【詩】・立ち位置 | 〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

筆者のリアル体験物語。「社内恋愛」を題材にした私小説をメインに、創作小説、詩を綴っています。忘れられない恋、片思い、裏切り、絶望、裏の顔―― 全てが入った、小説ブログです。


::: 追憶の向こう側 :::



いつもとは、逆の階段を下りる。

いつも…?

今でこそ “逆” と言っているが、
遡れば、元々は “順” だった。


記憶を遠ざけるために、あの頃からずっと
いつもの反対側の階段を下りていた。

電車を降りてから、改札が遠くなるのに。
長く続くホームを、歩かなければならないのに…。


しかし、今日は運が悪かったのか…
階段の片側が閉鎖されていた。

【改修工事】

…仕方ない。

右側に下りる、懐かしい階段を見下ろした。


ああ、そうそう。
この眺めだ。

見下ろすのは、いつ以来か…。


ふと、懐かしい風が吹き上げた。

甘く、切なく、痛く、辛く、悲しい…
想いの数々が、風と共に 走馬灯の如く駆け抜けた。


ホームの先まで、歩けない。

心がまだ、受け入れない。


階段を下り、ほんの数秒だけ真っ直ぐに前を見た。
電車を待つ、まばらな乗客が視界に入る。

二つ先の柱の辺りに、あったはずの売店。

最初から無かったかのように、先まで見通せて視界が広い。
いつ無くなったのかさえ、気付かずにいた。


あの頃、あの時――
様々な情景が浮かびあがりかけて、軽く頭を振る。

長い間避けていた分、
落ち着かない場所へと変わっていた。


私が立つ場所は、もう ここではない。


記憶を振り切るように、踵を返した。




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最後まで読んでくださり、ありがとうございます。(*・ω・)*-ω-)) ペコリ
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