10月30日、プロレスリングNOAH(以下、ノア)が、

プロレス界から有明アリーナに初進出した。

 

まあ、とにかく最新式の立派な会場だった。

 

もともと東京五輪用に建築された会場であるが、

今年8月から一般使用が可能となり、

そのプロレスこけら落としとして押さえたのがノア。

 

正面入口で報道受付を済ませたものの、

プレスルームへの行き方もよくわからない。

 

こんな時に、受付にいた広報の石黒さんが

わざわざそこへの近道(裏道?)まで誘導してくれる。

扉を開けたエレベーターのところでは西永レフェリーとバッタリ。

そこから先は西永さんがプレスルームまで連れていってくれた。

 

とにかく、ノアのスタッフ陣はいつも気配りが行き届いている。

ホントに、ありがたい!

その様子を見ていた東スポの岡本記者が、

「迷子のおじいちゃんみたいですね」と笑っていた。

 

だけど、私同様に迷子状態の関係者を

その後、何人か見つけてしまった(笑)。

 

メインアリーナは最大1万5000人収容。

そのうちの一面に入場バックセットを設置しているから、

キャパはほぼ1万人クラスとしているようだ。

 

今回は、観客の声出しOKなので、

チケットは席を一個ずつ空けての販売。

最終的に観衆発表=3739人。

 

ただし、アリーナから2階席、3階席、4階席まで

けっこう万遍なく埋まっているので、

「よく入っているなあ!」というのが率直な印象。

 

それに声出しOKとなると、

やはり会場の熱気がそれを後押ししてくれる。

 

そういえば、新日本プロレスの10・26後楽園ホールも同様だった。

声出し解禁ということで一個空けの客席チケットは完売。

観客数こそ700人と発表されているが、やはり熱気が違っていた。

 

 

 

 

それにしても、相変わらずノアのセットバック、

入場ゲートは華やかでビッグマッチ感に拍車をかけている。

 

まして、オープニングの挨拶を務めたのが、

欠場中の潮崎豪である。

 

やはり、「Ⅰ am NOAH」の存在感は大きい。

潮崎の元気な姿を見ると、ノアだなあという実感が沸いてくるのだ。

 

第4試合のタッグマッチをイホ・デ・ドクトル・ワグナーJr.が、

親父譲りのワグナードライバーで豪快に制したあと、大事件発生!

 

 

 

 

大型ビジョンにあのテーマ曲とともに現れたのは中邑真輔。

いや、WWEスーパースターのSHINSUKE NAKAMURAだった。

 

そして真輔自身の口から、超ドリームカードが発表された。

 

「2023年1月1日、日本武道館。

SHINSUKE NAKAMURA対グレート・ムタ。

言葉はいらねえな、これは奇跡だ!」

 

アリーナ騒然。

マスコミ陣も騒然。

ついでに、控室にいた棚橋弘至もぶっ飛んだ!

 

 

 

サイバーファイトの武田有弘取締役がまた大仕事をやってのけた。

WWEとの粘り強い交渉の末、WWE所属の真輔をノアに上げてしまうのだ。

まさに、奇跡。

 

もちろん、ムタvs中邑は初対決。

それに武藤ではなく、ムタであるからこそ何倍も面白い。

 

正直、武藤敬司に全盛期のパフォ―マンスは望めない。

ところが、魔界の住人であるムタならばひと味もふた味も違ってくる。

 

思い出すのは、1994年5月1日、福岡ドームで実現した

猪木引退カウントダウン第1戦の猪木vsムタの一騎打ち。

 

試合には敗れたものの、福岡ドームはムタワールドに覆われた。

猪木カラーをムタワールドが食ってしまった。

つまり、悪魔が神を制した格好なのである。

 

それもこれも、ムタなら何をやっても許されるから。

猪木の土俵に上がる必要もなかったから出来た離れ業といえる。

 

過去、武藤敬司vs中邑真輔はシングルで2度実現している。

いずれも2008年のこと。

まず、同年の4・27大阪府立体育会館のIWGPヘビー級選手権で対戦し、

武藤がムーンサルトプレスで勝利を収めベルトを奪取。

 

つづいて、同年の10・13両国国技館で中邑がリターンマッチに臨んだものの、

武藤のフランケンシュタイナーに敗れている。

 

当時、ちょっとした思い出がある。

4月の大阪大会終了後、テレ朝『ワールドプロレスリング』

スタッフとの打ち上げを終えたあと、なんばの街を歩いていて

真輔にバッタリと出くわした。

 

その後、真輔を含めた4人でがんこ寿司に入って、

1時間ほど飲んで雑談を交わした。

 

真輔は笑顔を絶やさなかった。

 

「今日、わかったことがありますよ。

武藤さんは、オレについて来られなかった」

 

終始笑みを浮かべながらも、

内心では相当に悔しかったことだろう。

 

「それは武藤敬司がついていかなかったんじゃないの?」

 

私はそう言いかけて、止めた。

傷心を笑みでひた隠しにしている真輔に向かって、

それは言ってはいけないと思ったから。

 

やはりあの当時、真輔といえども

武藤の掌に乗せられてしまったのだ。

 

ただし、とうにIWGPを巻いていようとも、

中邑真輔がまだ真のスーパースターではなかった時代の話。

 

その翌年から真輔はボマイェをフィニッシャーとして、

さらに身体をくねらせはじめた。

 

真輔が本当の意味でスーパースターになったのは、

二度の武藤戦を体感したあとのことだった。

 

さあ、どうなるのか?

WWEスーパースターのSHINSUKE NAKAMURAと、

世界のグレート・ムタの初遭遇。

 

リング上にどのような世界観が生まれて、

日本武道館はどちらのカラーに染まるのか?

 

いずれにしろ世界中のプロレスファンが、

固唾を飲んで見守る闘いとなるだろう。

 

第7試合、GHCマーシャルアーツルールで行なわれた

船木誠勝vs桜庭和志のGHCナショナル選手権は、

一瞬たりとも目の離せない緊張感に包まれる中、

船木がニンジャチョークでレフェリーストップ勝ち。

 

第8試合のGHCタッグ選手権は予想以上の熱闘で盛り上がる中、

小島聡が中嶋勝彦に完璧なラリアットを決めてタカ&サトシが初Ⅴ達成。

 

そして、武藤引退ロードに棚橋弘至をはじめ新日本トリオが登場。

 

武藤の入場テーマは、あの『TRIUMPH』から。

過去、武藤のテーマ曲は何度も変わっているが、

『TRIUMPH』といえば1995年10月9日の東京ドーム、

武藤vs高田延彦の新日vsUインター頂上決戦(IWGPヘビー級選手権)を

真っ先に思い出す人が多いだろう。

 

このあたりの粋な演出が、

最近のノアの特長でもある。

 

 

棚橋、武藤のドラゴンスクリュー合戦。

武藤がシャイニングウィザードを決めれば、

棚橋はスリングブレイド。

 

やはり、この両選手はスペシャルな存在。

スペシャルな師弟関係。

すべてのパフォ―マンスに華があるのだ。

 

 

 

その一方で、予想通りのシーンも生まれた。

真壁刀義と稲村愛輝がボコボコにやり合う。

試合後も一歩も退かずに殴り合う。

 

世代を超えたボコボコ合戦。

類は友(敵?)を呼ぶ。

必然の遭遇に真壁は稲村との再戦を訴えた。

 

エンディングシーンがまた興味深かった。

場外花道に並んで座り込んだ武藤と棚橋が、

なにかを熱心に語り合っているのだ。

 

そういえば、1・8横浜アリーナでの新日本vsノア対抗戦の

メイン(オカダ・カズチカ&棚橋vs武藤&清宮海斗)でも

同様のシーンが見受けられた。

 

あのときは、「清宮はいい選手だ」と

2人で語っていたというが、

今回は「稲村はいい!」と話していたという。

 

 

 

ツーカーとうか、以心伝心というか、

最後まで素敵な師弟関係を見せてもらった。

いやいや、棚橋が武藤を新日本のビッグマッチに

招待したいと言っているのだからまだ続きがあるかもしない。

 

そして、メインはGHCヘビー級選手権。

とにかく藤田和之は凄まじく強かった。

 

じつは前日、藤田にメールを送ってみたところ、

こんな返信があった。

 

「明日は午前中に娘の柔道の試合に付き添って、

午後は遠慮なくシメてやりますから」

 

藤田が試合のことにマトモに触れるのは珍しいこと。

たいていは話をはぐらかして趣味である釣りの話とか、

夜中にトイレに何回起きたとか、そんな返信ばかりくる(笑)。

 

 

 

そして、やはり野獣は遠慮なく容赦なくシメにいった。

完全なアマチュアレスリング・スタイルで清宮を翻弄する。

絶対に清宮に取らせないで、相手をコントロールしていく。

 

あの藤田に上を取られただけでもキツイだろうし、

スタミナの消耗度は半端ないものだったろう。

 

途中から打撃戦になっても、

藤田の打撃力もまた半端ない威力。

 

ほぼ80パーセント近く藤田ペースで終盤に向かう中、

1発に懸けた清宮はフランケンシュタイナーで逆転勝利。

 

ただ、足のフックが甘かったせいで、

ティヘラのようなカタチとなってしまい、

すぐに丸め込んでの3カウント奪取とはいかなかった。

 

 

そこが、やはりファンからすれば物足りなかったのだろう。

試合後、清宮に対する声援がいつもより少なかった。

 

率直に言うなら、クイック決着ではたまに起こること。

いつもいつも100パーセントのフィニッシュとはいかない。

そこが、プロレスがナマモノたる所以でもあるのだ。

 

これもまた成長していく王者・清宮にとっての試練と捉えたい。

世界最高のプロレスリングマスターである武藤を何度も体感し、

今度は日本人最強ヘビー級ファイターと称される藤田を体感した。

 

 

 

もう、恐れるものはなにもない。

そして、いつかはオカダ・カズチカにリベンジする――。

そういう命題も背負っているのだから、前進あるのみだ。

 

清宮海斗、がんばれ!