部屋に入ると、部屋一杯にベッドが4つ並んでいる。
置いてある…と言った方がしっくりきますね。
一つのベッドに適当に荷物を置いて、各々ベッドに転がりましてね。
昨日もろくに寝てないもんだから、眠いは眠いんですよ。
「おい、風呂どうする?」
「眠いし、起きてからでいいんじゃない?」
なんて話をしてたんですが、気付いたら皆寝入っちゃったんですよ。
するとね、どこからか
「やめてよー!痛いよ!やめてよー!」
子供の声がするんですよ。
時計を見るといつの間にかもう0:00近いんだ。
こんな時間に何をやってるんだろう?
そう思って、頭を上げて聞いてると…
どうやらその声は、窓の外から聞こえるんです。
そのうちT君とK君もその声に気付いて起きましてね、三人で顔を見合わせた。
「やめてー!痛い!痛いよー!わーん!」
「なんでわかんないんだ!」
その後、頬を叩く音が聞こえるんですよ。
子供が虐待されているのは明らかですよね。
「なぁ、これってまずいよな。」
どこからこの声がするのか、窓を少し開けて耳を澄ましてみたんですよ。
相変わらず、子供の泣き叫ぶ声は聞こえるんですがね…
それ、このペンションから聞こえるって事に気付いちゃった。
あのオーナーに子供が居て、虐待されてるわけですよ。
何とかやめさせないといけない。
けど、この頃はまだ今ほど虐待とか厳しい目で見られてなかったですからね。
私達もどうするべきか考えてたんですよ。
「うるさくて眠れない」
お客として、そう言うのが一番だって事になりましてね、言いに行こうとしたんですが…
そこで気付いたんですよ。
その子供が泣き叫ぶ声…段々と近付いてきてるんです。
鬼気迫る声で…
「ぎゃー!やめてー!ごめんなさいー!」
「痛いよー!痛いよー!」
もう、階段を降りて、そこまできてる。
T君とK君はパニックですよ。
「なぁ、どうする?こっち来るよ!」
私はドアを少し開けて廊下を見た。
誰もいない、何もない空間に子供が泣き叫ぶ声が響いてるんです。
「逃げるぞ!」
そう二人に伝えると、暗い廊下を走って、階段を駆け上がって、急いで車に乗り込んだ。
直ぐにエンジンを掛けて、とにかくペンションから離れようと急発進する。
キュルルルルルルル…タイヤを鳴らしながら、夜の山道を走って、昨日来た道の駅へと戻ってきたんです。
「なんだったんだよ、あれ。」
「わかんないけど、普通じゃない。」
せっかく、ゆっくりと休めると思ったのに…こんな恐怖に襲われるなんて思わなかったですからね…
少し落ち着いた頃、もう地元に帰ろうって話になったんですが…そこでT君が、あのペンションに荷物を置いてきてしまったと言うんですよ。
財布やら免許証やら入ってるって事で、戻りたくないですが、戻る事になったんですよ。
でも、怖いもんだから、夜が明けてからって事になりまして、それまで道の駅で仮眠して…
で、夜が明けたんで…
昨日、あんな体験をしたペンションへ戻ったんです。
「え?いや、ここじゃない」
おかしいんですよ。ついさっきまでこのペンションに居たはずなのに、外観はボロボロで…
正に廃ペンションなんですよ。
「おい、間違えてないか?こんなにボロいペンションじゃなかったよな。」
T君はそう言ったんですが…
いや、間違ってなんかなかったんですよ。
確かに私達はこのペンションに泊まっていた。
その証拠に…ペンションの入口に昨日見たオーナーと小さい女の子が寂しそうな顔をして、こっちを見てるんですから。
もちろん、生きてる人間じゃありませんでしたがね。
この山そのものが、お墓みたいなものなんでしょうね…
~完~
