もの心ついたころから野球小僧だった。

少年時代にテレビで観られる三大メジャースポーツは、

プロ野球、大相撲、プロレスの三つ。

 

相撲、プロレスに関しては、

あくまで相撲ごっこ、プロレスごっこだけど、

野球は少年野球から軟式ながら実戦を知っている。

 

そういう経緯もあるから、

やはり野球に対する思い入れは特別なもの。

 

過去、自分がスポーツ観戦したなかで生涯

もっともシビれた劇的シーンといえば、

2009年3月、第2回WBC決勝戦の日本vs韓国。

 

同点で迎えた延長10回表、大不振に陥っていたイチローが

センター前に2点タイムリーヒットを放って優勝を決定づけたシーン。

 

もう、これ以上のシビれる場面はこの先、

観られることはないだろうなと思っていた。

 

 

ところが、今回のWBCがそれを凌駕してしまった。

1点ビハインドで迎えた準決勝のメキシコ戦、9回裏。

先頭で2べ―スヒットを打った大谷がヘルメットを脱ぎ捨てて激走。

2塁ベース上に達するとベンチに向かって「カモン!」3連発からマッチョポーズ。

 

吉田がフォアボールを選んで、代走に周東。

お膳立てが出来上がったところで、3三振の村上登場。

まあ、不振の村上は「村神様」から一転して、「村人」、「村民」、

さらに「三冠王」ならぬ「参観王」とSNSで叩かれまくっていた。

 

その村上がセンターオーバーのサヨナラ2塁打。

余裕でホームインの大谷を追い越す勢いで時速30キロを超える

超俊足で周東がホームイン。

 

もう、お祭り騒ぎ。

そんなに野球を観ないウチのカミさんが

奇声(?)を発しながら何度もバンザイしている。

「ちょっと大丈夫?」と、それもちょっと怖かった(笑)。

 

この試合、早くもMLBが認定する歴代WBCベストゲームの

第1位にランクインしている。

 

翌日の決勝は、日本vsアメリカ。

大会前からMLB公式サイトなどでは、

ドミニカ共和国、アメリカ、日本が3強とランク付けされていた。

 

なぜか、大会中に日程(組合せ)変更があり、

勝ち進めば本来準決勝で当たるはずの日本vsアメリカが変更されている。

 

このあたり、MLB側の思惑もすこし働いているようで、

ちょっとキナ臭い感じもしたのだが、

いずれにしろ待望の日米決戦がファイナルカード。

 

MLBサイトでは、大会前から「大谷vsトラウト」のエンゼルス夢対決を煽っていたが、

投手・大谷vsトラウトの直接対決まで考えてのものではなかったろう。

 

ただし、栗山英樹監督と大谷翔平のなかではそのシナリオは出来上がっていた。

大会前から「世界一しか頭にない」と語っていた栗山監督が

どこかのTV媒体のインタビューにハッキリこう答えていた。

 

「最後の優勝シーンの場面、胴上げ投手、

ボクの頭のなかでは出来上がっています。

まだ、それは口にできるものではないですけど」

 

大会前から、胴上げ投手としての大谷登板は、

2人のなかで出来上がっていた構想だったのだろう。

 

ところが、大谷はそのさらに上のシナリオを頭に描いていた。

最後は同僚でありメジャー最強打者であるトラウトを打ち取る。

 

これも偶然の産物となるのだが、

8回に登板したダルビッシュ有が、

ホームランとヒットを浴びていなければ、打順からいって

トラウトまでまわることなく試合が幕切れになる可能性が大だった。

 

ベンチとブルペンを行ったり来たり、

そして大谷がクローザーとして9回裏のマウンドへ。

2人打ち取れば、トラウトと勝負できる打順。

 

先頭にフォアボールを出してしまった。

この時点で、トラウトの打席での決着という可能性は遠のいた。

ところが、1番のベッツを2塁ゴロのダブルプレーで打ち取った。

 

その瞬間、大谷が雄叫びをあげたのは、

ゲッツ―で2アウトを奪ったということより、

トラウトとのマッチアップでの決着戦が

可能となったことへの喜びだったように思う。

 

大谷翔平vsマイク・トラウトの世紀の一戦が実現。

まさに伝説の6球となった。

 

前日のお祭り騒ぎとなったメキシコ戦とは打って変わり、

「USAコール」もほとんど起こらないほど緊迫し、

重苦しいムードのロウスコアで回を重ねてきた決勝戦。

 

6球目、大谷のエグイいスライダー(スイーパー)にトラウトは空振り三振。

雄叫びをあげた大谷はグラブとキャップをベンチ方向へ投げ捨てた。

 

漫画でもボツになるだろう、映画でも演出しないであろう、

あまりにべたでパーフェクトすぎる劇的結末。

そんな完璧な優勝シーンを自分のシナリオ通りに達成してしまった大谷。

 

もう、こうやって言葉にする、文面にすることじたいが野暮というもの。

それほどシビれるシーンを世界が認める大スターが現実のものとしてくれた。

 

野球が好きでよかった。

日本人でよかった。

大谷翔平を見続けてきてよかった。

 

史上最高のチーム・侍ジャパンはその翌日に解散。

メジャー組、NPB帰国組と分かれて、

もうすでに各チームのキャンプ、オープン戦に合流。

 

みんなが、次なる闘いへと挑んでいく。

私の大好きな野球シーズンが日米でスタートする。

 

 

【追伸】

 

フロリダ・マイアミでの決勝戦。

なぜか、見覚えのある日本人女性の顔が何度も映りこむ。

その特等席に座っていたのが、紫雷イオ(イヨ・スカイ)だった。

 

SNSのトピックニュースにもなった。

早速、イオにラインで知らせてみた。

 

こちらは昼間、現地は夜中。

私がラインを送ってから、

9時間後に返信があった。

 

「スタジアムにいるときは回線もパンク状態で。

そんなに映りこんでいたなんて、今ビックリしています」

 

たぶん、起床したら凄まじい数のメールや

ラインが来ていて驚いたのだろう。

 

それにしても、あの特等席。

羨ましすぎるゼア!