10月1日に逝去したアントニオ猪木さん。
あれから、そろそろ1ヵ月になろうとしている。
ファン時代から数えて約30年間、見てきた猪木さんの試合の中から
私が個人的に思い入れの深いベストバウトを選んでみた。
©大川昇
★アントニオ猪木ベストマッチ10(プロレス)
①アントニオ猪木vs大木金太郎
(1974年10月10日、東京・蔵前国技館/NWF世界ヘビー級選手権)
②藤波辰巳vsアントニオ猪木
(1988年8月8日、横浜文化体育館/IWGPヘビー級選手権)
③アントニオ猪木vsビル・ロビンソン
(1975年12月11日、東京・蔵前国技館/NWF世界ヘビー級選手権)
④アントニオ猪木vsストロング小林
(1974年3月19日、東京・蔵前国技館/NWF世界ヘビー級選手権)
⑤タイガー・ジェット・シンvsアントニオ猪木
(1975年6月26日、東京・蔵前国技館/NWF世界ヘビー級選手権)
⑥アントニオ猪木vsスタン・ハンセン
(1981年4月23日、東京・蔵前国技館/NWFヘビー級王座決定戦)
⑦アントニオ猪木vsリック・フレアー
(1995年4月29日、北朝鮮・平壌メーデースタジアム)
⑧アントニオ猪木vsビッグバン・ベイダー
(1996年1月4日、東京ドーム)
⑨アントニオ猪木vs坂口征二
(1978年4月21日、東京・蔵前国技館/第1回MSGシリーズ予選トーナメント1回戦)
⑩アントニオ猪木vsクリス・マルコフ
(1969年5月16日、東京体育館/第11回ワールド・リーグ戦優勝決定戦)
※アントニオ猪木vsジョニー・バレンタイン
(1966年10月12日、東京・蔵前国技館/東京プロレス旗揚げ戦)
★アントニオ猪木ベストマッチ5(異種格闘技戦)
①アントニオ猪木vsモハメド・アリ
(1976年6月26日、東京・日本武道館)
②アントニオ猪木vs‟ザ・モンスターマン”エベレット・エディ
(1977年8月2日、東京・日本武道館)
③アントニオ猪木vsウィリエム・ルスカ
(1976年2月6日、東京・日本武道館)
④アントニオ猪木vsウィリー・ウイリアムス
(1980年2月27日、東京・蔵前国技館)
⑤アントニオ猪木vsカール・ミルデンバーガー
(1978年11月8日、西ドイツ・フランクフルト・フェストホール)
この結果を受けて、けっこう意外と感じる人もいるかもしれない。
ただし、私が選出するとこうなる。
これは、すべて私の感性からくるものだから。
プロレス部門のベストマッチ1位と2位は不動。
正直いって、3位以下は順不同と言ってもいいかもしれない。
1位の大木金太郎戦は、過去プロレスを観てきた中で、
もっとも興奮し感動を覚えた闘いとなる。
猪木のベストバウトというだけではなく、
プロレスというジャンルの中でランク付けしても不動の1位である。
この試合はファンだけではなく、現役レスラー全員に見てもらいたい。
猪木追悼ブログ記事の中でも触れているのだが、
2007年8月末、猪木へのロングインタビューを行なったとき、
私はこの試合に関して直接、猪木に問いかけてみた。
「僕は子どものころからプロレスを観てきて、仕事で20年以上も関わって、
僕の中では蔵前国技館での猪木-大木戦を超える試合はないんですね。
技が何もないんですよ、ただ闘っているんですよね。
頭突きとパンチだけで闘っているんですよ。
あのひとつ間違えたら『ブチ殺してやる』ぐらいの感情と、
最後に両選手とも涙で抱擁したりとか。
あの13分13秒の中にプロレスのすべてのエッセンスが詰まっていて。
いまでもあの試合が一番好きなんですよね」
「まあ、そう言われるとちょっと照れくさいんだけど(笑)。
だから、そこに何かヒントがあるだろうと。
俺が力道山って人を見て、あの凄さはなんなんだって考えたように。
人間は、こだわりがあると拒否しますからね、
『見たくない、肯定したくない』と。
そうじゃなくて、ある意味で俺なんかは逆にね、
『いいものはいい』って考えられる自分がいたからね」
こんな会話をしたのもいまとなってはいい思い出。
猪木vs大木金太郎は、プロレスの本質をもっとも端的に表現した試合だった。
2位の猪木vs藤波も文句なし。
飛龍革命を推進するIWGP王者・藤波に、
師匠の猪木が挑戦者として挑んだ。
結果は、一歩も退かず60分ドロー。
恐るべき猪木のスタミナ。
限界説、引退説をすべて吹き飛ばしてみせた名勝負だった。
第10位の下に『※』で付記した猪木-バレンタイン戦は、
東京プロレス旗揚げ戦のメインで実現した壮絶な試合。
その激しさは、これまでのプロレスの概念を変えたとも言われている。
ただし、残念ながら映像がどこにも残っていないため、
その模様は写真と当時の試合レポートでしか知ることができない。
よく憶えているのは、私が尊敬していたプロレスライターである
菊池孝さん(2012年9月1日没)が、50年以上のプロレス取材歴の中で、
猪木-バレンタイン戦こそ生涯ベストバウトだと言いきっていたこと。
しかも、菊池さんはジャイアント馬場さんと仲がよく、
馬場さんのことを「馬場ちゃん」と呼べる唯一の記者だった。
同時に、「人間的に猪木はあまり好きじゃない」とハッキリ口にする方だった。
その菊池さんが「猪木vsバレンタインが生涯ベストバウト」と言ったのだから、
その説得力は何ものにも代えることができないだろう。
そこで、ランク外ながら付記させてもらった。
異種格闘技戦に関しては、その評価の仕方がじつに難しい。
それをプロレスの試合と同列に並べて比較することは困難。
プロレスのリングで行なわれたものはすべてプロレス。
そういう意見もあるのだろうが、
やはり同列に並べての順位付けはできない。
そこで異種格闘技戦は、異種格闘技戦部門とさせてもらった。
私の選出したアントニオ猪木ベストマッチ・ランキング。
ファンの皆さんになにか響いたものはありますか?
こればかりは、その人の感性で自由に選ぶもの。
私の選んだ名勝負。
いまも映像に残っているものがあれば、
是非とも観戦してみてくださいね。
それではご唱和ください。
行くぞー!
1、2、3、ダァーッ