この話は私が20歳くらいの時の話です。
少し記憶が曖昧な部分もありますが、実話です。

その日、私とK君、それと幼馴染のT君と三人でファミレスでご飯食べてましたらね、突然どこかに行こうと言う話になりましてね、山梨県のとある山へと行く事に決まったんですよ。

時間は夜の8時くらいでしたかね。
K君の運転で、助手席にはT君、で…後部座席に私。
夜道を相模湖に向かって車を走らせてました。

途中のコンビニでお菓子や飲み物なんか買ってね、ちょっとしたピクニック気分で、目的地へ向かってたんです。

相模湖から中央道に乗りましてね、甲府方面へ。
夜もそこそこの時間ですから、道は空いてるんですよ。

途中で運転を代わりながら、目的のインターへ到着したんです。
もうその頃には日付が変わる頃でしたかね。

なんでここに来たって?
いや、特に意味はないんですよ。
ただ、明日、明後日と三人とも休みなもんだから、少し遠出をしたかったんですよね。

目的のインターを降りて、駅に向かったんですがね、当たり前なんですが、誰もいないんですよ。
観光地ですから、昼間はそれなりに賑わうんですが、今は人影すら見えない。
ただ、星が綺麗でしたね。
都会じゃ見ることの出来ない素晴らしい星空でした。

さて、どうしようか?
こんな時間じゃ泊まるところも難しい。
宿は明日泊まる事にして、今日は道の駅で夜を明かそうって話になったんですね。

その道の駅に向かう途中、私はあまりの眠さに後部座席で横になって寝てしまったんです。

そのうち、前の座席の二人が話しているのが聞こえるんですよ。

「何してるんだろうな?」
「探し物かな?」
「声掛けてみようか。」

そんな会話が聞こえてきたんで、重い体を起こして外を見たんです。
そこ、踏切なんですよ。
終電の終わった踏み切りの真ん中に車を止めて、二人は何かを見ているわけです。

「声掛けた方がいいよな。」
「うん、そうしよう。」

何の話だろうと窓の外を見ると
少し屈んだ格好で初老の男性がこちらに向かって歩いて来るんですよ。
「あれ?いや、これって…」
私は違和感を感じました。

T君が「おじさーん!何探してるのー?」

ダメだ!話し掛けるな!

その男性は車に近付いてくると

「これ、これ…」と自分の左手を指で指した。


その左手、肩から先がないんですよ


「車出せ!早く出せ!」


急いでK君が車を出そうとするけれども、焦ってなかなか発進出来ない。
そうこうしている間にも



「これ、知りませんか…一緒に探してくれませんか…」




次の瞬間、車は猛スピードで踏み切りを抜けて山道を走り抜ける。
その間、皆無言ですよ。

どれくらい走ったでしょうかね。
やっと、国道に出て、明かりで車内が満たされたんですよ。
ホッとしたように…

T君が「あれ、霊だよな」
私は静かに頷いた。
T君、今まで生きてきて初めて霊を見たんですよ。
それまで、霊を信じてなかった彼はこの出来事をきっかけに信じるようになったんですがね。

これは仮説ですがね、あの踏み切りで悲しい事故があったんじゃないかな…と。
それで、左手が飛んでいってしまって、行方不明のまま…
それを探しに夜な夜な現れてるんじゃないかなと。

※後日、この話は稲川淳二さんもお話されていて、おおよそ同じ内容でした。

とにかく、道の駅へと行きましてね、そこで各々寝る場所を確保して、少し仮眠する事にしたんです。

朝になって、起きると身体が痛いんですよ。
そりゃ、小さい車で丸まって寝たわけですからね。
今日はどこか宿に泊まって、ゆっくり寝ようと言う話で纏まったんです。

で、前の二人は昨夜の話で盛り上がってんですよ。
二人ともあんな体験は初めてでしたから、興奮冷めやらぬ様子で…
昨夜は二人共、涙目だった事は言わないでおきましょうか。

朝から簡単に朝食を食べましてね、観光をするわけですよ、少し足を伸ばして野辺山の方へ行って、牧場でアイスクリームを食べたり、清里の美味しいカレー屋さんに行ったり、楽しい一日を過ごしましてね。
じゃあ、今日の宿どうしようかって話になったんです。

大きな有名ホテルがありましてね、そこへ電話してみたんですが、館内点検だかなんだかで休館だったんですよ。
いくつか電話をしてみたんですが、どこもシーズンオフでお休みなんですね。

「困ったな…」
そこで思い出したんですよ。
 
ペンション村の入口にペンションの一覧が載っている看板があったはずだ…と。

急いでそこへ向かうと、ペンションの名前と電話番号が書いてある。
何軒か電話してみたんですが、やはり休館だったり、電話が通じなかったり…

そんな中、電話をしていたT君が
「ここ空いてるって。」
もう寒いですし、そこでいいかってK君と私は顔を見合わせて頷いた。

地図を確認して、そのペンションへと向かうと
どうやらここらしい。

薄暗いがそれ以外は、至って普通のペンションだ。

呼び鈴を鳴らすとご主人が出て来て…

「いらっしゃい、えーと、これ部屋の鍵ね。部屋に宿帳があるから後で書いておいて下さい。」

荷物を持って、部屋へと向かう。

103号室…

階段を下って行くと、すぐ正面だ。