ずいぶん前の事ですが「僕はどこへ向かっているのだろうか?」「このままでいいのだろうか?」と考えさせられた時期があります。
それは 人工呼吸器をつけた直後の話しです。
呼吸器をつけて在宅生活をスタートさせた時、看護師さん達は全員、万全の体制を整えて全ての面で精一杯頑張ってくれました。
僕もその頃 医療依存度が高かったので医療サービスが充実した生活に満足していました。
また看護師さん達は 僕の要望にすべて応えてくれました。
それはそれは とても有り難かったです。
おかげで 安心して在宅生活をスタートさせて 何の問題もなく日々変わりなく過ごせました。
かかりつけ医の先生も 頻繁に診に来てくれました。
みんなから支えてもらって とても有り難かったです。
しかし一方で 看護師さん達が 僕の看護に一生懸命になればなるほど 僕は医学書に書いてあるような「寝たきり」の、誰が見ても立派なALS患者になっていることに気がついたのです。
皮肉なことですね。
とても頼りにしていた看護師さん達が 献身的に頑張れば頑張るほど 僕は病人のようになっていったのです。
僕は「このまま ALSという病人として終わるのか?」と考えた時もあります。
これは誰のせいでもなく 医療者が現状維持を保つ事に終始していたからだと思います。
そしてこれは誰にでも起こりえることかも知れません。
今後の 医療関係者の在宅療養生活における課題だと考えています。
僕は看護師さん達の頑張りには 心から有り難く受け止めていましたが「このまま病人として過ごしたくないなぁ」と考えていました。
考えていましたが 日々の手厚い看護の中にドップリ浸かっていたのです。
これは周りから見たら とても良い状態の中で毎日を過ごしているように映っていたと思います。
でも僕の中では、将来に対する不安が広がっていました。
この頃に「僕はどこへ向かっているのだろうか?」「このままでいいのだろうか?」と考えさせられたのです。
同時にヘルパーさんも「このままでいいのだろうか?」と考えていたみたいでした。
それでヘルパーさんが僕にこう言ったのです。
「どうして玄三さんはパジャマ姿なのですか?」
「パジャマの方がケアがやりやすいだろう」
「それはこっちの問題です」
「パジャマ姿が好きなのですか?」と言うのです。
「そりゃあ僕だってパジャマ姿はイヤだよ、でも下着のシャツもパジャマも前開きが良いと言われたので。。。」
「じやぁ次から好きな物を着るようにしましょう」と嬉しいことを言うのです。
これが、病人から再び生活者へ戻った瞬間でした。
それからは僕と妻とヘルパーさんで「こんな事も出来る あんな事も出来る」と、自立と社会復帰の道へ進んで言ったのです。
僕達は、いつの間にかビジョンを描くようになっていました。
そうすると看護師さんは、チャレンジャーになった僕達を応援する側に回ってくれました。
元々、僕と妻とヘルパーさんたちで在宅生活の基礎を作っていたので、看護師さん達もすぐに脇役に回ってくれたのです。
有り難かったですね~。
この時に思いました「僕は本当に周りの人に恵まれているなぁ」と。
本当に素晴らしい人達です。
ALS患者の僕を 再び社会復帰させて輝かせてくれたのです。
みんなに対して 何も恩返しは出来ませんが…、
「老後の面倒は 全部僕がみてやる」と言って、みんなから笑われています。
最後に
この記事は、僕の電子書籍「ALSをしなやかに生きる・Gシリーズ」の本文より抜粋しました。