温度と時間
1.必ず室温に戻します(シャンブレと言います)。中心温度15℃くらいが望ましいです。巷のレシピだと、30分くらいと書かれていることが多いですが、実際には結構時間がかかります。
◎シャンブレ時間:室温28℃、初期値5℃、肉重量1kg
30分経過で10℃
60分経過で12℃
90分経過で15℃
2.オーブンの温度は、140~160℃。あまり低いと、ローストの「焼き感」が出ません。豚肩ロースの場合は、コラーゲンが多いので低温(140℃)でじっくり焼くほうがベター。
3.タコ糸で縛って厚みを均一化しますが、豚ロースは背脂を綺麗に出したいので、縛らない場合もあり。
4.肉の表面にしっかりと塩をする。肉重量の1%目安。
*胡椒はしないこと。焦げるだけです。
5.リソレ(肉の表面を下焼すること)のポイントは、焼き色。綺麗な焼き色を付けて香ばしい香りを纏わせることです。
6.焼きあがったら必ず休ませます。休ませている間に10℃前後は温度上昇するので、少なくとも焼き時間の半分以上は休ませます。
*肉の重量が大きいほど余熱で温度が上がります。
◎焼き時間の目安*オーブン160℃
・牛ロース、ランプ500g:リソレ5~6分、オーブン加熱30分(中心温度50~55℃)、休息30分。
(1㎏:オーブン加熱50分、休息40分)
・豚ロース:500g:リソレ5~6分、オーブン加熱45分(中心温度:ロース63℃、休息30分)
(1㎏:オーブン加熱70分、休息40分)
・豚肩ロース:500g::リソレ5~6分、オーブン加熱50分(68℃、休息30分)、
休息30分。(1㎏:オーブン加熱80分、休息50分)
下のグラフは、牛ランプと、豚肩ロースのローストの温度変化を計測したものです。お使いのオーブンの性能や環境によって違いは出ますので、目安として下さい。
オーブンの温度は、牛ランプは160℃、豚肩ロースは140℃です。
これでもわかる通り、想像以上に余熱で加熱が進みます。
ローストは、焼いている時間の前後(シャンブレと休息)が重要なことをご理解いただけたでしょうか?
では、②実践編で実際にお家ディナーでローストポークをメインディッシュとしてサーブすることを想定して解説しますので、そちらにお進み下さい。