7・23大田区体育館で開幕したスターダムの『5★STAR GP 2023』は、

2カ月余の長期リーグ戦を闘い抜き9・30横浜武道館で最終戦を迎えた。

 

最後の最後まで熾烈な星取争いを展開した結果、

ブルースターズを勝ち抜いたのは舞華(12点)、

レッドスターズを勝ち抜いたのは鈴季すず(12点)。

 

舞華vsすずによる優勝決定戦は、

14分余の熱闘の末、サプライズ決着。

 

大方の予想を覆すカタチで鈴季すずが制し、

若干21歳での飛び級初優勝を達成してのけた。

 

              ©スターダム

 

それにしても…今年の私のガイドブックⅤ予想は散々だった。

昨年は、優勝戦カードの中野たむvsジュリアと

優勝=ジュリアを完璧に的中させている。

 

今年も自信満々にこう予想した。

レッドスターズ代表=上谷沙弥、ブルースターズ代表=林下詩美。

優勝=林下詩美。

最注目カード=林下詩美vsジュリア。

 

完璧なまでの大ハズレ。

GK金沢、大惨敗…。

 

上谷は初戦のたむ戦で左ヒジ脱臼の大怪我を負い以降欠場。

詩美も、終盤になって頚椎ヘルニアにより後半3試合は不戦敗。

当然、最終戦に予定されていたジュリアとの初シングルも流れた。

 

うーむ、ここまでハズすと逆に見事というしかない(泣)。

ただ、それにしても今年は負傷欠場者が多すぎた。

上谷、林下、スターライト・キッド。

最終戦は、3選手が欠場し不戦敗。

 

これが、今大会の過酷さを象徴していたようにも感じる。

 

まあ、私の予想の件はどうでもいいか。

ただし、いわゆる本命と目されていた選手たちが脱落したのも事実。

実績のある舞華はともかく、すずはノーマークだった。

 

それも相まって、レッドスターズ公式戦のラストマッチで

中野たむが同門のなつぽいに敗れた瞬間、

会場にも報道陣の間にも時間が止まったような空気が流れた。

 

えっ⁉ するとどうなるの……?

たむ、刀羅ナツコ、すずの3選手が12点で並んだ。

そこで星取表を再度確認してみると……

すずが直接対決でたむとナツコを破っていることが判明。

 

土壇場で、すずが急浮上してきたわけだ。

 

これにてファイナル、優勝決定戦のカードが決定。

舞華vs鈴季すず。

 

舞華はキャリア4年半で、20歳代後半らしい(※年齢は非公表)。

すずは、キャリア4年9カ月で、21歳になったばかり。

ともにスターダム新世代に区分けされているが、

スターダムにおけるキャリアでは舞華が上まわっている。

 

                    ©スターダム

 

両選手にとって、姉貴分にあたるジュリアが放送席に就いた。

これで舞台は出来上がった。

 

すずの魅力は小柄な身体を目いっぱい躍動させる

スピードと怖いもの知らずの威勢の良さ。

 

              ©スターダム

 

舞華は15年柔道に打ちこんできたベースがあるから、

体幹、とくに下半身が強く圧倒的なパワーを誇っている。

 

やはり舞華のパワーがすずを圧倒する展開へ。

ところが、リバース・フランケンシュタイナーで流れが変わった。

 

              ©スターダム

 

ロコモーション式ジャーマンスープレックスで決まらないとみるや、

すずはトップロープから初公開のスカイツイスタープレスをズバリ。

この一撃がみごとに決まって3カウントが入った。

 

              ©スターダム

 

正直、かなり驚いた。

 

たしかな実力を持ちながら、

フューチャー王座以外シングル戴冠歴のない舞華が、

満を持して初優勝達成と予想していた。

 

おそらく大方のファンもそう予想していたのではないか?

優勝セレモニーへと移り、すずが王冠、マント姿でトロフィーを持つ。

 

              ©スターダム

 

あれ、シンデレラトーナメントだったかな?

そう思ってしまうほど、やはり鈴季すずは若い。

素の笑顔には幼さが見え隠れするのだ。

 

やはり、超飛び級優勝である。

苦しんで葛藤して、折れずに頑張ってきた者が栄冠に輝く。

そんな5★STARの風景を一夜にして変えってしまったということ。

 

大どんでん返し、劇的サプライズで幕を閉じた今年の『5★STAR GP 2023』。

首都圏の興行には足を運び、地方の大会は動画配信サービスの

『STARDOM WORLD』でなるべくリーグ戦だけは見るように心がけた。

 

それを踏まえて、ワタクシ金沢が勝手に選出する各賞を発表。

偏見はないつもりだが、独断で選んでいるのであしからず。

 

☆優勝 鈴季すず(レッドスターズ1位、6勝3敗=12点)

 

☆MVP 舞華(ブルースターズ1位、5勝2敗2分=12点)

 

☆殊勲賞 白川未奈(ブルースターズ6位、4勝4敗1分=9点)

 

☆敢闘賞 マライア・メイ(ブルースターズ9位、3勝6敗=6点)

 

☆技能賞 なつぽい(レッドスターズ3位、5勝3敗1分=11点)

 

☆公式リーグ戦ベストマッチ③

 

①中野たむ(時間切れ引分け)岩谷麻優

〈レッドスターズ公式戦/8・15後楽園ホール〉

 

②白川未奈(片エビ固め、12分33秒)ジュリア

〈ブルースターズ公式戦/8・12アクリエひめじ〉

 

③ジュリア(片エビ固め、12分04秒)マライア・メイ

〈ブルースターズ公式戦、8・8京都KBSホール〉

 

 

 

              ©スターダム

 

優勝者はもちろん鈴季すずなのだが、

MVPは舞華(DDM)に贈呈。

 

主力(主役)リタイアがつづくなか、

頑強な身体で安定感抜群。

連敗することなくリーグ戦を突破した。

 

実績、実力充分と見られている舞華であるが、

じつは未だシングルのトップのベルトを巻いていない。

今年は最高の舞台までたどり着きながら一歩及ばなかった。

それでも舞華は世代闘争においては、新世代に入っている。

 

今回は、‟女帝”への第一歩として捉えておきたい。

今後への期待が大きく膨らむ堂々たる闘いぶりだったと思う。

 

 

              ©スターダム

 

結果的に、ブルースターズ6位に終わったものの、

最後まで優勝戦線にからんでみせた白川未奈。

 

1年前とは別人の強さを身に付けていた。

今年、ワンダー・オブ・スターダム王座を巻いて、

中野たむとのワールドvsワンダーのダブルタイトルマッチも経験。

 

ベルトは失ったものの、元気と進化は止まらない。

ジュリアいわく「白川は背伸びし続ければいい」。

その言葉通り、背伸びしまくりホンモノになってきた。

 

現ワンダー王者のMIRAI、STRONG王者のジュリアを破り、

準優勝の舞華とも引分けている。

 

結果、内容、元気……準MVPたる殊勲賞なのだ。

 

 

 

敢闘賞は、マライア・メイ。

ブルースターズ9位ながら素晴らしい成長ぶりを披露した。

 

振り返ると昨年の12・29両国大会に初来日してから、9カ月。

当初、3ヵ月の滞在(日本修行)予定の来日であったが、

本人の強い希望により長期ステイが実現。

 

若手に交じってリング撤収作業なども率先してやってきた。

 

じつは来日前のマライアはプロとして93試合しか経験していない。

そこからスターダムで日本修行に入って、

ラストマッチとなった横浜最終戦が99試合目だった。

つまりキャリアの半分以上をスターダムで過ごしたことになる。

 

今リーグ戦では、ジュリア戦、白川戦が出色の内容。

日本育ちの優良外国人レスラーであることを実証してくれた。

 

残念ながら諸事情により、10月1日にイギリスへ帰国。

ファンにも認知された存在だけに再来日に期待したい。

 

 

              ©スターダム

 

技能賞は、なつぽい。

スキルという点では安納サオリも候補に入るのだが、

なつぽいの前半快進撃はインパクト大だった。

 

優勝者のすずに勝利、朱里と引分け、岩谷に勝利、

トドメは最終戦のコズエン対決で中野たむに激勝。

 

ワールド王者たむの優勝戦進出の野望を粉砕してのけた。

本人が掲げた「最強」を体現する強いなつぽいが全開。

 

ただし、激闘の代償も大きく頚椎ヘルニアで今シリーズ欠場へ。

それを微塵も感じさせない明るさがなつぽいらしさでもあった。

 

公式リーグ戦におけるベストマッチを選出するのは

なかなか難しい作業だから、個人の好みと思ってもらいたい。

 

ただし、①の中野たむvs岩谷麻優(15分=時間切れ引分け)は

誰が見てもうなずけるベストマッチだったのではないだろうか?

 

ワールド・オブ・スターダム王者vsIWGP女子王者のマッチアップが

実現したのは、8・15後楽園ホール大会のセミファイナル。

 

そこには苛烈な伏線もあった。

2日前の8・13エディオンアリーナ大阪大会で、

両選手ともにタイトルマッチを行なっている。

 

赤の王者たむは、メーガン・ベインと2度目の防衛戦。

IWGP女子王者の岩谷は、林下詩美との初防衛戦。

両者ともにベルト防衛に成功したものの、激闘だった。

 

              ©スターダム

 

そこから中1日おいての王者対決。

15分という限られた時間のなかで決着をつけるべく、

両者ともスタートからハイスパートでぶつかり合う。

限界ギリギリといった感じで大技が交錯し合う死闘だった。

 

              ©スターダム

 

バックヤードでしっかりとコメントを残しているものの、

その後、岩谷が大の字に倒れていたのも印象深い。

 

「こんな試合をしていたら10年持つ選手生命が

1年で終わってしまうかもしれない…」

 

かのアントニオ猪木による名言を思い起こさせるような闘い。

 

              ©スターダム

 

まだ岩谷からシングルマッチで勝利を奪ったことがない、たむ。

今回の決着戦の意味合いもこめて、次に2人が対峙するのはいつなのだろう。

 

ベスト②は、3度目の一騎打ちで白川が初勝利を飾った

白川未奈vsジュリアのブルースターズ公式戦。

 

前年度覇者のジュリアに対し足4の字固めをはじめ、

得意の一点集中攻撃でジワジワと攻め込んだ白川は、

ジュリアの強烈な打撃にも怯むことなく打ち返す。

 

最後は、インプラントDDTからフィギュア・フォー・ドライバーMINA。

ジュリアからパーフェクトなカタチで3カウントを奪ってみせた。

 

4度目にして、白川の完勝。

逆にいうなら、ここ最近でジュリアが

これほど完敗を印象づけられた試合も珍しい。

 

もし、この試合を永田裕志が観戦していたなら、

「これはストロングスタイルです!」と言ったと思う。

 

STRONG女子王座が懸かっていてもおかしくないような闘い模様。

それほど、遊び心などまったくない真っ向勝負だった。

 

ベスト③は、ジュリアvsマライア・メイの

ブルースターズ公式戦(8・8京都KBS)。

 

ついにマライアが覚醒……というか、

スターダムで修行した7カ月余の成果が結実したような試合。

 

ジュリアがグランウンドで決めにくると、

素早い身のこなしでエスケープ。

STFには、フェイスロックにきた腕に噛みついて脱出した。

 

「誰がコイツに教えたんだ!」

 

ジュリアがマライアのセコンドに向かって吠える一幕も。

 

打撃でも退かない。

ジュリアが得意の張り手を連打していくと、

倍返しといっていいほど強烈なビンタを放っていく。

 

長身を利した場外パワーボムも強烈だった。

最後はグロリアスドライバーでジュリアの勝利。

 

あのジュリアが笑顔で握手を求めると、

マライアも充実の表情で応える。

 

その後、向かい合った2人は座礼した。

激しい攻防の果てに、爽やかなエンディング。

 

マライアのベストマッチといっていいだろう。

また、それを引き出したジュリアは「さすが!」だった。

 

というわけで、以上が今年の『5★STAR GP 2023』の総評。

また、あえて今後の課題も記しておきたい。

 

まず、やはり怪我人が続出してしまったことは残念。

約2カ月という長丁場のリーグ戦。

その間に大会場でのビッグマッチが開催され、

リーグ戦とはべつにタイトルマッチが組まれる。

 

そうなると、タイトル戦を行なう王者と挑戦者の

スケジュールがハードになってくる場合もある。

今回、中野たむと岩谷麻優がその典型だったろう。

 

また、ジュリアに至っては、

8月20日(現地時間)に米国フィラデルフィアで

STRONG女子王座2度目の防衛戦を行なっている。

 

率直にいって、大会場をリーグ戦だけでこなすのは現状ではまだ厳しい。

リーグ戦の試合形式である15分1本勝負はスリリングでじつに面白い。

 

その反面、大会場のビッグマッチでは物足りないという

先入観を観客側に与えてしまう。

 

この両面を持ち併せているから、大変なのだ。

 

それを考慮し、日程を短縮させリーグ戦のみのシリーズにしてはどうか?

そういった声も選手、関係者間であがっているようだ。

 

ともかくスターダムのリングは、

まだまだノビシロがある実験の場でもある。

 

今年の『5★STAR GP2023』大成功、有終の美とともに

課題が見えたこともプラス材料と捉えればよいのだろう。

 

最後にこの2カ月間余、全力で闘い抜いた選手たちを称えたい。

また、怪我でリタイアしてしまった選手たちは

しっかり治してからカムバックしてもらいたい。

 

              ©スターダム

 

というわけで…アリベデル~チ!

ま・た・な!!