‟西の聖地”大阪で今年度最後のビッマッチとなった

新日本プロレスの11・4エディオンアリーナ大阪大会。

 

タイトルマッチ3試合&SUPER Jr. TAG LEAGUE優勝決定戦を中心に、

全11試合、なんと4時間30分という超ロングラン興行となった。

 

来年の1・4東京ドームのカード編成にも直結する大会だけに、

リング上、客席の熱気にも半端ない盛り上がりを感じた。

 

トリを飾ったのはIWGP US(UK)ヘビー級選手権。

ウィル・オスプレイvs海野翔太の約1年ぶりの一騎打ち。

 

              ■写真提供/新日本プロレス

 

この一戦も想像、予想をはるかに超えた。

40分超えの大激闘の末に両選手が座礼をして握手。

 

結局、「空気の読めない男」と称される闖入者が

エンディングをぶち壊しにしたものの、

世界最強と目されるオスプレイと

新日本の未来そのものである海野による闘いは、

時間を感じさせない濃い内容で見る者をくぎ付けにしてくれた。

 

今回、新日本プロレス・オフィシャルスマホサイトでは、

上記4試合をテーマに6700文字超えの長文で総括させてもらった。

 

まず、1・4東京ドームのメイン(IWGP世界ヘビー級選手権)の

前哨戦となるSANADA&上村優也vs内藤哲也&辻陽太のタッグ戦。

 

今シリーズ1発目の前哨戦は10・24後楽園ホールの6人タッグ

(SANADA&タイチ&上村vs内藤&鷹木信悟&辻)で実現。

両チーム一歩も退かずに20分ドローに終わっている。

 

この試合で目立ったのは、辻と上村の絡み。

同期、同日デビューにして海外遠征に出たのほぼ同時期。

ライバル同士が意地を張り合ってバチバチに火花を散らしている。

 

              ■写真提供/新日本プロレス

 

その経緯もあって、注目は辻と上村の二度目の遭遇にあった。

やはり、真っ向からぶつかり合った両選手。

 

「リッキー・スティムボートに憧れていた」

 

そう語っている上村はまさにリッキーばりにダイナミックな

サイクロンホイップ(アームホイップ)を連発。

 

ちなみに、リッキー・スティムボートとは、

1980年代に日米マットで絶大な人気を誇った名レスラー。

あのリック・フレアーを破りNWA世界王者として

頂点に君臨したこともある超大物レジェンドである。

 

上村はそのリッキーを彷彿させるクロスボディも連発し躍動する。

ところが、辻をカンヌキスープレックスの体勢に捉えたところで、

内藤が正面からの低空ドロップキックを膝に叩き込んで救出。

 

一瞬、上村の動きが止まったところを見逃さない辻が

渾身のジーンブラスターを放って3カウントを奪取した。

 

しかも手四つのルー・テーズ式体固めで押さえ込んでいる。

これは完全に相手を屈服させるような屈辱的な押さえ込み方。

このあたりに辻のセンスの良さを感じてしまうのだ。

 

              ■写真提供/新日本プロレス

 

勝ち誇り笑みを浮かべる辻と、

悔しさを顕にする上村。

 

凱旋から5カ月にして修羅場をくぐり実績を残している辻。

一方の上村は凱旋からまだ1カ月弱でシングルの大舞台を踏んでいない。

それにプラスしてチームワークの差も如実に出たような気がする。

 

第1ラウンドは辻の圧勝に終わった。

 

ただし、辻と上村のライバルストーリーは始まったばかり。

この先、10年、20年と両選手はシノギを削っていくことになるだろう。

 

第7試合のNEVER無差別級6人タッグ選手権では、

棚橋弘至が大逆転の丸め込みでザック・セイバーJr.から勝利。

 

その直後、暗転した場内のビジョンに映し出されたのは、

あのダニエル・ブライアン(AEW)だった。

1・4東京ドームでオカダとの一騎打ちをアピールしたブライアン。

 

米国マットでブライアンに敗れているオカダは当然受けて立った。

 

「次は、レインメーカーでオレが勝つ! ブライアン、YES!!」

 

日本育ちの元WWEスーパースターがついに新日本マット凱旋。

いや、逆上陸、殴り込みをかけてくる。

オカダとのドリーム対決パート2が東京ドームで実現するのだ。

 

第8試合の『SUPER Jr. TAG LEAGUE』優勝決定戦は、

TJP&フランシスコ・アキラ(Catch2/2)と

SHO&金丸義信(H.O.T)によって争われた。

 

予想通りH.O.Tのセコンド陣が試合前から介入してきた。

アキラがトぺ・コンヒーロでセコンド陣を排除してからは、

ジュニアタッグに相応しい目まぐるしい攻防が展開された。

 

それでも後半、レフェリー不在の間にまたも

EVIL、裕二郎、東郷が堂々と乱入してくる。

ここでUNITED EMPIREのニューマン&コブが駆け付け、

H.O.Tのセコンドを力づくで排除してみせた。

 

最後は、正面からの2/2を金丸に炸裂させて、

TJP&アキラが初制覇を達成した。

 

セミに組まれたのはIWGPジュニアヘビー級選手権。

高橋ヒロム、7度目の防衛戦の相手は因縁の石森太二。

 

今年の1・4東京ドームでは王者だった石森が4WAYで防衛戦を行ない、

直接敗れることなくヒロムにベルトを奪われている。

 

また、5・21後楽園ホールの『BOSJ』公式戦では

ラリアットが相打ちとなった際に頚椎を負傷し、

無念のレフェリーストップ負けを喫した石森が、

以降長期欠場を余儀なくされているのだ。

 

両者ともに望んだケジメのタイトルマッチ。

ジュニアの頂点を争うに相応しい2人の攻防は、

高度でさながら詰将棋の様相を呈した。

 

二手三手と先を読んでの切り返し合戦へ。

互いの切札が決まらない展開のなか、

ヒロムが名もなきヒロムロールへ。

それを返されるとクラッチしたままで

変型の名もなきヒロムロールで決着。

 

石森を破ったヒロムが7度目の防衛成功にして、

初めて堂々とベルトを腰に巻いた。

 

最強の挑戦者を倒したわけだから、

次の相手は永遠のライバルしかいない。

 

              ■写真提供/新日本プロレス

 

この日、放送席についていたエル・デスペラードを次期挑戦者に指名。

デぺラードもそれに応え、1・4でのライバル対決が決定をみた。

 

また、今年のヒロムは団体の枠を超えて活躍してきた。

自ら動いてジュニアオールスター戦を実現させたり、

他団体に参戦しドリームカードを提供してきた。

 

その活躍ぶりから、初代タイガーマスク以来となる

ジュニア戦士によるプロレス大賞MVPの有力候補とも言われている。

 

果たして、快挙なるか?

そこも注目ポイントだろう。

 

メインイベントは、IWGP US(UK)ヘビー級選手権。

約1年前の11・20有明アリーナで実現したカードの再戦となる

ウィル・オスプレイvs海野翔太の一戦。

 

1年前、海野は凱旋したときにこう言った。

 

「去年と先月、オスプレイに負けているので

日本まで追いかけてきました」

 

帰国したのではなく、追いかけてきた。

このセリフは響いてきた。

 

そして、実際に海野の成長ぶりは我々の想像以上だった。

オスプレイの土俵に上がって、真っ向勝負の玉砕。

 

新日本の未来が見えた試合だった。

 

あれから1年、海野はさらに成長している。

対オスプレイは当然として、令和闘魂三銃士としての勝負もある。

 

9・24神戸ワールド記念ホール大会でオスプレイに挑戦した辻は、

掟破りのストームブレイカーまで繰り出してオスプレイを追い込んだ。

明らかに現時点では令和闘魂三銃士のなかで一歩リードしている辻。

 

その辻に対する意地もあるだろう。

 

一方のオスプレイはこの1年でまた進化した。

ケニー・オメガ、オカダ、鷹木、クリス・ジェリコ、丸藤正道、

辻、ザックと名だたる男たちを連破してきたのだ。

 

もはやモンスターであり、バケモノ級の強さ。

この10年の新日本マットを振り返ってみたとき、

エース外国人は、AJスタイルズ、ケニー、

ジェイ・ホワイト、オスプレイと受け継がれてきた。

 

そのなかでも、いまのオスプレイは最強だろう。

世界ナンバー1と言いきっても過言ではないかもしれない。

 

大勝負は探り合いからスタートしたが、

すぐにトップギアに入って流れていく。

 

あっという間に10分経過。

これほど時間を短く感じる試合も珍しい。

 

              ■写真提供/新日本プロレス

 

オスプレイの打撃連打を食った海野が鼻から出血。

その直後、海野の表情は一変して怒涛の猛攻へ。

場外戦でも客席に向かってオスプレイを放り投げた。

 

師匠モクスリーばりのバイオレンスファイト。

それ見て、ゲスト解説のデスペラードはこう評した。

 

「翔太のイメージが変わったような……

なんていうかラフネックだよね」

 

ラフネック=roughneck。

 

乱暴者とか荒くれ者。

タフでスマートな男という意味もある。

 

デスぺの言葉は、言い得て妙だろう。

 

              ■写真提供/新日本プロレス

 

試合の流れが大きく変わったのは、

場外に二つ並べられたテーブル上に

オスプレイが断崖式タイガードライバーを決めてから。

 

大ダメージで足もとがおぼつかなくなった海野に対し、

両腕までロックしたマウントポジションでエルボーを連打。

 

そこへ駆けつけたモクスリーが

エプロンのマットを叩いて海野に檄を飛ばす。

 

これに海野が発奮してカムバック。

逆にマウントエルボーを叩き込んでみせる。

 

互いにリストを取り合って、

ノーガードでエルボー合戦を繰り広げる。

 

絶対に折れない海野。

 

ならばと、オスプレイは大技で畳み込む。

掟破りのデスライダー、ストームドライバー‘93、

ヒドゥンブレード、ストームブレイカーと4連発。

 

勝負タイムは、40分16秒。

これだけの長期戦であったのに、

なぜかまったく長く感じなかった。

 

やはり、それだけ中身が濃く、

観る者を集中させる内容だったということ。

 

辻は辻流でオスプレイと勝負した。

海野は海野流でオスプレイに肉薄した。

 

オスプレイという最高にして最強のリトマス試験紙を通して、

辻と比較してもまったく遜色ないことを証明してみせたのだ。

 

この2年、オスプレイを追いつづけてきた海野は、

さまざまな感情が沸き上がってきたのか涙をみせた。

 

涙の座礼。

それにオスプレイも座礼で応える。

 

その後、オスプレイとモクスリーが対決を誓う睨み合い。

 

その最高のエンディングをぶち壊したのがデビッド・フィンレー。

シレイリ(アイルランドのこん棒)で2人をノックアウトし、

外道が持参したハンマーでUSベルト、UKベルトを破壊する蛮行。

 

これにて、US(UK)ベルトが新たに製作され、

1・4ではオスプレイvsモクスリーvsフィンレーによる

3WAY戦で新ベルトを争奪するタイトル戦が行なわれる。

 

とにもかくにも、壮大な大阪絵巻となった

11・4エディオンアリーナ大阪大会。

 

だいたいからして、新日本オフィシャル・スマホサイトの

私の連載である『新日本プロレス通信』を紹介するための

恒例のブログアップのはずだったのに、

本文(6700文字超)に迫るほどの長文を書いてしまった(笑)。

 

ただーし、本文のほうではもっとも面白い考察、

検証などもしているので、全文読んでみてね!

 

「いざ、1.4東京ドームへ。

時代の流れは止めようもなく、プロレス界は決して停滞することなく動きはじめている」

11.4大阪決戦を大総括!!【“GK”金沢克彦の新日本プロレス通信】 |

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