【166】真実は何処に・・ | 〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

筆者のリアル体験物語。「社内恋愛」を題材にした私小説をメインに、創作小説、詩を綴っています。忘れられない恋、片思い、裏切り、絶望、裏の顔―― 全てが入った、小説ブログです。


『逢瀬は、プラットホームで。』 ~ epilogue ~



管理人さんとのチャットを約束した。


日にちや時間などを、何度かメールでやり取りをして、

互いの都合の良い時間帯で調整する。


管理人さんも、昼間は普通に勤めている人だから、

仕事が終わる、夕方頃からに決まる。


メールでも、終始穏やかな印象の人で、

緊張感もいくらかは薄れていた。



決められた日、時間を間違えないように確認して、

サイトのチャットに入室した。


私は、ほぼ時間通りに入室したけれど、

管理人さんは既に入室していて、私を待っていた。


『 こんにちは 』


すぐに反応があってビックリ!

私は、おぼつかない指先で、挨拶を入力していく。

事前に、入力が遅いと伝えているけど、

待たせたら悪いと思えば思うほど、指先が動いてくれない。


「 こんにちは。今日は、よろしくお願いします。 」


それだけを打ち込むのに、一苦労していた。


私の打ち込みが、思ったよりも遅かったのか、

管理人さんは、すぐにこう返してきた。


『 慌てなくていいですよ。ゆっくり入力してください。 』


「 はい。ありがとうございます。 」


あまりに速いレスポンスに驚きながらも、お礼を伝える。


( とりあえず、自分が聞きたい、伝えたいことを簡潔に纏めよう )


気持ちを落ち着けるように、ふうっと息を吐き出す。

管理人さんからのレスは 本当に早くて、

長文でも程よく区切って 画面にパパッと映し出された。



『 みゆさんは、脱会されてからは一度も教会に行ったり、
  信者から連絡が来たりしたことは、無いんですか? 』


「 はい。行ったことも、連絡も一度もありません。 」


『 そうですか。友達と××(別の宗教団体)のアドバイスで、
  脱会できたそうですが、そちらからの勧誘はありましたか? 』


「 いいえ。具体的な勧誘はありません。"遊びにおいで" とは
  言われましたけど、しつこくされたことは無いです。 」


『 そうですか。そういう場合、普通なら誘われるところですが、
  無かったんですね。 あの団体は、○×(脱会した教団)から
  信者を脱会させることに力を入れているから、
  "抜けたらこっちにおいで"と なることが多いんですよ。
  良い友達を持ちましたね。 』


「 ありがとうございます。彼女は、今でも大切な友達なので、
  そう言って貰えて嬉しいです。 」



脱会について、色々と助けてもらった まっちゃんには、

今でも感謝している。

第三者から、友達を褒められると やっぱり嬉しい。


そういったやり取りが続いて、話の流れは少しずつ、

井沢さんへと近づいた。



『 みゆさんを勧誘した人について、聞かせてください。
  好きな人だそうですが、その彼とはどういう繋がりですか? 』


「 職場の同僚でした。私の先輩になります。 」


『 なるほど。では、毎日会う、身近な人だったんですね。
  その彼に告白してから、勧誘されたんでしたよね?
  つらい思いをしましたね。 』


「 そうですね。その時は、とてもショックでした。
  利用されたと思いましたから。 」


『 色恋勧誘は、割とよく聞きます。
  男女問わず、勧誘道具で使う人は多いですよ。
  中には、身体を使う人もいますからね。
  新規の信者を増やすことに、みんな必死なんですよ。 』


「 やっぱり、色恋ですよね。私は認めたくなくて、
  ずっと "違う" って思ってきたけど、タイミングとしても、
  それしか考えられないですよね。 」



ここまで話をしてみて、私は今更ながら、過去の事に諦めを感じた。

悲しくなってきて、キーボードを叩く指も重くなる。



『 以前いただいたメールで、少し気になったことがありました。
  勧誘活動や、献金をしたことがないそうですが・・・? 』


「 はい。それは本当です。何も言われなかったので、
  一度もやったことは無いです。言われても、断ったと思います。 」


『 紹介者の彼から、何か言われたり 脅されたりとか、
  そういうことはありませんでしたか? 』


「 いいえ。一度もないです。 」


『 本当に?一度もないんですか? 』


「 はい。本当ですよ。今、嘘をついても意味がないですから。 」


『 そういえば、暴力とか嫌がらせが問題になっていることを、
  信じられないと言われていましたよね? 』


「 そうなんです。今、管理人さんも言われていましたけど、
  一度もないので・・・。だから、あちこちで言われていることも、
  全然信じられないんです。 」


『 みゆさんとお話をしてみたいと思ったのは、そこなんです。
  平和的に解決した人を、これまで聞いたことがなかったから、
  とても興味を持ちました。 』



まるで、珍しい物を見つけたとでも言うような、管理人さん。

そう言われて、何と返せば良いのか、私は手を止めて考える。


・・・ が、管理人さんが、続けて入力をしてきた。



『 脱会することは、彼に伝えていないんですか? 』


「 それは勿論、伝えました。 それから・・・
  集会に参加するようにって、私が所属するグループの人が、
  何度も家に来たり、毎日のように電話を掛けてこられて
  困っていることも伝えました。 」


『 うん。押しかけたり、執拗に電話をするのは当たり前の所だからね。
  それで、何かいわれましたか?怒られた? 』


「 いいえ。 "俺に任せろ" って。そう言われただけでした。
  それからは、家に来られることも、電話もなくなって・・・ 」



そこまで打つと、管理人さんの反応が無くなった。

というか、大きな間が空いた。


少し待ってから、

画面には、こんな一文が映し出された。



『 相談してくれた人に、言って良いのか迷うけど、、、
  みゆさん、嘘をついて いませんよね? 』





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