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オバマのアメリカ 従軍記者の戦死

オバマのアメリカ

「戦争をする国・せざるを得ない国」Ⅹ

-点と線を守る闘いの中で爆死した記者-


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イギリス人ジャーナリストとして、アフガン戦争従軍取材中に初めて

死亡したMirrorman Rupert Hamer氏の訃報を伝えるサンデーミラー紙


昨年のカナダ人女性ジャーナリストに続いて、1月9日にアフガニスタン南部で米海兵隊従軍取材中のイギリス人ジャーナリストが、ロードサイド爆弾で死亡した。いっしょに取材していたカメラマンも重傷。

謹んでご冥福を祈る。

Sunday Mirror 紙のルパート・ハマー氏は戦争取材経験豊富な記者で、最新の注意を払って取材に当たっていたはずだが、目に見えない敵の攻撃の前にはなすすべがなかった。

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米国防総省が発表している米陸軍パトロール風景。荒涼とした山間部を様子がよくわかる

A U.S. Army soldier from Apache troop, 3rd Squadron, 61st Cavalry Regiment, 4th Brigade Combat Team, 4th Infantry Division signals the location of a rally point to the soldiers behind him while on patrol in Naray, Afghanistan, on Jan. 4, 2010. DoD photo by Sgt. Jennifer Cohen, U.S. Army. (Released)


オバマ大統領がアフガン増派を決定してから、米軍はアフガン南部を中心に点から線へとタリバン掃討作戦を展開している。その中で悲劇は起きた。

アフガニスタンの面積 は日本の約1.7倍。山間部が多く、住民の敵意に囲まれながらでは、とても十数万人の軍隊で面はおろか、線さえも守りきれない地ではないのだろうか。

正面攻撃ではなくゲリラ的攻撃で敵を消耗させる戦法により、日中戦争開始の時点で、最大90万人 いた旧帝国陸軍は泥沼におちいった。


タリバンの兵力(推定数万人) は、日中戦争当時の国民党軍 、共産党軍に比べて圧倒的にすくない。ISAF が軍事的に勝利を収める可能性はまだあるだろう。

一方で、オバマは来年夏までに、さらに3万人の増派を計画しているが、増派のスピードが遅いとの不満がオバマ政権内部から国防総省に対して噴出しているという。(Nerw York Times記事
これに対し、制服組からは悪天候、限られた航空輸送能力による兵員輸送の問題、さらには部隊が展開したあとの陸路による兵站の問題を指摘する声がでている。以下、記事の抜粋。

Last month in Kabul, Lt. Gen. David M. Rodriguez, the deputy commander of American and NATO forces in Afghanistan, did not back away from that schedule, but he told reporters of the difficulties he faced even in getting all the forces in by fall. He said that bad weather, limited capacity to send supplies by air and attacks on ground convoys carrying equipment for troops from Pakistan and other countries presented substantial hurdles.


軍隊の展開と撤収は将棋をさすようにはいかない。

オバマはテロとの戦いで歴史を作るのだろうか。それとも旧日本軍がおちいった歴史の苦い教訓を学ばなければならないのか。アフガン増派を選挙公約で唱えたオバマの真価が問われている。

(Global Photo Exchange 菅谷洋司)


ひとこと:

半藤一利氏の「昭和史1926-1945)204ページにに次のような下りがある。

「・・・中国の兵隊や民衆の抵抗は治まらず、街を占領してもルートを占領できないのですからゲリラ戦は絶えず起こる、毛沢東のいう持久戦論が出てきて、でかい中国の地図の上に日の丸をたくさん立てても、よく見れば日本が占領したのは主要都市のみで、その間はまったく敵地であったということになります。」・・・


国家としても、民族としても統一性を欠くアフガニスタンと、漢民族主義に目覚めた当時の中国を同一視することはできない。しかし、外国の軍隊が現地住民の気持ちをつかまない限り、負けることはなくても勝利することがないことは間違いない。そのことをアメリカ人に知ってほしい。


オバマのアメリカ 鯨を守るための戦争

オバマのアメリカ

「戦争をする国・せざるを得ない国」Ⅸ

-「鯨を守る」戦士シー・シェパードとアルカイダの共通性ー
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Ady Gil activists carrying a projectile launcher (Part1)
ランチャーとカメラを構えるシーシェパード活動家及びアニマルプラネットの撮影クルーらしき男

財団法人日本鯨類研究所提供 (写真説明も同財団提供)


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Ady Gil towing a rope intended to entangle the Nisshin Maru propeller and rudder
日新丸のプロペラ攻撃用のロープを曳航するアディ・ギル号

財団法人日本鯨類研究所提供 (写真説明も同財団提供)


正月明けの南氷洋で、日本の調査捕鯨船第2昭南丸と、アメリカ・ワシントン州に本部を置く「鯨保護団体」シーシェパード の快速船がAdy Gilが衝突した。

鯨が危機に瀕していると言う議論も、「鯨は哺乳類で人間と同じ」と言う議論はひとまず置いておく。

衝突の責任がどちらにあるという議論にもあえて触れない。

シーシェパードと第2昭南丸の双方のビデオ映像を見てもらいたい。


シー・シェパードが撮影したビデオ


調査船第2昭南丸の乗組員が撮影したビデオは以下のURLをクリック。下のタイトルクリックで上映。

http://www.icrwhale.org/gpandseaJapane.htm

2010.01.06 日本時間12時30分頃、アディ・ギル号が調査船第2昭南丸に衝突した (5.2MB


ある目的のために、実力で相手の行動を阻止する行為は「戦闘行為」であるといってよい。つまり、シー・シェパードは、日本の調査捕鯨船に対して、「戦争」を仕掛けている。ブログ冒頭にある写真を見ると、第2昭南丸のスクリューと舵を破壊するためにワイヤーロープをひっかけようとしたのは間違いない。また、圧縮空気を送ると見られるチューブのついてロケットランチャーのような”武器”も準備している。まともに受ければ、失明する可能性があると見られるレーザー光線を乗組員に向け照射もしている。第2昭南丸は高圧放水で対抗した。

環境保護にため抗議行動の範囲をはるかに超えた「実力行動」であることは間違いない。日本のテレビが放送の中で、オーストラリア大衆紙が衝突の瞬間の写真とともに、{It's War!」〔これは戦争だ!)と一面で報じていると伝えている。

Related Video

Sea Shepherd Crew Honors Ship Namesake for
Steve Irwin Day, November 15

Antarctic Whale Defense Campaign

上のシー・シェパードのビデオのタイトルはAntarctic Whale Defense Campaignとなっている。南氷洋鯨防衛キャンペーンと訳すと、いくらかやわらかく感じられるが、Campaignは軍事用語で軍、遠征、従軍や軍事行動を意味する。

シー・シェパードは「鯨を防衛する戦士たち」と自らを規定していると考えられる。

英国の大衆紙Daily MailDaily Telegraph によれば、日本の調査捕鯨船攻撃したAdy Gil号は約150万ドル建造され、米カリフォルニア州の大富豪が全額出資、出資者の名前がつけられているという。


グローバリゼーションの中で、文化的価値観の違いは世界の各地で衝突を引き起こしている。相手方の存在を認めることなく、あくことない軍事攻撃を加えている世界でもっとも有名な組織はアルカイダだ。

違う立場の価値観を相対的に見ることができず、かつ国際的なルールをまったく無視した形で、国境を越えて活動するアルカイダとシー・シェパードには明らかな共通点がある。両者とも富豪たちの資金的援助を得ていることも興味を引く。

アルカイダとシー・シェパードの行動原理は同じだ。アルカイダをテロリストと呼ぶのであれば、シー・シェパードも「テロリスト」と呼ばなくて公平性を欠く。

テロリストでないならば、国際的な約束を守っていかなければならない。今回の衝突に限れば、国際捕鯨委員会 (IWC)の取り決めと海事法 (Maritime Law)を双方が尊重しなければならない。シー・シェパードは明らかにどちらも無視している。

(Global Photo Exchange 菅谷洋司)


ひとこと:

シー・シェパードの反捕鯨活動は対日本に限っているわけではない。

本部のある米ワシントン州で、先住民Makah族が2000年以上の 捕鯨 70年振りに再開 することに対し、ボート2隻で阻止行動 を行ったことがある。1998年シアトル北西のNEAH BAY でのことだ。

シー・シェパードのメンバーに対し、子どもをふくめた住民から投石が繰り返され、部族の警察に身柄を拘束された。

1999年5月、初めての捕鯨がカヌーを使って行われた。

ブログ冒頭に掲載したシー・シェパードの殺気立った写真に比べるとなんと牧歌的な風景なのだろう。Msakah族は漁に出る前に、恵みを与えてくれる自然に対して祈りをささげるという。

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Makah族公式サイトに掲載された写真。4隻のカヌーがとったクジラを岸に運んでいる

Makah族は居留地(Makah Nation)で捕鯨をする権利をアメリカ合衆国との条約締結で許されているとしているが、沿岸捕鯨の許可をIWCに申請して認められるとともに、合衆国国内法もクリアした。

シー・シェパードの反捕鯨活動と、伝統文化が衝突しているのは日本だけではない。

さらにひとこと:

日本でもツチクジラに限り、沿岸捕鯨が許可されている房総半島の地で、取材をしたことがある。以下のスライドショーをご覧ください。

房総半島のツチクジラ漁

また沖縄本島渡嘉敷島沖合いのクジラウォッチングのスライドショーもご覧ください。

http://www.globalphotoex.com/slideshow/90.html

沖縄の写真家山城博明氏の作品です。










オバマのアメリカ 誰も信じられない戦場

オバマのアメリカ 

「戦争をする国・せざるを得ない国」Ⅷ

-敵意に囲まれた戦場を飛ぶ無人爆撃機-
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CIAがタリバンやアルカイダの幹部殺害のため使用する無人爆撃機。期待の下にスマート

爆弾を装備している(英語版ウィキペディアより転用)。 欧米人にとっては無人の荒野でも

アフガン人にはなつかしの故郷だ。 その上をハイテクを駆使した顔のない飛行機が飛ぶ。

この光景は今のアフガン情勢を象徴している


アフガンのCIA基地で7人のCIAエージェントを殺害した自爆犯はなんと、CIAが信頼していた情報提供者(Informant)のヨルダン人 だった。ワシントンポストの記事 参照

CIAは情報提供者から、アルカイダやタリバンの動向をさぐり、無人爆撃機(Drone) で攻撃、これまでにかなりの戦火をあげてきたと報じられている。

このニュースを聞いて思い出したのは、1975年ベトナム戦争の最終局面で、民族解放戦線と北ベトナム正規軍が迫るサイゴンで起きたAP通信支局でのできごと。

サイゴン脱出を準備し始めたAP通信の記者が、長年信頼していた有能なベトナム人助手にも脱出することを勧めた。敵国通信社に協力した助手が、祖国への敵対者として処罰されることをおそれたためだ。ところがその男性助手は自分が南ベトナム解放戦線の兵士であり、これまでアメリカ側の情報を入手するために、AP通信サイゴン支局に勤務していたことを告白したのだった。

アメリカ人記者たちが、どれほど驚いたか想像もできない。

ベトナム戦争を題材にした「Good Morning Vetnam」 (ロビン・ウィリアムズ主演)にも、友人と思った仲のいい少年が、実は解放戦線の戦士だったことがわかる話が出てくる。


異国の地で戦争をするというのは、常に現地の人の敵意に囲まれる可能性を秘めている。文化的な軋轢(あつれき)も避けられない。

不信が不信をよび、いつかソンミ事件 のようなことが発生する可能性がある。


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U.S. Marine Corps Capt. Jason C. Brezler, with 3rd Battalion, 4th Marine Regiment, meets with Afghan leaders in Now Zad, Afghanistan, on Dec. 15, 2009. Marines meet with town elders to discuss the reconstruction process. DoD photo by Cpl. Albert F. Hunt, U.S. Marine Corps. (Released)

昨年末に少年8人を含むアフガン人10人を、家から引きずり出し射殺 した事件の意味があらためて重くオバマにのしかかる。英国のタイムなどによれば、手錠をかけた後での射殺の可能性があるという。この点は米メディアは詳しく報じていない。

アフガンはこのまま、「オバマのベトナム」になってしまうのか。

豊かで、自由な故郷アメリカからアフガンに派遣される若い米兵士たちに、信じられないぐらい精神的重圧がかかっていることは間違いない。

一方で、アフガンの若者たちは最先端の軍事装備とともに、時代を超えてやってきた超大国の米兵たちをどのように見ているのだろうか。

なんとか米軍に従軍取材して、両国の若者たちの心の闇をのぞいてみたいと思っている。

(Global Photo Exchange 菅谷洋司)


ひとこと:

オバマ大統領主催にパーティーに2人の男女が招待状なしで紛れ込んだ報道があった。さらにもうひとり男性がインドの代表団にまぎれて侵入を果たした。アメリカの情報機関やシークレットサービスはどのくらい信用できるのか・・・。厳重なボディーチェックや、パスのチェックはやっていただろうに。

ナイジェリア人の航空機爆破未遂犯の情報が、適切に処理されていなかった問題で、オバマ大統領は「とんでもないへま」 (CNNビデオ参照)ときつい言葉で情報機関関係者を非難した。

This was a screw-up that could have been disastrous," he said, according to the official. "We dodged a bullet, but just barely."

Tragedy was averted "by brave individuals, not because the system worked, and that is not acceptable. While there will be a tendency for finger pointing, I will not tolerate it.

・・・・

In other words, this was not a failure to collect intelligence; it was a failure to integrate and understand the intelligence that we already had,"

「今回の失敗は情報収集ができなかったためではない。すでに入手した情報を統合し、理解することができなったことが失敗の原因だ。」(筆者意訳)

軍事行動でもそうだが、アメリカはシステムやテクノロジーに頼る過ぎる傾向がある。また、各省庁間の縄張り争いは日本以上だ。

対アフガニスタン住民への対応もそうだが、「人間」に対処する「人間」の問題がアメリカ人には常にある。