10月28日(現地時間)米国ラスベガスで開催された
新日本プロレス主催の『Fighting Spirit Unleashed』に
STRONG女子王者のジュリア(スターダム)が参戦。
ハイアンを相手に圧勝し、5度目の防衛に成功した。
■写真提供/新日本プロレス
試合に関して触れる前に、トピックを紹介しておく。
1979年創刊のアメリカの老舗プロレス雑誌である
PWI(プロレスリング・イラストレーテッド)では
2008年から『PWI Top 50 Females』として、
その年に活躍した50人の女子プロレスラーを選出している。
評価基準は次の6項目。
・勝敗
・技術力
・影響力
・トップレベルの対戦相手との成績
・多種多様な対戦相手との成績
・アクティビティ(活躍)
今年は、2022年10月~2023年9月までを対象とし、
2023年度版は10月半ば過ぎに発表されている。
トップ10は以下の通り。
①リア・リプリー(WWE)
②ジュリア(スターダム)
③ビアンカ・ブレア(WWE)
④ジェイミー・ヘイター(AEW)
⑤中野たむ(スターダム)
⑥アテナ(AEW)
⑦ディオナ・プラゾ(インパクトレスリング)
⑧ウィロー・ナイチンゲール(AEW)
⑨カミーユ(NWA)
⑩ジョーディン・グレース(インパクトレスリング)
日本から、ジュリアが2位、たむが5位にランクイン。
ちなみに、昨年の2022年度版の1位は朱里だったから、
スターダム勢の評価はすこぶる高いわけだ。
ただ、なぜにWWEの女王として頂点に立っている
イヨ・スカイがトップ10に入っていないのかという
疑問も持ってしまうところなのだが……
評価の対象期間の関係から漏れてしまったのだろう。
一方、全レスラーを対象としたトップ500ランキングでは、
オカダ・カズチカが7位にランクイン(昨年のオカダは2位)。
SANADAが11位、ウィル・オスプレイが17位となっている。
やはり新日本プロレス、オカダは大いに評価されているようだ。
あくまで参考資料と考えればいい程度なのだろうが、とにかく
ジュリアの躍進ぶりは米国専門誌にも認められているということ。
というわけで(どういうわけだ?)今回、ジュリアが保持する
STRONG女子王座への挑戦を決めたのはハイアンだった。
ジュリアと同い年の29歳。
2014年7月デビューだからキャリア9年半余。
この日がちょうどデビュー6周年記念日となるジュリアを上まわっている。
まあ、年齢、キャリアは大した問題ではない。
肝心なのは、ハイアンがどういう選手なのかということ。
米国インディー団体でデビューし下積みを経験してから、
インパクトレスリング、ROH、英国RPWなどで活躍。
2016年8月にはWWEへの出場経験があり、
2019年には日本のマーベラスのツアーに参戦。
最近では、ROH女子王座にも挑戦している。
YouTubeなどで試合映像を確認してみると、
よく言えばパワフル&アグレッシブで何でもできるタイプ。
わるく言うなら(?)多少粗削りという感じに見えた。
いちばん驚いたのはヘビー級の男子レスラーとも
普通にシングルマッチを行なっていたこと。
試合には玉砕したものの、男子レスラーを相手に
エルボーの応酬で一歩も退かないタフネスさもみせた。
そういった映像を観ていたから、
ジュリア戦にはかなり期待を寄せていた。
ハイアンが荒っぽくバチバチに仕掛けていったら、
ジュリアはどう対処するのか?
STRONG女子選手権は、
第5試合にラインナップされた。
試合コスチュームのまま入場してきたハイアンに対し、
ジュリアはいつも通りにド派手なガウンを着用しての登場。
リングインすると、早くもジュリアコールが沸き起こる。
先述したPWI誌のランキングで2位に選出されたように、
マニアックな米国ファンにその存在は完全に認知されているようだ。
率直なところ、試合は終始ジュリアペースで進んだ。
序盤のレスリング、グラウンドでもジュリアが圧倒し、
スタンドで打ち合い、大技の攻防になってもジュリアには余裕がある。
ハイアンの攻撃は単発、単発で流れていかない。
過去の映像を観たときはもっと連続攻撃が多かったのだが…。
これはコンディションの問題ではないようだ。
私にはどうにも飲まれているように映った。
新日本プロレス(NJPW STRONG)というメジャーな舞台、
この1年で急速に名を成してきたジュリアという対戦相手。
もっと言うなら緊張感のせいか、
よそ行きのレスリングになってしまったのではないか?
エルボー、張り手にもイマイチ破壊力がなかったし、
得意とする胸元へのヘッドバットにも荒々しさが欠けていた。
■写真提供/新日本プロレス
その中でも、いい見せ場はあった。
トップロープのハイアンを雪崩式ダブルアームスープレックスで
投げたジュリアは両手をクラッチしたまま後方へ反転して起き上がる。
つづけざまにファルコンアローを狙ったところ、
逆に一瞬のタイミングでハイアンがファルコンアロー。
こういうパワフルさが彼女の持ち味なのだ。
その後、高角度パワーボムを決めてから、
フィニッシャーのどどん(変型フェイスバスター)を狙ったが、
ジュリアが切り返す。
■写真提供/新日本プロレス
ようやく連続攻撃を披露したものの、
やはりジュリアにはまだ余裕が垣間見える。
張り手、エルボー、イタリアンフックと
ジュリアの打撃が的確にヒットすると、
ハイアンはややスタミナ切れ。
最後は、ニーストライクからトドメの
ノーザンライトボムで3カウント奪取。
■写真提供/新日本プロレス
ジュリア、圧倒的に強し!
ひとことで言うならそうなってしまう。
試合後、花道を退場しようとするハイアンを
エプロンまで出たジュリアが呼び止めた。
■写真提供/新日本プロレス
笑顔で何か言葉を掛けている。
どんな対戦相手であれ、試合前にどれほどボロクソに挑発しようと、
試合後には相手へのリスペクトを示すのがジュリアらしさでもある。
それに対し、ハイアンも最高の笑顔で応えている。
バックヤードインタビューでも笑顔でコメントを残した。
それを見たときに、「やはりそうだったのかな」と感じた。
あの笑顔は正直すぎて、その性格のよさまで伝わってくる。
ハイアンにとっては緊張とプレッシャーの大舞台だった。
そこから解放された安堵感のほうが強かったのではないだろうか?
おそらくハイアンは実力の半分程度しか発揮できなかったと思う。
どんな選手と対しても、相手の力を存分に引き出すのがジュリアの上手さ。
そういった意味でもジュリアのほうにむしろ悔いが残ったというか、
不完全燃焼の試合だったのではないだろうか?
プロレスとは、闘いでありナマモノである。
完璧主義のジュリアとて、どうしようもないことはある。
よくもわるくも、
そういった面をふくめても、
世界は広いということ。
未知の相手と試合をすれば、
こういったケースも生まれるし、
ジュリアにしても完成された王者というわけではない。
まだまだノビシロ充分、発展途上の王者だからこそ、
この先もどんどん海外マットを経験してもらいたい。
■写真提供/新日本プロレス
試合後には、巨体のトリッシュ・アドラが挑戦を迫ってきた。
米国インディーシーンのトップクラスであり、AEW、ROHにも参戦。
今年1月には、東京女子プロレスのリングにも上がっている。
トリッシュが次期挑戦者になるのか現段階ではわからないが、
なにより私が海外マットで見てみたいものはひとつ。
ジュリアの‟狂気”の部分を引き出すような選手に、
ぜひとも現れてもらいたいのであーる。
■写真提供/新日本プロレス
アリ~ベデルチ!
以上。