20年以上、ALS患者である僕の介護をしてきた妻が時々言います。
「気持ちに余裕がないと、優しい介護なんて絶対に無理よね」って。

 妻と、時々、こんな風に介護について話す時があります。
もちろん、僕の介護だけではなく、介護に直面されている家庭なども知っているので、一
般論として話します。

 妻の言葉は、経験から出てきた言葉でもあるし、僕も20年以上、妻を間近に見て来て、確かに、その通りだと思います。

 特に進行性の病、ALS患者である僕の介護は忍耐の連続で、とても妻1人で行えるほど簡単なものではないのです。

 もし、仕事と家事と介護に明け暮れ、それに追われる毎日だったならば、とても、優しい介護は出来ないだろうし、介護を受ける僕も、優しい介護など望めなかったと思います。
 最初の頃は、何とかお互い気持ちと言うか気合いで乗り切っていましたが、次第に会話が減り、お互いの顔から笑顔がなくなりました。

 妻の気持ちに、余裕がなくなっていたのです。
そんな状態では、優しい介護なんて絶対に無理です。

 僕は、その頃に思った事があります。
それは、在宅介護においては、本人より家族のケアが大切だと思いました。

 僕の様な難病患者や障害者は、往々にして本人のケアだけが重視されがちですが、僕は言いたい!
介護者も辛い、もっと介護者にも目を向けよう!

 大きくクローズアップされるのは、いつも難病患者や障害者です。
なぜだろう?

 家族をまず楽にさせないと、続かないのが在宅介護です。
家族の気持ちに余裕が出てきて、笑顔が戻れば本人も笑顔が戻ります。
我が家の体験です。

 そういう意味でも、ALS患者の介護は家族だけで支えるのではなく、社会全体で支える介護サービスを早い段階から利用したいものですね!