7月15日に東京・後楽園ホールで開催された

ノア『One Night Dream』は前売りチケット完売、

1515人(札止め)と立錐の余地もない観客で埋まった。

 

観客のお目当てはもちろん、メインイベントのドリームマッチ。

中嶋勝彦vs宮原健斗による約10年半ぶりの一騎打ちにあった。

 

周知の通り、両者は健介オフィス(DIAMOND RING)の先輩・後輩の間柄。

DIAMOND RING活動休止後は、それぞれノア、全日本に活動の拠点を移している。

 

それ以降で交わったのは、武藤敬司引退試合が行なわれた2・21東京ドーム。

6人タッグマッチながら、10年ぶりにリングでの再会を果たしている。

 

2人がシングルマッチで肌を合わせるのは2012年12月8日、

DIAMOND RINGの横浜ラジアントホール大会以来となる。

 

あれから、10年半……。

兄貴分である中嶋の提案に、

かつての弟分であった宮原が応えるカタチで実現したシングル戦。

 

後楽園ホールのチケットがあっという間に完売したことからも、

この両選手による邂逅……兄弟喧嘩の注目度の高さがわかろうというもの。

 

アウェーのリングでありながら、いつものド派手な入場を展開し

観客の圧倒的な支持を受け、大見得をきる健斗。

 

一方の勝彦はいつもながら静かな佇まいでのリングイン。

 

兄が陰ならば、弟は陽。

この対照的な佇まいも興味深い。

 

ゴングが鳴って、しばしの睨み合いから

ガッチリとロックアップした。

 

それ以降、もう余計な試合経過や説明は不要だろう。

真っ向からぶつかり合った。

小細工などまったくなかった。

 

              ©Sakai

 

ひたすら打ち合う。

殴り合う、蹴り合う、投げ合う。

 

「もっと来い!」

 

両選手とも意地で立ち上がり、

相手に向かって胸を突き出す。

 

果てることのない闘いは34分を超えた。

 

「ケントー!!」と叫んだ勝彦が

トドメのヴァーティカル・スパイクを炸裂。

 

34分12秒の激闘に終止符が打たれた。

 

大の字となった健斗を介抱しようとする勝彦。

しかしながら、健斗はそれを拒絶してエルボー。

ノーサイドどころか、しばし殴り合いをやめない両選手。

 

いいねえ!

ここで握手などしたらお終いだ。

握手すれば、健斗は敗北を認めたことになるのだ。

 

「俺の知らない宮原健斗だった。

今夜限りかもしれない、またあるかもしれない。

プロレスは何が起こるかわからないから楽しい」

 

充実の表情でコメントする勝彦。

一方の健斗も敗れてなお闘志剥き出し。

 

 

「一番この世で借りを作りたくない男に借りを作ってしまった。

次があるのかないのかは、プロレスファン(の声)しだいだ」

 

いいねえ、最後のコメントまでいい。

 

34分12秒の闘い。

 

もし、この一戦を見とどけていたら、

師匠の佐々木健介も、オジキといっていいマサ斎藤さんも、

きっと大きく頷いたに違いない。

 

「よくぞ、ここまで育ったな!」

 

そう2人を褒めてくれたに違いない。

 

 

試合後しばらくしてから、

外階段のバルコニーで勝彦とバッタリ。

 

「良かったねえ、素晴らしかった!」

 

「兄弟喧嘩は響いてくれましたかね?」

 

「響いた、響いた! 今年2番目のベストバウトかな?」

 

「ありがとうございます。それで1番というのは?」

 

「うん、正月のグレート・ムタvs中邑真輔だね」

 

「あー、あの試合だけには逆立ちしたって敵いませんから(笑)」

 

あれだけの激闘を展開した直後にも関わらず、

勝彦はまったく息も乱れず冷静そのもの。

ただし、その表情は充実感に溢れていた。

 

現時点にて。

 

レジェンドプロレス・べストマッチ=ムタvs真輔

現代プロレス・ベストマッチ=中嶋vs宮原。

 

そう言いきっていいと思う。