古いものには、不思議なワクワクが詰まっています。
今では店頭に並んでいない万年筆を手に取るたびに、なぜだか気分が高揚してしまう……
それは、ワタクシだけでしょうか?
……ま、滅多にいない嗜好ですよね。万年筆の廃盤品ゲッター。
プラチナのリビエールという万年筆です。

現代にも、プラチナのリビエールという万年筆は、実はあるようです。
ダイソーで売られている108円の万年筆に、その名前が使われているとか。
でも、これはもちろん108円ではありません。
昭和40年代からあったプラチナの高級万年筆の人気シリーズです。
古い万年筆を調整して販売しているサイトで見つけました。
ネットって、ホントにいろんな店があるなあ。
国産の古い万年筆の魅力は、なんといっても、リーズナブルなお値段。
この万年筆も、そのへんのちょっといいボールペンと同じくらいで買えました。
ステンレスと思われる胴軸は、全体に細い線でつや消し加工をしたヘアライン仕上げ。
金色のストライプと小さな丸い突起がアクセントになって、高級感を感じるデザインです。
このお値段で、こんな凝ったデザインの万年筆を買えるなんて、お得感。
ほくほくほく。
……見た目が買った理由のすべて。完全に、ジャケ買いですな。
ワタクシにとっての万年筆・ザ・スタンダード、パイロットのカスタム74に比べると、一回り小振りです。
手帳やスーツの胸ポケットにすっと挿して使うことを想定したデザインなのでしょうか。
ワタクシの手にはちょうどよいサイズ感です。

蓋をしたときの長さは14センチほど。

蓋を開けてお尻に挿すと、15センチほどに伸びます。
重心がいいバランスです。

握ったときの、ひんやりした金属の感触が気持ちいいです。
小振りですが、金属軸なので、しっかりした重みで安定感があります。
昔のプラチナの万年筆と言えば、これもワタクシのペンケースに入っています。
昭和54年に発売され、グッドデザイン賞をとった、ベラージュ。
並べてみると、そっくりですね。

軸の両端がすっぱり切り落とされ、フラットになっているいさぎよいシルエットも。
黒いクリップの存在感も。
昭和50年前後は、こういう大きさとシルエットの万年筆が流行っていたのかもしれません。

このリビエールは、おそらくベラージュより一段高級だったのだろうと思われます。
キャップのトップに、「プラチナ ジャパン」と刻印が打たれているところをみると、もしかして輸出仕様?

万年筆が今より当たり前に実用品だったころ、このリビエールはどんな狙いで開発された商品なのでしょう。
新入学や就職のお祝い? お世話になった人の転勤や退職祝い?
自分用というよりは贈答品にふさわしいようなたたずまいを感じます。
ところが、蓋を開けると、ペン先はシンプルで実用的。
ベラージュに本当にそっくりです。少し小さめですが。
あ、左側がリビエールです。念のため。
材質も同じ14k。同じ金型のサイズ違いを使ってつくられたペン先かもしれませんね。

裏返すと、溝が切られていないペン芯です。これもベラージュと同じ。

国産の古い万年筆の偉いところは、たいがい現行品のコンバーターがつくことです。
おかげで、インクを選ぶ楽しみも味わえます。
これには何色のインクをいれようかな?
実は、買う前から決めていました。
緑色のインクが似合いそうだなあ。でも、色彩雫の深緑ほどには強い色味でなく、もう少し透明感があるインクがいいなあ。
ネットで買ってあったのは、ジョイフル2新田店限定の「尾瀬エメラルド」という色です。
ええ。地方のお店の限定色ですからね。もちろん、書いたことはありません。
……って、インクもジャケ買いかい。
ま、ともかく、さっそく詰めてみましょう。
さあ、いよいよ、書いてみます。
古い万年筆で一番わくわくするのが、この瞬間。
紙にペン先をあてるときです。
なんたって、数十年前につくられたペンです。
ほとんど未使用というコンディションでしたが、果たして、ちゃんとインクが出てくるのでしょうか。
どきどき。
……おおっ!
もちろん、何事もなくインクは紙に滑り出してきました。
調整していただいたためでしょうが、もともとのペン先の力でもあるのでしょう。とても滑らかで、頼れる感触の書き味です!
手帳に書き込むのにちょうどいい細字なのに、ひっかかりが全く感じられません。
ペン先のしなりはほとんど感じませんが、決してアタリが硬くなく、やさしいやさしい書き心地です!

尾瀬エメラルドは、想像通り、透明感があって明るく、少し青みがかった、ワタクシ好みの色でした。
夏が来れば思い出す……みたいな色です。あくまでもイメージですが。遠い空。水芭蕉の花が咲いている、みたいな。
ええ。行ったことないんですよね、尾瀬。
……って、おい。
いや、ま、ともかく、
こういう緑が好きなんだよなあ。
やさしい書き味に、やさしい緑。
今では滅多に見かけない、華奢な金属の凝った軸。
数十年前、どんな人が、この万年筆を買って使っていたのでしょう。
想像しながら書くと、さらにいっそうワクワクします。
ああ、やっぱり、古い万年筆って、素晴らしい。
こうして廃盤品ゲッターの道は続く……のか?
……ちなみに、
尾瀬エメラルド、煮あがると、深緑そっくりの強烈な緑になります。
万年筆に詰めたインクは、なるべく早く使いきりましょう。