それは、筆記具と言うより、まるでジュエリー。
手の中にある万年筆を見下ろすたびに、ため息がもれます。
ついに、買ってしまいました。
国内での販売価格、定価で一本100,000円の万年筆を!
じゅうまんえんですよ、じゅうまんえん。ワタクシ史上、前人未到の6ケタです!
ペン一本に、10万円。
……アンタ、なにやってんの。
ことの起こりは、今年3月。日本橋三越で開催された「世界の万年筆祭」でした。
アウロラのブースでは、今年の限定モデルであるNebulosa、ネブローサの先行発売で人だかりができていました。
ひときわ大きなガラスケースの中に鎮座していたのは、
万年筆では珍しい紫に輝く軸に、ピンクゴールドが上品な輝きを放つ、豪華絢爛な万年筆でした。
しかし、なんといっても、そのお値段。
10万円じゃ、ねぇ……まあ、美術品みたいなものですよ。陳列ケースに見とれて終わり。そう、いつものように。
ただ、素通りできないわけがありました。
人だかりができていたのは、ネブローサを試し書きできるためだったのです。
ワタクシには無縁の、美術品級の万年筆を、正々堂々と試し書きできるなんて!
……いえ、普段でも、カウンターでお願いすれば試し書きはできると思いますが。
恐ろしいじゃないですか。
絶対に買わない万年筆を、自分だけのためにわざわざ出してもらって、書いた挙句に「ありがとうございます~」と買わずに返すなんて、アナタ。
チキンハートなワタクシには、絶対にできません。
でも、今なら! 試し書きの順番待ちのヒトがいる今なら!
大衆に紛れて、心配無用で試し書きできるってもんですよ。
……ああ、なんという貧乏性。
んで、書いてみたら、ですね。
これが、もう……
天にも昇る心地の柔らかさ。色気さえ感じる滑らかな書き心地。
美しいピンクゴールドのペン先から、あふれるように流れ出てくるインクの快感。
わああああああああ……………欲しい!
でも、ま、なんといっても、10万円です。
どう転んだって、ワタクシとは無縁の万年筆ですよ。ええ。
分別あふれるワタクシは、無事に、何も買わずにブースを後にしたのでした。
ところが。
アウロラのテッラを購入した、イタリアはフィレンツェの文房具店、その名も「万年筆の家」。
https://blogs.yahoo.co.jp/glirulusjp/34597063.html
このネットショップを開いてみると、あるではありませんか!
ネブローサが!
そうか! 個人輸入というテがあったではないか!
これなら、国内の正規販売の定価より、かなり安く手に入るのでは?!
……ま、そうは言っても、高価なことに変わりはないだろうけど。見るだけ、見るだけ。
そうしてネブローサのページを開けて見ると……
「特別価格で提供。メールでお問い合わせください」
という、なんともそそる文字が並んでいたのでした。
ま、問い合わせるだけならタダだから。
軽い気持ちでメールアドレスを入力してみました。
すると、翌日。日本のネットショップに勝るとも劣らないスピードで返ってきた返事には……
……確かに高価だけど、これなら、頑張れば、手が届かないこともない……
送料と関税を合わせても、三割以上はお安く買えそうなお値段が、書いてあったのでございます。
ううむ。うううむ。うううううううむ。
三日ほど悩んだ挙句……
ワタクシの手は、いつの間にか、こんな返事を打ち返していたのでありました。
「まだ残っていたら、買いたいのですが」
……って、えええっ?!
すると、時差の関係でちょうど営業時間にあたっていたと思われるフィレンツェの店から、数時間も経たずに光の速さでお返事が。
「もちろん、ありますよ。こちらのリンク先からご購入ください」
ここまで来たら、もう、買うしかないではありませんか!
こうして、ワタクシは、美術品のような万年筆を、自分とは無縁だと思っていた万年筆を、ついに購入してしまったのでございます。
翌日、メールを開けると、光の速さで「発送しました」という連絡が。
この店って、本当に、対応早いなあ………
さて。
一週間ほどして届いたのは、なぜか、ずっしり思い箱でした。
ワタクシが購入したのは、たった一本の万年筆のはず……
不思議に思って開けて見ますと……
……ううむ。これは、一体……
両手に抱えるほどの大きさで、重量感あふれる黒い箱。
ためしに秤に乗せてみますと、なんと1.2㎏もあります。
ええと、
ワタクシが購入したのは、たった一本の万年筆のはず……
黒い紙箱を恐る恐る開けて見ると、中にはさらに黒い箱が。
その中に、さらに、高級感あふれる合皮の箱が。
背面の蝶番で、ぱっくりと開きまして……
中には、たしかに、ネブローサ様が、おひとりで収まっています。
いえ、台座を開けると、インクと保証書も入っていました。
保証書には、フィレンツェのお店のサインとシールが。ずんぐりした赤い万年筆のマークが、かわいいですねえ。
そして、ああ……
紫に輝く軸に、ピンクゴールドが上品な華やぎを添える、ネブローサ様の美しさ。
首軸と尻軸が、滑らかな丸みを帯びたラインであることによって、優雅さが加わっています。
この軸には、イエローゴールドよりピンクゴールドですよね、絶対。
キャップとの境界線に「Nebulosa」の文字が。
ひっくり返すと、シリアルナンバーもきちんと入っています。
これは、888本製造されたうちの一本。ワタクシだけの、世界に一本だけのネブローサ様です。
アウロラオリジナルの樹脂、アウロロイドは、光を透して内側から見ると、ガレのガラス作品のように幽玄な輝きを見せます。
手の中で転がすと、いくら見ても見飽きません。
これだけで、買ってよかった……と、うっとりします。
……って、それ、万年筆の正しい楽しみ方ですか??
ペン先は、ピンクゴールド。唐草模様の中央に、「18k」の文字があります。
そう。これは、18金のペン先なのです。
ありがたし。
……まあ、プラチナなら1万円で18金の万年筆を買えますが。
横から見たラインも優雅。ペン先の細い部分が長い印象が際立ちます。
これは、ふわふわと柔らかく書けるシルエットですね。
裏側は、こんな感じです。
さあ。それでは、いよいよ書いてみましょう。
……いえ、その前に。
まず、どんなインクを入れるか決めなくてはなりません。
Nebulosa、つまり「星雲」という名にふさわしいインクがいいなあ。
普段に使いやすい青系で、でも軸にあう紫の香りを感じさせる、透明感と深みがある色合いのインク。
オタク雑誌「趣味の文具箱」のインク特集をひっくり返して、ワタクシは、思索を巡らせます。
うううむ。悩む。悩むなあ。
困った。これは……
一回では、書き味までたどりつかないではないか。
(続く)
手の中にある万年筆を見下ろすたびに、ため息がもれます。

ついに、買ってしまいました。
国内での販売価格、定価で一本100,000円の万年筆を!
じゅうまんえんですよ、じゅうまんえん。ワタクシ史上、前人未到の6ケタです!
ペン一本に、10万円。
……アンタ、なにやってんの。
ことの起こりは、今年3月。日本橋三越で開催された「世界の万年筆祭」でした。
アウロラのブースでは、今年の限定モデルであるNebulosa、ネブローサの先行発売で人だかりができていました。
ひときわ大きなガラスケースの中に鎮座していたのは、
万年筆では珍しい紫に輝く軸に、ピンクゴールドが上品な輝きを放つ、豪華絢爛な万年筆でした。
しかし、なんといっても、そのお値段。
10万円じゃ、ねぇ……まあ、美術品みたいなものですよ。陳列ケースに見とれて終わり。そう、いつものように。
ただ、素通りできないわけがありました。
人だかりができていたのは、ネブローサを試し書きできるためだったのです。
ワタクシには無縁の、美術品級の万年筆を、正々堂々と試し書きできるなんて!
……いえ、普段でも、カウンターでお願いすれば試し書きはできると思いますが。
恐ろしいじゃないですか。
絶対に買わない万年筆を、自分だけのためにわざわざ出してもらって、書いた挙句に「ありがとうございます~」と買わずに返すなんて、アナタ。
チキンハートなワタクシには、絶対にできません。
でも、今なら! 試し書きの順番待ちのヒトがいる今なら!
大衆に紛れて、心配無用で試し書きできるってもんですよ。
……ああ、なんという貧乏性。
んで、書いてみたら、ですね。
これが、もう……
天にも昇る心地の柔らかさ。色気さえ感じる滑らかな書き心地。
美しいピンクゴールドのペン先から、あふれるように流れ出てくるインクの快感。
わああああああああ……………欲しい!
でも、ま、なんといっても、10万円です。
どう転んだって、ワタクシとは無縁の万年筆ですよ。ええ。
分別あふれるワタクシは、無事に、何も買わずにブースを後にしたのでした。
ところが。
アウロラのテッラを購入した、イタリアはフィレンツェの文房具店、その名も「万年筆の家」。
https://blogs.yahoo.co.jp/glirulusjp/34597063.html
このネットショップを開いてみると、あるではありませんか!
ネブローサが!

そうか! 個人輸入というテがあったではないか!
これなら、国内の正規販売の定価より、かなり安く手に入るのでは?!
……ま、そうは言っても、高価なことに変わりはないだろうけど。見るだけ、見るだけ。
そうしてネブローサのページを開けて見ると……
「特別価格で提供。メールでお問い合わせください」
という、なんともそそる文字が並んでいたのでした。
ま、問い合わせるだけならタダだから。
軽い気持ちでメールアドレスを入力してみました。
すると、翌日。日本のネットショップに勝るとも劣らないスピードで返ってきた返事には……
……確かに高価だけど、これなら、頑張れば、手が届かないこともない……
送料と関税を合わせても、三割以上はお安く買えそうなお値段が、書いてあったのでございます。
ううむ。うううむ。うううううううむ。
三日ほど悩んだ挙句……
ワタクシの手は、いつの間にか、こんな返事を打ち返していたのでありました。
「まだ残っていたら、買いたいのですが」
……って、えええっ?!
すると、時差の関係でちょうど営業時間にあたっていたと思われるフィレンツェの店から、数時間も経たずに光の速さでお返事が。
「もちろん、ありますよ。こちらのリンク先からご購入ください」
ここまで来たら、もう、買うしかないではありませんか!

こうして、ワタクシは、美術品のような万年筆を、自分とは無縁だと思っていた万年筆を、ついに購入してしまったのでございます。
翌日、メールを開けると、光の速さで「発送しました」という連絡が。
この店って、本当に、対応早いなあ………
さて。
一週間ほどして届いたのは、なぜか、ずっしり思い箱でした。
ワタクシが購入したのは、たった一本の万年筆のはず……
不思議に思って開けて見ますと……
……ううむ。これは、一体……

両手に抱えるほどの大きさで、重量感あふれる黒い箱。
ためしに秤に乗せてみますと、なんと1.2㎏もあります。

ええと、
ワタクシが購入したのは、たった一本の万年筆のはず……
黒い紙箱を恐る恐る開けて見ると、中にはさらに黒い箱が。

その中に、さらに、高級感あふれる合皮の箱が。

背面の蝶番で、ぱっくりと開きまして……
中には、たしかに、ネブローサ様が、おひとりで収まっています。

いえ、台座を開けると、インクと保証書も入っていました。

保証書には、フィレンツェのお店のサインとシールが。ずんぐりした赤い万年筆のマークが、かわいいですねえ。

そして、ああ……
紫に輝く軸に、ピンクゴールドが上品な華やぎを添える、ネブローサ様の美しさ。
首軸と尻軸が、滑らかな丸みを帯びたラインであることによって、優雅さが加わっています。

この軸には、イエローゴールドよりピンクゴールドですよね、絶対。
キャップとの境界線に「Nebulosa」の文字が。

ひっくり返すと、シリアルナンバーもきちんと入っています。
これは、888本製造されたうちの一本。ワタクシだけの、世界に一本だけのネブローサ様です。
アウロラオリジナルの樹脂、アウロロイドは、光を透して内側から見ると、ガレのガラス作品のように幽玄な輝きを見せます。

手の中で転がすと、いくら見ても見飽きません。
これだけで、買ってよかった……と、うっとりします。
……って、それ、万年筆の正しい楽しみ方ですか??
ペン先は、ピンクゴールド。唐草模様の中央に、「18k」の文字があります。
そう。これは、18金のペン先なのです。
ありがたし。

……まあ、プラチナなら1万円で18金の万年筆を買えますが。
横から見たラインも優雅。ペン先の細い部分が長い印象が際立ちます。
これは、ふわふわと柔らかく書けるシルエットですね。

裏側は、こんな感じです。

さあ。それでは、いよいよ書いてみましょう。
……いえ、その前に。
まず、どんなインクを入れるか決めなくてはなりません。
Nebulosa、つまり「星雲」という名にふさわしいインクがいいなあ。
普段に使いやすい青系で、でも軸にあう紫の香りを感じさせる、透明感と深みがある色合いのインク。
オタク雑誌「趣味の文具箱」のインク特集をひっくり返して、ワタクシは、思索を巡らせます。
うううむ。悩む。悩むなあ。
困った。これは……
一回では、書き味までたどりつかないではないか。
(続く)