小学校では、昨日まで1年生だった子たちが2年生に上がって後輩の1年生が入ってきたときが、6年間の中でも大きな成長ポイントだといわれます。
後輩ができた、お兄さんお姉さんと呼ばれるようになった、お世話したり教えたりする機会ができたというのは、今まで1番下でお世話される側だった子ども達にとって、大きな意識の変化になるのでしょう。
教員の頃、新2年生が1年生に向かって「おい!1年坊主!」なんて先輩風を吹かせているのを見て、微笑ましい気持ちになったものでした。
この「先輩風」は、大人の職場にも吹いてきます。
長く勤めている人やリーダー職に就いている人には、新人や後輩スタッフを指導する責任が生じることもあり、話し方や態度に先輩らしさが現れてきます。
その「先輩風」が受けていて心地よい風なのか、暴風のようにできれば避けたい風なのかは、職場の環境もありますが、それを吹かせる先輩の人柄によるものが大きいと言えるでしょう。
私は最近、期間限定の派遣アルバイトとして通っている職場があります。
その職場では、社員と契約社員、直接雇用のパートやアルバイト、そして私達期間限定の゙派遣アルバイトという立場の人々が一緒に働いています。
職種は食品の製造業。
私達アルバイトは食材の選別と成型(商品の形を整えること)の最初の段階を担当し、ベテランが成型の仕上げを行うという流れ作業です。
作業ルールとして、仕上げの方に流す前のアルバイトが行う成型作業で「ここまではやる」という内容は示されていますが、原料の特性上、なかなかきれいにはできません。
だがしかし!
ベテランの作業者はかっこいい!!
「大丈夫。私達が綺麗にやるから、少しくらい不備が残っているものも流していいからね。」
と、大きく胸を叩いてどーんと来い!的な頼もしさ。本当にかっこいい!
ベテランの方が、期間限定でスキルがおぼつかないアルバイトの未熟さをもカバーする。自身のスキルへの自信と役割に対する責任感があればこそ。自然に醸し出される大らかさの賜物ですね。
そんなベテラン大先輩や職場のリーダーが近くにいれば、まさに「安心安全な環境での仕事」が実現できます。
ところがです。
中には残念な先輩風を吹かせる方の存在も否めません。
期間限定アルバイトにすれば、直接雇用アルバイトの方は一応先輩。その方が限定アルバイトの行動に、マイルールに従って強い態度と厳しい口調で注意する。
本来その方には指示や注意をする権限はないのですが、いつもはいちばん下の立場なのが、期間限定の後輩ができたことで芽ばえた何らかの感情が、そんな行動をさせるのでしょう。
さまざまな職場を思い起こせば、上から目線の指導、怒鳴りつけたり押さえ付けたりすることで自分の立場や権威を示そうとする「カッコ悪い」指導者にもたくさん会って来ました。
そんな指導者がいる職場では、心理的安全性がおかされるので、2度と行きたくありません。
きっとそのように感じる方は多いでしょうね。
上司や先輩として「かっこいい」のは、高い能力に裏付けされた、部下や後輩のあらゆる未熟さを包み込む大らかさがあること、信頼と見守りによって導いてくれる温かな姿勢、そんな姿かもしれません。
その「かっこいい」ベテランスタッフさんは、後輩を指導するときも、きっと分かりやすく丁寧に教えてくださるのだろうな。(期間限定アルバイトの私達には、そのような指導を受けるチャンスはありませんが)
新人にとっていちばん身近な存在は、同じスペースで一緒に働く先輩スタッフです。後輩と関わる全てのスタッフがかっこいい先輩になれば、みんなが生き生きと輝く素敵な職場を実現できそうですね。