平安時代の面白おばさん

清少納言の書いたエッセイ集

「枕草子」

出れでもわかる超口語訳でお送りいたしております!

今日はかの有名な「清涼殿の丑寅の隅の…」の第二回目だあ!!

 

 

さて前回、天皇様と中宮様が清涼殿におられるとき、

中宮のお兄様の大納言伊周様がいらして、

こりゃ目の保養だわ~って思うくらい美しい場面で、

天皇様がお昼をお召しになりにいかれます。

では、本文ですよ~!

 

 御供として、伊周様が付き従っていかれたけど、まもなく戻ってこられたのね。

そして今度は先ほど話した、あの見事な桜の花のそばにお座りになる。

中宮様がご自分の前に置かれた几帳を押しやって、長押のとこまでお出ましになるご様子…

もう、言葉を添える必要なんてない、ただただ素晴らしい、尊いのよ~~!!

これを見てる人たちも、何一つ憂いなんてないような幸せな気持ちになるんです。

伊周様が

「月も日も変はり行けども久に経る三室の外宮所」

 と(どんなに長い年月が経っていっても、いつも変わるがない三室山の離宮は)

という古い歌を、ゆるやかに朗誦されている様子ったら、もうこの時間この場所にピッタリすぎるのよ。

その歌のように、今私が見てるこの光景こそが、千年経っても変わらないで欲しいものなの!

もうね、素晴らしすぎなのよ~って、感慨にふけっていたんだけど、

実はそんなボウっとしてる場合じゃなかったんだな、これが…

 というのも、お昼のお世話をする公卿が、配膳係を呼ぶ暇もないくらいに、

天皇様ったら、お食事がお済になると、さっさとこちらに戻って来ちゃったのね。

そして、あろうことか私に「硯の墨を磨りなさい」とお命じになられたの。

いやだって、私ときたら、たった今まで目をハートにして中宮様のお姿に見とれてたのよ!

それなのに今度は急に天皇様から御用をいいつかったのよお!

はたから見たら、さぞかし私は千年先をぼんやり考えてたみたいで、

どこ見てるっていう目つきをしてたと思うわ…、恥ずかしい…。

天皇様は白い紙がおりたた積んであるのを指さして、女房達に

「この紙に、今思いつく古い歌などを、それぞれ一首づつ書きなさい」

と仰せられるの。

伊周様が部屋の外にいらしたので、私が「まあ、どうしましょう」と助け船を求めると、

「すぐに書いて天皇様にお出しなさい。今ここでは中宮様とあなたたち女房がたが主役ですよ。

男である私の立場から助言などできるものじゃありませんよ」

とおっしゃって、ご自分で天皇の御前から硯を私の目の前まで持ってきて、

「さあ、早く早く、そんなに深く悩んじゃいけません。難波津の歌でも何でもいいですから、さあ」

と天皇様の御意向に沿って、せかすのよね~。

何でこんなに気後れするのか、我ながら恥ずかしい位に赤面して、気が動転しちゃって…。

今の季節にふさわしい春の歌、花の心など、そんな感じのものを上級の女房達がサラサラと書いて、

余白を残してとこを指し示して「さあ、あなたはここに書いて」なんて言う。

私は少しでもこの状況にふさわしい歌を取り上げたら良いんじゃないかと思って、

古今和歌集の有名な歌でしかも桜を挿した花瓶を詠んだという詞書を持つ歌を選んだの。

「年経れば齢は老いぬ然は有れど花をし見れば物思ひも無し」

 (年月が経ち、私たちも年を取ったが、そうはいっても美しい桜の花を見れば、何の思いもないほどです)

 

さて、転んでもただじゃあ起きない清少納言さん。

一体この歌に何を仕込んだんでしょう… 次回をお楽しみに!!