インシテミル/米澤穂信 | フェンリルの胃袋

気に入ったから細かく読んでみた。

そしたらちょいとひっかかる部分が出てきたので書いてみる。

次の文章で真犯人とそのトリックが書かれて以降ずっとネタバレ全開で書くので気にする人はこのしたを見ないように。











まず第一に、関水はどうして「薬殺」を選べたのか。

暗鬼館で自分に配られた武器は「圧殺」で吊天井。他の人は何を持っているかわからない状態で「薬殺」の捏造。これはなかなかに神がかり的じゃない?どうして「薬殺」が他の人と被ってないとわかる?もし他の11人(少なくとも公開して見せた3人)の誰かと被っていたらその時点でアウト。計画は破綻する。

時間が進み、ある程度他の人の持っているものが判明してからならまだありうるが、関水が武器を捏造したのはなんと初日。しかもサンプルが自分の手元の「圧殺」の文面しかないのに見事なパスティーシュをしてみせた。当然他に「薬殺」がいたときに備えて「薬殺」以外のメモランダムとサンプルも用意していたと考えられるが、さてそんなに都合よく複数の選択肢を用意できたかどうか。何せ徹底的に所持品を取り上げられ、偶発的な危険性を排除し、そんな中に例外的に持ち込めたのが唯一化粧品(の瓶)だった。有名なミステリで使われた物、という縛りもつく。そんな状態で複数の武器を捏造できるか?


第二に、関水の動機について。

10億のお金が欲しい。これはいい。しかし、募集要項では時給はたったの1120百円。7日間フルでやっても1800万程度にしかならない。行動にボーナスがつくことも当然予想は出来るけど、それも掛け算という保証なんかどこにもなかった。むしろ掛け算でのボーナスなんかを用意した機構の気が知れない。10人殺して10人分自分で探偵したら2の10乗×3の10乗で6000万倍を超える報酬にならんか。1800万の6000万倍はいくらなんでもありえなさ過ぎる。そんな可能性がある計画は普通はたてない。クローズドサークルは全滅あり、とわかっているのにそんな計画はありえない。

まあ機構は結局まともじゃなかったということにしても、関水にとって参加する意義があったかどうか。10億必要なのに、普通に考えたら1800万+αしか稼げそうもない危険な場所に行く必要があるかどうか。

事前に他の参加者よりも詳しいルール/主に報酬についてを機構側から知らされていた可能性は十分にある。それはそれでとてつもなく不公平だと思うけど。


第三に、カードキーの十戒について。

これはルールブックに載ってない部分だから有りといえば有りだが。

「探偵役となったものは殺人を行ってはならない」

これを関水は完全に無視してますよね。殺人を行ってから探偵役をしたからセーフ、とかそう言う屁理屈はダメです。カードキーに書かれている以上は機構側が提示した文章であり、この十戒の一文を盾に報酬が払われないなんて事態はまったくないとは言い切れないんじゃないだろうか。報酬が本当に計算どおり払われるかどうか最後まで心配していた関水にとって、この一文は冗談だとして無視することが出来るだろうか。


最後に、武器候補について。

洋食はナイフとフォークが武器になるから出なかった。ふうん。

・・・箸も十分武器になると思うんですけど。

ビリヤードのキューなんかはもっと使いやすい武器になると思うし。

火気厳禁とはいえ、電気は来ていて電灯もつくし家電製品もあるなら火種を得ることは全然難しくない。



とりあえずこのぐらいだろうか。

おもしろい作品だったことは間違いないんだけど。

せっかくちゃんとした引きを作って終ってあるから次回作希望。