【191】私らしさ | 〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

筆者のリアル体験物語。「社内恋愛」を題材にした私小説をメインに、創作小説、詩を綴っています。忘れられない恋、片思い、裏切り、絶望、裏の顔―― 全てが入った、小説ブログです。


『逢瀬は、プラットホームで。』 ~ epilogue ~



ほんの少し、彼との距離が縮まったような気がして、

嬉しかったけれど・・・

反面、 “縮まったから、どうなのだろう?” という思いも出てくる。


昔のような、

親から、彼を想うことさえ反対されるくらいの、小さな事なら、

反発するなり、どうにかして、彼へと走ることが出来るけど、

現実は・・・ そんなに甘くはない。


井沢さんとは、約2年という、短い関わり合いでしかなく、

その後は15年も音信不通で、過去の二人のまま、時が止まっている。


内面的にも、お互いは変わっているはず。

もう一度関わってみて、 「あれ・・・?」 と思うことは、

間違いなくあるのだと思う。


“あの頃のまま、全然変わっていない” なんて、有り得ないから。



「・・・ ねえ。 もし・・・ね、私たちが会ったとして、

 何かが変わるのかな? 距離が縮まって・・・

 “懐かしいね、元気で良かった” って、言うだけだよね?」



心に浮かんだままを言葉にしてから、

その言葉の中に含まれる気持ちを、自分で読み取ってしまった。


その先を期待する、疚しい想いを・・・。



「・・・ つまり・・・!

 元気な顔を見たいっていうのは、解るんだけど・・・

 ほんの少し会うだけでもね、その・・・

 私は、そう簡単に動けない・・・ って、言いたかったの」



慌てて言葉を続け、どうにか自分をフォローする。



『それは・・・ つまり、椎名ちゃんの周りを気にして、ってこと?

 それか、俺の・・・ 彼女を気にして?』


「うん。 どっちも、かな。

 それを気にしないような、軽い女じゃありません」


『・・・ らしいな』


「え? ラシイ・・・??」


『そういうところ、椎名ちゃん “らしい” と思ったんだよ。

 正直っていうか、真面目っていうか、カタイっていうか』


「あー。 昔、そう思ってたんだ。私のコト。

 でも、周りが言うほど、カチコチの真面目一辺倒じゃないよ」


『解ってるよ。

 だから、そういうところ・・・ 嫌いじゃないって。 昔も、今も』


「あーあ。 井沢さんにも、そういう印象だったのかぁ・・・。

 皆が思うほど、堅苦しくないんだけどなぁ・・・」



周囲から、どんな風に見られていたのか、

自分なりに気付いていたけど・・・。


それは、私にとってコンプレックスでもあった訳で、

好きな人にも、そう見られていたと知り、少し凹んだ。


明るくて柔らかな印象に変えたくて、

彼の前では、よく笑っていたつもりだったけどな・・・。



『あのさ、ちゃんと聞いてた?

 今のトコ、大事なところだったんだけど』


「えー? 真面目すぎて、面白くなくて、融通が利かないって?」



半分、口を尖らせて、拗ねたようになっている。

あの頃よりも、変に意識をせずに、気楽に話せているね、私。



『誰も、そこまで言ってないだろ』


「うわ!多少は、思っていたんだ!!・・・ひどーい」



ふざけるように、笑い合う。

心地よい空気が流れた。


なんとなく、

マックのカウンター席で話をしているような・・・

そんな錯覚さえ、覚える。



『だから・・・

 嫌いじゃないよ。 椎名ちゃんの、そういうトコ』



彼が、同じ言葉を繰り返した事に気付いた。


“繰り返す” ということは、それを強調するとか、

伝えたいという現れで・・・


――― ん?



『解ってるよ。 椎名ちゃんが迷っている事は。

 だから、それを含めて、話をしたいって思ったんだよ』


( 含めて・・・? 迷いを含めて、って・・・ ナニ? )



井沢さんが、私に伝えたいこととは、過去に関する何か・・・。

――― の、はず・・・ だよね?


でも・・・ あれ?

なんだろう。



何かが、ヘンだ。




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