かき氷が食べたい。
ふわふわで、口に入れたらすぐ溶けて、飲み込めば体の芯からすうっと冷たさが広がっていく、かき氷。
アイスよりかき氷ですよ、絶対。
気温30度を超えると、アイスよりかき氷のほうが売り上げが伸びるとか。
あああかき氷………
………少々、取り乱しているようです。
こんなときは、「星雲」の名を持つ万年筆、アウロラのネブローサ様を手に取って、心静かに文字をしたためようではありませんか。
イタリアのフィレンツェにある「万年筆の家」という店から、フェデックスの貨物輸送機ではるばる地球を半周し、我が家にやってきたネブローサ様。
https://blogs.yahoo.co.jp/glirulusjp/34676243.html
上品なピンクゴールドの金具を身にまとい、青みを帯びた深い紫色の軸を手の中で転がすうちに、
イメージが固まってきましたよ。
この一本には、軸の色をそのまま紙に写し取ったような、深みを帯びて澄んだ青紫のインクを入れたい、と。
万年筆のインクの色を変えるのは、なかなか大変です。
ペン先を何度も水洗いしても、ペン芯の奥に残ったインクはなかなか完全にとれません。
聞くところによれば、メーカーが違うインクをうっかり混ぜると、成分が化学反応を起こしてペン芯やペン先をいためる恐れもあるそうですね。
しかも、ネブローサ様は、カートリッジやコンバーターではなく、胴軸に直接インクを吸い上げるタイプ。
パイロットのペンクリニックでは、洗っていただく際に、各社のカートリッジにスポイトのゴムを取り付けたものをペン先につけ、バシュバシュと水をペン芯に通してくださいますが、ネブローサ様にはこうした洗浄方法も使えません。
つまり、最初に入れたインクをネブローサ様終生の色とするのが、最も安全というわけです。
どのインクを用意するか。大問題ですね。
dマガジンで配信された趣味の文具箱のインク特集をためつすがめつして、ようやく、これはと思う色を見つけました。
Kobe INK物語の29番、須磨海浜ブルーです。
このシリーズは、今年から、銀座の伊東屋で全色が常設展示され、いつでも買えるようになりました。
いくら素敵な色でも、限定色だったり入手困難な色だったりすると、終生の色として使い続けるわけにはいきません。
ネブローサ様に使うには、いつでも手に入ることも重要なポイントです。
伊東屋で常設されるようになったことが、色の選択の決定打となりました。
初めてインクを吸い上げる瞬間は、どうしていつも、どきどきするのでしょうか。
いよいよ、ネブローサ様のペン先を、紙の上で走らせるときが、やってまいりました。
よみがえる3月の記憶。日本橋三越の「世界の万年筆祭」で試し書きした時の、色気すら感じるほどに滑らかで柔らかな感触の記憶。
さあさあさあ。いよいよですよ。
………………
……あれ?
細字だからでしょうか。それとも、本当に書き始めで、ペン先にバリが残っているためでしょうか。
手に伝わった感触は、ふわふわとは程遠い、カリカリした引っ掛かりでした。
紙の上に引かれた線は、国産の極細字にも負けないくらいの細さ。
須磨海浜ブルーの色は、思ったよりずっと薄く感じました。
うううむ。イタリアの万年筆は、同じシリーズでも一本一本の出来栄えがかなり違うとは聞くけれど、これは……
手帳に書き込むにはちょうどよい細さだったので、しばらくスケジュールを記録する小さな字を書いておりました。
でも、どうしても気になります。この引っ掛かり。
長いこと書いていると、手に負担を感じるほどの抵抗です。
無理に書き続けるとペン先をいためてしまいそうで心配なほどです。
そんなとき、東京の丸善で、宍倉ドクターのペンクリニックが開催されるとの情報を入手しました。
これは、行くしかない。
悪天候の平日だったせいか、開店早々を狙うと、それほど待たずに診ていただけることになりました。
「あのう、どうも引っ掛かりを感じるのです……」と、ネブローサ様を差し出すと、宍倉先生はルーペでペン先を一目見てうなずきました。
「ペン先の溝がとても細く閉じられていて、インクがほとんど出ていない状態ですね。引っ掛かりはそのせいでしょう」
なるほど。
つまり、インクの出がとても渋すぎたわけですね。
日本橋で試し書きしたネブローサ様は、インクが潤沢に出るよう調整されていましたので、書き味が全然違ったわけですね。
宍倉先生もネブローサ様をお持ちで、見せてくださいました。
ペン先のサイズはM。
「インクがとてもよく出るように調整してあるんですよ」
なんと、試しに書かせてくださいました!
日本橋で書いたもの以上に、インクがどんどん出てきます。
インクに乗ってペン先が紙の上を滑るのが、万年筆の気持ちよさの源だなあと、実感できる書き心地です。
ワタクシのFは、やはりネブローサ様の実力ではなかった……ということが、はっきりわかります。。
ドクターにペン先の溝を広げていただいたネブローサ様は、Fながら、あの日本橋で味わった快感を彷彿とさせる書き心地になりました。
インクの色も、かなり濃くなりました。
思った通り、軸の色にそっくりな、透明で深い青紫。色の柱は青なので、普段使いにももってこいです。
ああ、よかった。生まれ変わった。
そう。これが、あなたの実力よ。ネブローサ様。
自分を信じて、紙の上を思う存分に走りなさい。
ネブローサ様は、星空の奥に飛んでいけそうな軽い感触で紙の上を走り、暮れて間もない夜空の色の線を描いてくれるようになったのでした。
これぞ「星雲」です。
ふっふっふ。
ネブローサ様専用の一本ざしのペンケースを見繕い、ワタクシは、国内販売価格の定価10万円という恐ろしいペンをバッグに入れて持ち歩くことにしたのでした。
いまや、財布を落とすより、ペンケースを落とすほうが、よっぽど被害甚大です。
ふっふっふ。
定価よりずっと安く買える個人輸入。
たしかにリスクはあるけれど、届いてしまえばこっちのもの。
多少の出来栄えのばらつきは、ペンクリニックで調整してもらえば問題なし。
もしかすると、これまで美術品と同じように「ワタクシとは違う世界の万年筆」とあきらめていたイタリアの万年筆が、今後は真剣な検討課題に入ってくるかもしれませんよ。
ふっふっふ。
………しかし。
個人輸入ならなんでも日本より安く買えるかというと、そんなことはありません。
国内の高級文具専門ネットショップの中には、定価の2割くらいは安く販売しているところがけっこうあります。
こうした店で買えば、たとえば商品に何か問題があったときには、日本語で返品や交換の交渉を簡単にできるでしょう。海外の店で買うと、そういうわけにはいきません。
運送中になくなってしまうなどの事故があったときも、国内のショップのほうが安心ですね。
海外の店をいろいろみてみると、ブランドによっては、関税と送料を足すと国内での割引販売価格と大して変わらなくなるものもあります。
実は、アウロラもそうでした。ネブローサ様は「特別価格」だったからお得に買えたものと思われます。
はたしてリスクをとってまでやる価値があるかどうか。
個人輸入を考えるときは、熟考が欠かせません。
前回と今回の成功体験は、あくまでもビギナーズラック。
勝って兜の緒を締めよ。
ワタクシは、今後もこれまでどおり慎重に、石橋をたたいて購入を判断する決意を改めて固めたのでした。
………って、これまでの買い物、どこが石橋だったわけ?
ふわふわで、口に入れたらすぐ溶けて、飲み込めば体の芯からすうっと冷たさが広がっていく、かき氷。
アイスよりかき氷ですよ、絶対。
気温30度を超えると、アイスよりかき氷のほうが売り上げが伸びるとか。
あああかき氷………
………少々、取り乱しているようです。
こんなときは、「星雲」の名を持つ万年筆、アウロラのネブローサ様を手に取って、心静かに文字をしたためようではありませんか。

イタリアのフィレンツェにある「万年筆の家」という店から、フェデックスの貨物輸送機ではるばる地球を半周し、我が家にやってきたネブローサ様。
https://blogs.yahoo.co.jp/glirulusjp/34676243.html
上品なピンクゴールドの金具を身にまとい、青みを帯びた深い紫色の軸を手の中で転がすうちに、
イメージが固まってきましたよ。
この一本には、軸の色をそのまま紙に写し取ったような、深みを帯びて澄んだ青紫のインクを入れたい、と。
万年筆のインクの色を変えるのは、なかなか大変です。
ペン先を何度も水洗いしても、ペン芯の奥に残ったインクはなかなか完全にとれません。
聞くところによれば、メーカーが違うインクをうっかり混ぜると、成分が化学反応を起こしてペン芯やペン先をいためる恐れもあるそうですね。
しかも、ネブローサ様は、カートリッジやコンバーターではなく、胴軸に直接インクを吸い上げるタイプ。
パイロットのペンクリニックでは、洗っていただく際に、各社のカートリッジにスポイトのゴムを取り付けたものをペン先につけ、バシュバシュと水をペン芯に通してくださいますが、ネブローサ様にはこうした洗浄方法も使えません。
つまり、最初に入れたインクをネブローサ様終生の色とするのが、最も安全というわけです。
どのインクを用意するか。大問題ですね。
dマガジンで配信された趣味の文具箱のインク特集をためつすがめつして、ようやく、これはと思う色を見つけました。
Kobe INK物語の29番、須磨海浜ブルーです。
このシリーズは、今年から、銀座の伊東屋で全色が常設展示され、いつでも買えるようになりました。
いくら素敵な色でも、限定色だったり入手困難な色だったりすると、終生の色として使い続けるわけにはいきません。
ネブローサ様に使うには、いつでも手に入ることも重要なポイントです。
伊東屋で常設されるようになったことが、色の選択の決定打となりました。
初めてインクを吸い上げる瞬間は、どうしていつも、どきどきするのでしょうか。
いよいよ、ネブローサ様のペン先を、紙の上で走らせるときが、やってまいりました。
よみがえる3月の記憶。日本橋三越の「世界の万年筆祭」で試し書きした時の、色気すら感じるほどに滑らかで柔らかな感触の記憶。
さあさあさあ。いよいよですよ。

………………
……あれ?
細字だからでしょうか。それとも、本当に書き始めで、ペン先にバリが残っているためでしょうか。
手に伝わった感触は、ふわふわとは程遠い、カリカリした引っ掛かりでした。
紙の上に引かれた線は、国産の極細字にも負けないくらいの細さ。
須磨海浜ブルーの色は、思ったよりずっと薄く感じました。

うううむ。イタリアの万年筆は、同じシリーズでも一本一本の出来栄えがかなり違うとは聞くけれど、これは……
手帳に書き込むにはちょうどよい細さだったので、しばらくスケジュールを記録する小さな字を書いておりました。
でも、どうしても気になります。この引っ掛かり。
長いこと書いていると、手に負担を感じるほどの抵抗です。
無理に書き続けるとペン先をいためてしまいそうで心配なほどです。
そんなとき、東京の丸善で、宍倉ドクターのペンクリニックが開催されるとの情報を入手しました。
これは、行くしかない。
悪天候の平日だったせいか、開店早々を狙うと、それほど待たずに診ていただけることになりました。
「あのう、どうも引っ掛かりを感じるのです……」と、ネブローサ様を差し出すと、宍倉先生はルーペでペン先を一目見てうなずきました。
「ペン先の溝がとても細く閉じられていて、インクがほとんど出ていない状態ですね。引っ掛かりはそのせいでしょう」
なるほど。
つまり、インクの出がとても渋すぎたわけですね。
日本橋で試し書きしたネブローサ様は、インクが潤沢に出るよう調整されていましたので、書き味が全然違ったわけですね。
宍倉先生もネブローサ様をお持ちで、見せてくださいました。
ペン先のサイズはM。
「インクがとてもよく出るように調整してあるんですよ」
なんと、試しに書かせてくださいました!
日本橋で書いたもの以上に、インクがどんどん出てきます。
インクに乗ってペン先が紙の上を滑るのが、万年筆の気持ちよさの源だなあと、実感できる書き心地です。
ワタクシのFは、やはりネブローサ様の実力ではなかった……ということが、はっきりわかります。。
ドクターにペン先の溝を広げていただいたネブローサ様は、Fながら、あの日本橋で味わった快感を彷彿とさせる書き心地になりました。

インクの色も、かなり濃くなりました。
思った通り、軸の色にそっくりな、透明で深い青紫。色の柱は青なので、普段使いにももってこいです。
ああ、よかった。生まれ変わった。
そう。これが、あなたの実力よ。ネブローサ様。
自分を信じて、紙の上を思う存分に走りなさい。
ネブローサ様は、星空の奥に飛んでいけそうな軽い感触で紙の上を走り、暮れて間もない夜空の色の線を描いてくれるようになったのでした。

これぞ「星雲」です。

ふっふっふ。
ネブローサ様専用の一本ざしのペンケースを見繕い、ワタクシは、国内販売価格の定価10万円という恐ろしいペンをバッグに入れて持ち歩くことにしたのでした。

いまや、財布を落とすより、ペンケースを落とすほうが、よっぽど被害甚大です。

ふっふっふ。
定価よりずっと安く買える個人輸入。
たしかにリスクはあるけれど、届いてしまえばこっちのもの。
多少の出来栄えのばらつきは、ペンクリニックで調整してもらえば問題なし。
もしかすると、これまで美術品と同じように「ワタクシとは違う世界の万年筆」とあきらめていたイタリアの万年筆が、今後は真剣な検討課題に入ってくるかもしれませんよ。
ふっふっふ。

………しかし。
個人輸入ならなんでも日本より安く買えるかというと、そんなことはありません。
国内の高級文具専門ネットショップの中には、定価の2割くらいは安く販売しているところがけっこうあります。
こうした店で買えば、たとえば商品に何か問題があったときには、日本語で返品や交換の交渉を簡単にできるでしょう。海外の店で買うと、そういうわけにはいきません。
運送中になくなってしまうなどの事故があったときも、国内のショップのほうが安心ですね。
海外の店をいろいろみてみると、ブランドによっては、関税と送料を足すと国内での割引販売価格と大して変わらなくなるものもあります。
実は、アウロラもそうでした。ネブローサ様は「特別価格」だったからお得に買えたものと思われます。
はたしてリスクをとってまでやる価値があるかどうか。
個人輸入を考えるときは、熟考が欠かせません。
前回と今回の成功体験は、あくまでもビギナーズラック。
勝って兜の緒を締めよ。
ワタクシは、今後もこれまでどおり慎重に、石橋をたたいて購入を判断する決意を改めて固めたのでした。
………って、これまでの買い物、どこが石橋だったわけ?