【176】15年後の慟哭 | 〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

筆者のリアル体験物語。「社内恋愛」を題材にした私小説をメインに、創作小説、詩を綴っています。忘れられない恋、片思い、裏切り、絶望、裏の顔―― 全てが入った、小説ブログです。


『逢瀬は、プラットホームで。』 ~ epilogue ~



「そういう井沢さんは? 結婚、しないの・・・?」


『・・・ ああ・・・ うん・・・』



そう言って、口を閉ざす。

まだ言葉が続く余韻があって、私は彼を待った。


淳ちゃんが、彼に聞いた時は、

「まだ独身」 だと言っていたらしいけれど、

本当のところは判らない・・・。


彼に彼女がいないなんて、考えられないし。

だから、相応の覚悟はしている。


“覚悟” なんて表現は、変だよね。

本当に、そういう心境だった。



だけど ――――・・・



『・・・ 結婚しようかと、考えているんだけど

 まあ、イロイロと・・・ ね』



・・・ え ・・・?

そういう相手が、いるの?

いても当然、というか・・・ おかしくはないけど・・・。


軽く、いや

それなりに、ショックを受けた、私がいる。


そんな雑念を振り払って、明るく言葉を掛けた。



「そっか。これからなんだね。・・・彼女、どんな人なの?」


『・・・ 教団の人だよ』



ああ・・・ そっか。

やっぱり、そうだよね。


ずっと昔から、

あの頃から、彼に相応しいのは

教団で一緒に活動をしている女性だと、

ずっと思っていたから・・ 納得。



・・・ それだけなら、良かったのに。



それだけなら、ほんの少しのヤキモチを残すだけで、

素直に 祝福が出来たのに ―――・・・



『椎名ちゃんと、同じ歳なんだ』



その一言で、

目の前が突然、真っ暗になった。


私と同じ歳の人が、井沢さんの傍にいる・・・?


彼女として、、、

結婚を考える相手として、傍にいるの・・・?



「・・・ え・・・? あ・・・ そっ、そうなんだ・・・!」



ひとつ年上とか、年下とかじゃなくて、

どうして、私と同じ年齢なの・・・!?


どうして、私じゃダメだったの!?


頑張って活動していれば、

私が、あなたの隣に居られたの・・・?



あの頃、何度も考えて、悩んだ事。

でも私は、彼ではなく、普通の生活を選んだ。


彼と同じ神を、私は信じられなかったから・・・。

信仰心が僅かでもあれば、受け入れられたかもしれない。

それが皆無で、彼だけの為に・・・だなんて、

何かがおかしいと思ったから。


だけど、やっぱり私は道を間違えたの・・・?


ううん。

私と同じ歳なんて、偶然だし、

同じ信者として、お互いを高めていけるような相手で、

とても魅力溢れる女性なのだろう。


私なんて、足元にも及ばないほど・・・。


だけど・・・

まさか、こんなに歳月が流れてから、

同じ想いをするなんて・・・。



悲鳴を上げた心を、

やり場のない悲しみを、胸の奥へと押し込めた。




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