雑に敷かれた布団の上で、二人は抱き合った。
カーテンを引いても、部屋は明るく、
網戸からは、まだ少し冷たさが残る風が吹き込む。
「・・――――― っ・・・!」
声が出せない。
こんな昼間に、部屋の扉は開け放してあり、
しかも窓まで開いていて・・・
いつ、彼の家族が帰ってくるかも判らない状況での
セ ックスは、刺激的なのかもしれないが、不安で堪らない。
今日も、彼がしたいように、されるがまま身体を任せる。
さすがに、痛がることは止めてくれるが、それ以外は
岩田さんの好きなように、欲求が満たされるまで、私を抱いた。
.
.
事が済んでから、少しの間だけ、私を腕に包んでくれる。
そのまま、寝息が聞こえてくる時もあれば、
たわい無い話をすることも。
背中から抱きしめる格好の彼は、突然語り始めた。
「欲しいんだよなぁ。キャンピングカー」
「どうしたの?いきなり・・・。キャンピングカー?」
「前から欲しいとは思ってたけど、最近、すごく欲しくて」
「キャンプとか楽しそうだけどね。普段乗るには、どうかな・・・」
「そうなんだ。そこがなー」
本気で欲しくて、本気で悩んでいる様子が伝わってくる。
アウトドアが大好きな岩田さんだから、欲しいと聞かされても、
それほどの驚きは無いけれど、現実的にどうなのだろう。
普通車と、趣味でキャンピングカーを所有するって・・・。
維持費だって必要だよね。
そんなに収入があるとは、思えないし。
「まあ、キャンピングカーじゃなくても、大きな車が欲しいって
思っているんだ。そろそろ買い替えようかってね」
「そうだったの?」
「だから、車見に行くの付き合ってくれよ」
「うん、行きたい!」
振り返り、彼と視線を合わせる。
ようやく、岩田さんの彼女だという実感のようなものが、
私の中に小さく生まれた。
欲張らなくていい。
小さくても、確かな幸せがあれば、それがいい。
岩田さんは、私の思いを知ってか、知らずか・・・
「家族が増えた時のことを考えたら、
やっぱり大きい車がいいもんな。
いつまでも、今の車を乗っていられないし」
「・・・? お姉さんの子供・・・とか?」
「そうじゃなくて」
“解るだろ?” と、言わんばかりの表情で返してくる。
すぐには解らなくて、考えてみたのだが・・・
急に、金さんの奥さんの顔が、頭に浮かんだ。
“結婚となったら、本当に大変だからね”
日本人同士でさえ、結婚は大変なのだから、
外国籍の相手となれば、更に困難なこともあるだろう。
でも、まさか・・・ 本当に?
この時の岩田さんは、確かに、
彼なりに、私を想っていてくれたのだと思う。
想いの深さは、測れなくても。
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