日本の幸福を考える、「幸福途上国ニッポン」を読もう | イノベーションを科学する: フューチャーセンター、ゲームストーミング、サラサラの組織、事務局力、コミュニティ・オブ・プラクティス

日本の幸福を考える、「幸福途上国ニッポン」を読もう

久しぶりに、面白くて面白くて止まらない新書に出会いました。興奮冷めやりません。

この本の著者目崎さんと出会ったのは、井上英之さんに誘われてパネルディスカッションに参加した、「社会イノベーションのエコシステムをデザインする」という国際会議の後の懇親会でした。私は、自分自身の参加したパネルでのプレゼンで、「未来のエコシステムを創るのは政府ではない。私たち一人ひとりの意志である。私たち一人ひとりが未来のステークホルダーを誰にするかを考え、それが集まったものがエコシステムになるのです」と、熱い問題提起をした直後でした。

目崎さんとの短い対話で、「企業も個人も、ソーシャルイノベーションを手段として捉えるのではなく、基盤となる思想を再構築しなければならない」と熱く語り合いました。

そして彼の近著、「幸福途上国ニッポン」を読みました。

目崎さんは多くの調査データの引用と、彼自身の経験を物語りながら、北欧とラテンアメリカの幸福度の高さ、日本を含む東アジアの幸福度の低さを比較し、そして「幸福度は、個人の選択の自由度と比例する」という仮説を力強く提示します。さらに、「日本の幸福度の低さは、全体主義、常識に合わせる価値観に由来する」と明言します。

本当にその通りだと思いました。自分自身にも思い当たりますし、コンサルティングをしている際の、顧客企業の課題の多くが、この概念ですべて説明がつくと思いました。企業の従業員は、組織内の常識に合わせようとします。全体最適の行為でさえ、部門最適(つまり隣近所との集団行動)により否定されます。その結果、各従業員の自由度は低く、社員満足度も低くなります。「社員の自主性を阻害する構造」の問題を、「組織の生産性」の問題として議論してはいけない。このことを「幸福途上国ニッポン」で強く感じました。この問題は、「会社で働く私たち一人ひとりが、何のために働いて(生きて)いるのか」という根源的な問題として捉える必要があるのです。

仕事の目的を「企業の成長」のみに置くことは、それこそ「全体主義」を助長することに。その結末は、「幸福度の低い日本企業」を増やすことになります。それだけは、防ぎたいです。

この本、ぜひ子供向けにも書いてほしいですね。10月1日にTEDxKids@Tokyoがスタートし、私も登壇します。子供達に、まっすぐなメッセージを伝えられる本が、もっと増えることを願っています。

「日本は幸福度が低いね」と他人事になってはいけません。これを変えていけるのは、私たち自身だけなのです。私たちには、このことを変えていくだけの自由が、本当はあるのですから。

さあ、新しい21世紀の歴史を創りましょう。

野村 恭彦


幸福途上国ニッポン 新しい国に生まれかわるための提言/目崎 雅昭

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