【14】不埒なトライアングル | 〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

筆者のリアル体験物語。「社内恋愛」を題材にした私小説をメインに、創作小説、詩を綴っています。忘れられない恋、片思い、裏切り、絶望、裏の顔―― 全てが入った、小説ブログです。


白根さんが言った言葉が、しばらく頭から離れなかった。


“彼女がああいう性格なお陰で、助かる部分もある”

“結構、女の人はそう思っている”


どういう意味か・・・
考えるまでもなく、私にだって察することくらい出来る。

ボスの強烈なキャラは、きっと誰も越えられない。

彼女の前では、どんな女性でも “まとも” に見えてしまうのだ。
多少の問題があっても、ボスと比べたら可愛いもの。

これはもう、目の錯覚。
ボスが見せてくれる、 “魔法” としか思えない。

社内の女性で2人、ボスの反感を買っている人がいるけれど、
その人達は、私からすれば普通の人。

彼女に嫌われる要因は、たったひとつ。
ボスに媚びない。
我が道を行くマイペースな人達で、仕事は仕事で割り切っている。
誰にも左右されず、自分の世界を持っているのが、
ボスには気に入らないのだろう。

そして、ボスの取り巻き・・・。

寺島さんの他に、坂口さん、鈴木さんがいる。

坂口さんは、営業2課。
既婚者だが、ボスの次に強烈で好き嫌いや気分に左右される、
非常に扱い難いタイプ。

鈴木さんは、総務課。
噂が大好きで、何処かで聞きつけると、情報収集に走り回るタイプ。
同じ総務課にいる、社内で貴重な独身男性の一人と交際中。


揃いも揃って、キツイ性格で、言いたい事をぶつけてくる人達。

なんとなく、笹原さんを含む4人は、
お似合いなのかな~と思っていたけれど、実際は・・・
白根さんが言った言葉が、裏には隠されているのかもしれない。

笹原さんという存在は、
取り巻きにとっては、 “隠れ蓑” 的な存在・・・とか。

一歩、二歩引いて見てみると、そんな風に見えてくる。

4人が話している事といえば、芸能人の誰がカッコいいとか、
あのドラマがどうだとか・・・。
社内の誰かをネタにした話ばかりで、休日に何をしたとかいう、
プライベートな話が出てこない。

友達だというのに、休日に揃って出掛けるなんて無さそう。



「っとに、アイツ、女じゃねーよ!」


竹下さんが、席に戻るなりそう吐き捨てた。
机に書類を、バシッと叩き付ける。

それから間を空けず、シガーケースを手にした笹原さんが、
大声を上げながら歩いてくる。


「大体ねー、そんなの無理だってワカンナイわけ?
 ちょっと考えれば解るでしょ。理解力が足りないんだよね。
 ごちゃごちゃ言ってる暇があるなら、自分でどうにかしなさいよ。
 っとに、どうしようもないんだから」


竹下さんの席を横目に、喫煙室に入っていった。

笠原さんは、口も態度も悪いけれど、仕事はきちんとこなす。
私個人の、感情の一切を省けば、彼女はそういう人だ。

何を揉めていたのかは判らない。
だから、どっちに非があるのかも判断できず、私は傍観していた。


苛々を隠しきれない竹下さんは、不機嫌な顔のまま、机に向かっている。

その彼に、穏やかな声がかけられた。


「大丈夫ですか?笹原さんも、あんな言い方ないのに。
 きっと、なんとかなりますよ」


喫煙室に聞こえないように、静かな声で、竹下さんを励まし微笑んだ。

媚びた微笑み。

不埒なイメージを持ってしまったから、そう見えただけなのか・・・。
多部井さんの微笑みが、嘘臭く映る。

竹下さんも、まんざらでもなく、優しい言葉にデレッとしたのが判った。


「やっぱり、ナオちゃんは優しいな~」

「そんな事ないですよ。私は、竹下さんの味方ですから」


感嘆に近い声色で、多部井さんを見つめている。

このやり取りに、何となく、反射的に武内課長に視線を向けた。

やはり・・・ 課長の視線は、竹下さんと多部井さんに向いていて、
気にしている様子が窺えた。


私は、武内課長と多部井さんが、不倫カップルだと思っていた。

しかし、後日・・・
竹下さんとも繋がっていて、不倫の三角関係だということを知った。




--------------------------------------
ぜひぜひ、応援ポチお願いします♪

読者登録してね
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(悲恋)へ