英国のTPP加盟で中国をけん制:日英連携がグローバル化の鍵握る | Gマークの「中今を生きる」ブログ

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中国の民間企業とは名ばかりで、中国共産党が運営しているのだから、自由貿易圏は勝てるはずはない。
元々は、中国に対抗するための
TPPに、中国が加盟申請するのは、台湾を加盟させない為の嫌がらせだ。

日本の水産物を、「核汚染水」と呼び輸入禁止にし、レアメタルも人質にする国に自由貿易を期待するの不可能だ。

「核汚染水がー」と、イジワルされている間に、台湾を加入させるべきだ。

記事抜粋

英国のTPP加盟で中国をけん制:日英連携がグローバル化の鍵握る

岡部 伸




英加盟で自由貿易に弾み
TPPに英国が正式に参加した。英国は国内手続きを経て、2024年中に加入する。欧州連合(EU)からの離脱を決めたメイ元首相を17年にTPP加盟に誘ったのが、安倍晋三元首相だったことはあまり知られていない。

民主主義や法の支配といった価値観を共有する重要なパートナーである英国をTPPに迎え入れることで、覇権志向を強める中国に共同で対峙(たいじ)し、さらなる加盟国の拡大に弾みをつけ、保護主義を排し、ルールに基づく自由貿易を世界に推進すべきだ。

「ダイナミックに成長するインド太平洋地域の協定に欧州の国として最初に参加することで、利益が挙げられる」

英国の国際貿易省幹部は筆者の国際電話取材に、こう答えた。18年にTPPが発効して以降、初めての加入国となった英国は、EU離脱後、「グローバル・ブリテン」を国家戦略に掲げ、インド太平洋地域に戦略の重心を移し、経済、外交、安全保障の各分野でのプレゼンス拡大を目指している。経済でEUの厳しい共通ルールに縛られることなく、インド太平洋地域で、自由と公正さを重視する貿易・投資の枠組みとして加入を目標にしたのがTPPだった。

日本が当初から後押し
英国の加盟を当初から継続的に後押ししてきたのは、日本だった。TPP交渉で日本の事務方トップの首席交渉官を務めた鶴岡公二元駐英大使は、2016年の国民投票でEU離脱を選択した英政府から最初に相談され、「TPPは英国にとって好ましい」とアドバイスした。離脱を巡ってEUとの交渉が難航、英国内は大混乱していた。国民投票後に最初の国際貿易相に就任したイアン・フォックス氏に、「EU離脱でようやく通商交渉権限を手に入れるのだから、もっとも有意義な経済連携を目指すべきだ。いろんな国と一から貿易協定を作るのは大変だ。TPPに入れば(加盟の)11カ国は一網打尽となる。英国にとっても好ましく、TPP側は英国を歓迎するだろう」と加入を働きかけた。フォックス氏は、直ちにメイ政権内で取りまとめて国策としたという。

英国が助言を受け入れた背景について鶴岡元大使は、「世界貿易の将来の原動力になり得るアジア太平洋地域で自由度の高い市場、協定に参画する経済的な利益の追求がある。自由市場の国だから改めて制度を大きく変えなくても、TPPの義務を果たせるという読みがあった。もう一つは、日本と組んだ安全保障としての側面も見逃せない。日本が英国の加盟をいかに評価するか、他の加盟国の対応に影響を与える」と振り返る。

そして17年に来日したメイ元首相に、安倍晋三元首相は「英国のTPP参加を歓迎する」と述べた。駐英大使として同席した鶴岡氏によると、メイ元首相に強い印象を与えたという。米国が離脱後の11カ国で合意を実現した安倍元首相は18年10月、英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで、「英国のTPP加盟に両手を広げて歓迎する」と背中を押した。この発言を受け、メイ元首相は議会で「両手を広げて歓迎してもらえることを非常に喜ばしく思う。英国は参加する用意がある」と公式に加盟を表明した。

TPPは高い自由化水準を実現した協定である。関税を100%近く撤廃したほか、国有企業への不公正な補助金の制限、知的財産権の保護、データ流通の促進などで厳格なルールを設けている。21年2月、参加を正式に申請した英国は、こうしたルールを受け入れた。

「TPPはEUより居心地がよい」

「加盟国11カ国中、6カ国が英連邦(コモンウェルス)諸国。離脱したEUよりTPPは居心地が良い」。英国が欧州で初めて TPPに参加した背景について、国際貿易省幹部は多くの英連邦諸国の参加を挙げた。EUよりもTPPが自然だという。

確かに大英帝国の遺産として英国は、太平洋にピトケアン諸島、インド洋には米国に海軍基地として貸与するディエゴガルシア島などの海外領土や歴史的関係の深い英連邦諸国をインド太平洋地域に持っている。

英国王を象徴的首長とする56カ国が加盟する英連邦は、「旧植民地などの独立国家が構成する緩やかな国家共同体」だ。英国王を中心に首脳会議を2年に1度開き、五輪のようなコモンウェルスゲームズを4年に1度開催し、クリケットや7人制ラグビーなどのスポーツを通じ、結束を深めている。総人口は世界の約3分の1に相当する約24億人、国民総生産(GDP)を合計すると約11兆㌦。英連邦のつながりは軽視できない。

TPPには、カナダ、豪州、ニュージーランドはじめマレーシア、シンガポール、ブルネイの英連邦諸国6カ国が加盟している。11カ国中、6カ国である。このうちカナダ、豪州、ニュージーランドはチャールズ英国王を国家元首と戴く英国の旧自治領で英連邦王国(コモンウェルス・レルム)15カ国の一つである。

そして1971年にスエズ以東から撤退した英国は、シンガポールおよびマレーシアの安全保障確保のため、両国と豪州、ニュージーランド、シンガポール、マレーシアとの間で5カ国防衛協定(FPDA)の軍事同盟を結んでいる。97年まで統治した香港もあり、インド太平洋とは少なからぬ由縁がある。

豪州とニュージーランドとの自由貿易協定(FTA)を締結し、インドともFTA交渉を進めている。21年に「中国に国際海洋法の正当性を示すため」(ジョンソン元首相)、新型空母「クイーン・エリザベス」打撃群を派遣したが、25年に再度、最終目的地・日本に派遣する。米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を締結した。最大の友好国日本と「新・日英同盟」とも称される関係強化を進めており、TPP加盟は、インド太平洋への重心シフトを反映したものだ。

日英スクラムで対中参加阻止
日本は英国と経済連携協定(EPA)を締結しており、経済面でのプラス効果はそれほど大きくない。しかし、米国が対中国の主戦場と位置づけ、世界各国が戦略的に重視するインド太平洋地域の安定と経済発展には、英国の参加は大きな後押しになる。

現在、中国、台湾、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイ、ウクライナが参加を申請している。

今回の英国の加盟交渉では、農業分野を含めた高い関税撤廃率、電子商取引、投資、サービス、貿易円滑化、労働などで厳しいルールの採用が求められた。今後、参加を希望する国に対しても、こうした原則を曲げず、高い貿易自由化レベルと厳しいルールの採用が迫られる。

TPPには中国包囲網という隠れた意味合いもあったが、米国が抜け、その間隙を縫って中国が加盟申請し、巨大な自国市場をてこにシンガポールやマレーシアなどに支持拡大を図り、アジア太平洋地域での経済連携の動きに揺さぶりを掛けている。

中国がTPP加盟で、地域の通商ルールを支配する事態だけは回避しなければならない。

不透明な国有企業の優遇や外国企業への技術移転の強要、貿易抑制で圧力をかける「経済的威圧」が問題視されており、中国が厳しい自由貿易の基準を満たすのは困難とみられ、中国の参加は現実的ではない。

米国離脱後のTPPを主導し、英国の加盟を後押ししてきた日本は、英国と連携してルールに基づく通商秩序を再構築しなければならない。中国の扱いは政治的にデリケートなだけに、日英が連携して中国の加盟に反対姿勢を貫くべきだ。

2024年の米大統領選挙を控え、バイデン政権は有力な支持母体である労働組合からの反発もあり、米国のTPP復帰は当面望めそうにない。英国の参加を契機に、多くの国が加盟に傾き、米国民の間で不参加がデメリットという世論が形成されることに期待する。

米中対立激化やロシアのウクライナ侵略などで世界貿易機関(WTO)が機能不全に陥り、自由貿易体制は岐路に立たされている。高いレベルの自由貿易圏がアジアから欧州に拡大することを歓迎したい。

【Profile】
岡部 伸
産経新聞論説委員。1981年立教大学社会学部卒業後、産経新聞社に入社。社会部記者として警視庁、国税庁など担当後、米デューク大学、コロンビア大学東アジア研究所に留学。外信部を経てモスクワ支局長、東京本社編集局編集委員、2015年12月から19年4月までロンドン支局長を務める。著書に『消えたヤルタ密約緊急電』(新潮選書/第22回山本七平賞)、『「諜報の神様」と呼ばれた男』(PHP研究所)、『イギリス解体、EU崩落、ロシア台頭』『新・日英同盟』(白秋社)『第二次大戦、諜報戦秘史』(PHP新書)など。