「用の美」という言葉があります。
実用性を追求する中でうまれた、無駄な装飾をそぎ落とした合理的なもののたたずまいは美しいですね。
使われてこそ美しさが際立つ。
こうした感性は、日本だけのものではないのだなあ……と、感じるものに出会いました。
シェーカーボックスです。
シェーカー教徒が作ったからシェーカーボックスといいます。
シェーカー教徒は、米国のキリスト教の一派で、その暮らしは写真集にまとめられるほど無駄をそぎ落とした美しいもので彩られていました。
シンプルでほっそりしたラインの椅子や、優美な三脚ラインの丸いサイドテーブル。
そして、大小さまざまな大きさのシェーカーボックス。
「美は有用性に宿る」「規則正しいことは美しい」といった考え方から生まれたものだそうです。
基本的に私物を持たず、出かけるときは椅子を壁にかけ床に何もない状態にするほどに「持たない暮らし」を貫いていたとか。
元祖・ミニマリストではないかと思います。
ルンバが遭難すること確実なので導入できない床で暮らしているワタクシとは対極と言えましょう。
結婚を禁じ、子供は外から養子をとるとか、その極端なライフスタイルは、ワタクシとは相いれません。
最盛期でも千人単位しかいなかった信者は、子供を作れないので信者が自動的に増えるわけはないシステムゆえか、今では一ケタしかいないそうです。
でも、その村は、世界から観光客が訪れるスポットになっているとか。
センスの良さで、いい意味で歴史に名を遺した一派となりました。
そんな人々が、ごくわずかな私物を入れるために使っていたのが、シェーカーボックスなのだそうです。
「オーバルボックス」とも呼ばれます。
縦横比がだいたい1:0.7前後になる楕円形。
木を薄い板にして、それを曲げ、鋲でとめて作ります。接着剤は使っていません。
要は、曲げわっぱですね。
蓋を閉めると、スコっという乾いた静かな音がして、きっちり本体と蓋が合わさります。
がたつきやぐらつきはほとんどありません。
側面に一か所だけ、装飾的に見えるところがあります。
曲げた木を止める部分。「スワロウテイル」(燕の尾)というかわいらしい名がついています。
鋲は真鍮。木も真鍮も、使い込むうちに風合いが増して育っていく素材です。
シェーカーボックスの存在を知ったのは、子供のころにさかのぼります。
祖母も母も購読していた「暮らしの手帖」で、あるとき、シェーカー教徒の特集をしていたのではなかったかと思います。
切手だの鉛筆だのノートだの、コレクター癖をすでに発揮していたワタクシは、その「持たない暮らし」に衝撃を受けました。
なんてシンプルで美しい暮らしなのか! と。
……そこで「ワタクシも真似しよう」とは、まったく思わなかったのが、物欲まみれ煩悩日記の悲しいサガです。
それからはるか時は流れ……
再び出会ったのは、手作り専門サイト「iichi」でした。
チェリーにウォールナットにオーク……様々な木を、オイル仕上げでシェーカーボックスにしている作家さんがいらっしゃいました。
「Okalu」さまという方です。
チェリーにウォールナット、オークときたら、アナタ。
つまり銘木ですよ。銘木。
銘木を、オイル仕上げで、真鍮の鋲でとめたボックス。
銘木好きのワタクシが、心惹かれないわけがないではありませんか。
つい、ぽちっとしてしまいました。
届いたものは、想像以上に木目の表情が美しく、手触り最高で、手が触れた時のポンと響く音が耳をやさしくくすぐり、オイルの香りがそそるボックスでした。
常に傍らに置いて、いつまでもいつまでも撫でていたくなるボックスでした。
これは、いい!
気になったら「ほかの木でも作られていないかなあ」と調べてしまうのが、物欲まみれ煩悩日記の悲しいサガです。
調べてみると……
最近、どうもシェーカーボックスが流行っているらしい。
数人の作家さんが製作しておられ、品薄で入荷待ち状態が続いているらしい。
……ということがわかりました。
へええ流行ってるんだ……
ほかの作家さんのは、どんな雰囲気なのかなぁ……
シェーカーボックスは、基本的に作りは同じ。サイズも基本形は決まっているようで、作家さんが違っても同じサイズのボックスが作られています。
そして……ありましたよ。
銘木好きのワタクシの心をくすぐるボックスが!
バーズアイメープルで作られたシェーカーボックスです。
バーズアイメープルとは、メープルの木に現れた点状の模様を鳥の目のように見立てて愛でる杢の一種です。
バーズアイメープルときたら、銘木好きとしては見逃すわけにいかないではありませんか。
ぽちっ。
……物欲まみれ煩悩日記の悲しいサガです。
届いたのは、バーズアイの入り具合がまんべんなく美しい、贅沢なボックスでした。
これはカナダのブレント・ルークさんという職人の作品です。
イデーで扱っているボックスも、ブレント・ルークさんのものだそうですね。楽天でもあちこちのショップが扱っているので、おそらく割と大手のメーカーなのではないかと思います。
ちょっと残念だったのは、仕上げがオイルではなくラッカーだったことです。
つるんと滑らかな仕上がりで、バーズアイメープルの杢目が際立つ効果はあるのですが、いかんせん木のナチュラルな手触りはなくなってしまいます。
オイルと違って経年変化が楽しめるかどうかも微妙なところ。
内側はすっぴんで、何も塗っていません。
シェーカーボックスはどうやら、本来、この仕上げのほうが正統で、外側のラッカーと内側のすっぴんで木の調湿性を保っているのだとか。
オイル仕上げよりラッカーのほうが耐水性もあり、扱いが楽ですしね。……ま、内側はすっぴんなので、塗れたものを入れると染みになりますが。
でも、銘木好きのワタクシとしては、やっぱりオイル仕上げのほうが好きなんですよね……
使い込むと艶や風合いが増して、経年変化していくのは、やっぱりオイル仕上げですからね……
日本では、2008年の天然生活4月号に出ていた木工作家の井藤昌志さんとか、小林克久さんといった作家さんのシェーカーボックスが有名みたいです。
こちらは、ネットショップをいくつか覗いてみましたが、いずれも品切れで入荷待ち。小規模な工房でこつこつ作られているようです。まさに「作家モノ」のシェーカーボックスですね。
さて。
木の美しさに惹かれて買ったシェーカーボックス。
これは、使ってナンボの存在です。
なんたって、用の美。「美は有用性に宿る」のですよ。
さっそく、使ってみました。
ちょいと手が届くところにほしいけど、出しっぱなしだと美しくないものって、ありますよね。
例えば、個人情報を隠して捨てるためのスタンプとか。
万年筆は、きちんとペンケースに入れますが、ふつうのボールペンやハサミやカッターなんかは、ざらざらしまってしまいますよね。
ついつい買っちゃうスタンプ類も。
まさに、雑貨です。
……そんなの、お菓子の空き箱にでもしまっておけばよいではないか……てなものばっかりですな。
でも、お菓子の空き箱に入れておくと、雑然とした印象はそのまま。
それが、シェーカーボックスなら違います!
見よ! この、オシャレ感!!
統一されたシンプルなデザイン。美しい木目。
この中に、わけがわからないものが、ごっちゃりと詰め込まれているなどと、いったい誰が想像するでしょうか。
サイズ違いを積み上げただけで、ほら! オシャレなインテリアの出来上がりです!!
わけがわからないものが、オシャレなインテリアになるなどと、いったい誰が想像するでしょうか。
恐るべし、シェーカーボックス。
チェリーにバーズアイメープルときたら、次はウォールナットかオークか。
まだまだ、わけがわからないものは、家の中にたくさんあるし。
大きなボックス、小さなボックス、もっと積んだら、きっとかわいい。
ううむ。これは、増える予感。
…………………
ここで、ふと感じる、根源的な矛盾。
思い出してみましょう。
シェーカーボックスを作ったシェーカー教徒は、
基本的に私物を持たず、家の中に必要最小限のモノしか置かず、ミニマムな暮らしをしていた人々でした。
彼らが最小限の私物をしまうために作ったのが、シェーカーボックス。
つまりシェーカーボックスは、ミニマリストの象徴的なアイテムとも言えましょう。
それを、木の種類やサイズを増やすために、集めてしまう、このワタクシ。
ミニマリストの象徴を、コレクションしてしまう。
これこそ、物欲まみれ煩悩日記の悲しいサガです。
実用性を追求する中でうまれた、無駄な装飾をそぎ落とした合理的なもののたたずまいは美しいですね。
使われてこそ美しさが際立つ。
こうした感性は、日本だけのものではないのだなあ……と、感じるものに出会いました。
シェーカーボックスです。

シェーカー教徒が作ったからシェーカーボックスといいます。
シェーカー教徒は、米国のキリスト教の一派で、その暮らしは写真集にまとめられるほど無駄をそぎ落とした美しいもので彩られていました。
シンプルでほっそりしたラインの椅子や、優美な三脚ラインの丸いサイドテーブル。
そして、大小さまざまな大きさのシェーカーボックス。
「美は有用性に宿る」「規則正しいことは美しい」といった考え方から生まれたものだそうです。
基本的に私物を持たず、出かけるときは椅子を壁にかけ床に何もない状態にするほどに「持たない暮らし」を貫いていたとか。
元祖・ミニマリストではないかと思います。
ルンバが遭難すること確実なので導入できない床で暮らしているワタクシとは対極と言えましょう。
結婚を禁じ、子供は外から養子をとるとか、その極端なライフスタイルは、ワタクシとは相いれません。
最盛期でも千人単位しかいなかった信者は、子供を作れないので信者が自動的に増えるわけはないシステムゆえか、今では一ケタしかいないそうです。
でも、その村は、世界から観光客が訪れるスポットになっているとか。
センスの良さで、いい意味で歴史に名を遺した一派となりました。
そんな人々が、ごくわずかな私物を入れるために使っていたのが、シェーカーボックスなのだそうです。
「オーバルボックス」とも呼ばれます。
縦横比がだいたい1:0.7前後になる楕円形。

木を薄い板にして、それを曲げ、鋲でとめて作ります。接着剤は使っていません。
要は、曲げわっぱですね。
蓋を閉めると、スコっという乾いた静かな音がして、きっちり本体と蓋が合わさります。
がたつきやぐらつきはほとんどありません。
側面に一か所だけ、装飾的に見えるところがあります。
曲げた木を止める部分。「スワロウテイル」(燕の尾)というかわいらしい名がついています。
鋲は真鍮。木も真鍮も、使い込むうちに風合いが増して育っていく素材です。

シェーカーボックスの存在を知ったのは、子供のころにさかのぼります。
祖母も母も購読していた「暮らしの手帖」で、あるとき、シェーカー教徒の特集をしていたのではなかったかと思います。
切手だの鉛筆だのノートだの、コレクター癖をすでに発揮していたワタクシは、その「持たない暮らし」に衝撃を受けました。
なんてシンプルで美しい暮らしなのか! と。
……そこで「ワタクシも真似しよう」とは、まったく思わなかったのが、物欲まみれ煩悩日記の悲しいサガです。
それからはるか時は流れ……
再び出会ったのは、手作り専門サイト「iichi」でした。
チェリーにウォールナットにオーク……様々な木を、オイル仕上げでシェーカーボックスにしている作家さんがいらっしゃいました。
「Okalu」さまという方です。

チェリーにウォールナット、オークときたら、アナタ。
つまり銘木ですよ。銘木。
銘木を、オイル仕上げで、真鍮の鋲でとめたボックス。
銘木好きのワタクシが、心惹かれないわけがないではありませんか。
つい、ぽちっとしてしまいました。

届いたものは、想像以上に木目の表情が美しく、手触り最高で、手が触れた時のポンと響く音が耳をやさしくくすぐり、オイルの香りがそそるボックスでした。
常に傍らに置いて、いつまでもいつまでも撫でていたくなるボックスでした。

これは、いい!
気になったら「ほかの木でも作られていないかなあ」と調べてしまうのが、物欲まみれ煩悩日記の悲しいサガです。
調べてみると……
最近、どうもシェーカーボックスが流行っているらしい。
数人の作家さんが製作しておられ、品薄で入荷待ち状態が続いているらしい。
……ということがわかりました。
へええ流行ってるんだ……
ほかの作家さんのは、どんな雰囲気なのかなぁ……
シェーカーボックスは、基本的に作りは同じ。サイズも基本形は決まっているようで、作家さんが違っても同じサイズのボックスが作られています。
そして……ありましたよ。
銘木好きのワタクシの心をくすぐるボックスが!
バーズアイメープルで作られたシェーカーボックスです。
バーズアイメープルとは、メープルの木に現れた点状の模様を鳥の目のように見立てて愛でる杢の一種です。
バーズアイメープルときたら、銘木好きとしては見逃すわけにいかないではありませんか。
ぽちっ。

……物欲まみれ煩悩日記の悲しいサガです。
届いたのは、バーズアイの入り具合がまんべんなく美しい、贅沢なボックスでした。
これはカナダのブレント・ルークさんという職人の作品です。

イデーで扱っているボックスも、ブレント・ルークさんのものだそうですね。楽天でもあちこちのショップが扱っているので、おそらく割と大手のメーカーなのではないかと思います。

ちょっと残念だったのは、仕上げがオイルではなくラッカーだったことです。
つるんと滑らかな仕上がりで、バーズアイメープルの杢目が際立つ効果はあるのですが、いかんせん木のナチュラルな手触りはなくなってしまいます。
オイルと違って経年変化が楽しめるかどうかも微妙なところ。
内側はすっぴんで、何も塗っていません。

シェーカーボックスはどうやら、本来、この仕上げのほうが正統で、外側のラッカーと内側のすっぴんで木の調湿性を保っているのだとか。
オイル仕上げよりラッカーのほうが耐水性もあり、扱いが楽ですしね。……ま、内側はすっぴんなので、塗れたものを入れると染みになりますが。
でも、銘木好きのワタクシとしては、やっぱりオイル仕上げのほうが好きなんですよね……
使い込むと艶や風合いが増して、経年変化していくのは、やっぱりオイル仕上げですからね……
日本では、2008年の天然生活4月号に出ていた木工作家の井藤昌志さんとか、小林克久さんといった作家さんのシェーカーボックスが有名みたいです。
こちらは、ネットショップをいくつか覗いてみましたが、いずれも品切れで入荷待ち。小規模な工房でこつこつ作られているようです。まさに「作家モノ」のシェーカーボックスですね。
さて。
木の美しさに惹かれて買ったシェーカーボックス。
これは、使ってナンボの存在です。
なんたって、用の美。「美は有用性に宿る」のですよ。
さっそく、使ってみました。
ちょいと手が届くところにほしいけど、出しっぱなしだと美しくないものって、ありますよね。
例えば、個人情報を隠して捨てるためのスタンプとか。

万年筆は、きちんとペンケースに入れますが、ふつうのボールペンやハサミやカッターなんかは、ざらざらしまってしまいますよね。
ついつい買っちゃうスタンプ類も。
まさに、雑貨です。

……そんなの、お菓子の空き箱にでもしまっておけばよいではないか……てなものばっかりですな。
でも、お菓子の空き箱に入れておくと、雑然とした印象はそのまま。
それが、シェーカーボックスなら違います!
見よ! この、オシャレ感!!

統一されたシンプルなデザイン。美しい木目。
この中に、わけがわからないものが、ごっちゃりと詰め込まれているなどと、いったい誰が想像するでしょうか。
サイズ違いを積み上げただけで、ほら! オシャレなインテリアの出来上がりです!!
わけがわからないものが、オシャレなインテリアになるなどと、いったい誰が想像するでしょうか。

恐るべし、シェーカーボックス。
チェリーにバーズアイメープルときたら、次はウォールナットかオークか。
まだまだ、わけがわからないものは、家の中にたくさんあるし。
大きなボックス、小さなボックス、もっと積んだら、きっとかわいい。
ううむ。これは、増える予感。
…………………
ここで、ふと感じる、根源的な矛盾。
思い出してみましょう。
シェーカーボックスを作ったシェーカー教徒は、
基本的に私物を持たず、家の中に必要最小限のモノしか置かず、ミニマムな暮らしをしていた人々でした。
彼らが最小限の私物をしまうために作ったのが、シェーカーボックス。
つまりシェーカーボックスは、ミニマリストの象徴的なアイテムとも言えましょう。
それを、木の種類やサイズを増やすために、集めてしまう、このワタクシ。
ミニマリストの象徴を、コレクションしてしまう。
これこそ、物欲まみれ煩悩日記の悲しいサガです。