新日本プロレスの10・10両国国技館大会は、

懐かしの大会名『超実力派宣言』を冠して開催された。

 

ある意味、裏メインイベントとなったのは第1試合前に行なわれた

アントニオ猪木さん10カウントゴングセレモニー。

 

進行役は元・新日本プロレスリングアナウンサーの

田中ケロさんが務めた。

 

これ以上の適任者はいない。

世界中で一番アントニオ猪木の名前をコールしてきた人物なのだから。

 

在りし日の猪木さんのファイト映像がビジョンで流される。

1972年の新日本旗揚げ戦から1998年の引退試合まで。

 

昔の映像は小学生のころからテレビにくぎ付けとなって観ていたし、

1986年からは記者として会場でそれらを見とどけてきた。

 

すべて記憶に鮮明に残っているシーンばかり。

 

リングサイドを囲んだのは、新日本隊とCHAOSの選手。

花道にロス・インゴ、鈴木軍、UNITED EMPIREのメンバー。

さらに無法集団のBULLET CLUBの姿もあった。

 

田中リングアナが猪木さんの足跡を読み上げたあと、

坂口征二相談役が遺影を持って10カウントゴングが打ち鳴らされる。

 

永田裕志、オカダ・カズチカ、柴田勝頼は泣いていた。

 

最後は、田中リングアナのコールから

炎のファイター』が鳴り響く。

 

このシーンを会場で、またCSテレ朝、新日本プロレスワールドで

見守ったファンのなかでも、多くの人が涙ぐんだことだろう。

 

私も同じだった。

猪木さんが逝去した1日、テレ朝『サタデーステーションSP』に出演したとき、

また他団体のリングで追悼の10カウントゴングを聞いたときには、

まだ実感が沸いてこなかった。

 

そんななか、猪木さんが創設した新日本プロレスのリングで

この光景を見たとき、初めて猪木死去の事実が胸に突き刺さった。

 

セレモニー終了後のバックヤードインタビューでも、

オカダは涙で声を詰まらせていた。

 

2010年代、新日本プロレスは猪木離れをテーマとして突き進んだ。

その結果、新時代のシン・新日本プロレスを作り上げることができた。

 

ところが、この2年、オカダは猪木の名前を叫びつづけた。

創設者である猪木さんに今の新日本を見てほしい。

その一念から、それをモチベーションとして闘ってきた。

 

その夢が叶うことなく終わった。

だから、オカダは「悔しいです」と言った。

 

ただし、涙では終わらない。

セミファイナルで160㎏の怪物JONAHと真っ向勝負を展開し、

レインメーカーでマットに沈めると、天を仰いだ。

 

              ●写真提供/新日本プロレス

 

そして、このファイティングポーズ。

新日本初期のころ、猪木さんが撮影時に見せたポーズ。

その決めポーズを披露して覚悟を表現している。

 

変わらないよ、プロレスっていうのは。

1972年だろうと2022年だろうと、なにも変わらない

 

いつの時代も闘う姿勢と精神は変わらない。

闘魂継承を誓ったのだろう。

 

メインイベントはIWGP世界ヘビー級選手権。

ジェイ・ホワイトvsタマ・トンガという

外国人同士による異色のIWGP世界戦。

 

ただし、この2人には共通点がある。

ともに新日本道場で腕を磨いてきたという経歴があるのだ。

 

                    ●写真提供/新日本プロレス

 

31分を超える長期戦を制したのは王者ジェイだが、

中盤じつに興味深いパフォ―マンスが見られた。

 

執拗なまでの腰攻撃を得意とするジェイが、

タマをボストンクラブ(逆エビ固め)に捕える。

 

その際に、「ニュージャパン・スタイル!」と叫んだのだ。

これは、同じ新日本道場育ちのタマだけではなく、

猪木さんへ向けてのメッセージにも聞こえた。

 

この結果を受けて、1・4東京ドーム大会。

アントニオ猪木追悼ドーム大会のメインカードは、

ジェイ・ホワイトvsオカダ・カズチカと正式に決定。

 

              ●写真提供/新日本プロレス

 

リング上で両選手が視線をぶつけ合い、

言葉をぶつけ合う。

 

オカダvsジェイ。

この図式となると、ある試合を思い出す。

 

1995年4月、北朝鮮・平壌メーデースタジアムにおいて

19万人という大観衆の前で実現したアントニオ猪木vsリック・フレアー

ストロングスタイルの象徴とアメリカンプロレスのカリスマ。

 

正真正銘の初対戦ながら、

歴史に残る名勝負となった。

 

オカダが闘魂を継承すると考えたなら、

ジェイは現代版リック・フレアーと言える存在かもしれない。

 

なんとなく、そんな思いも沸いてきた。

天に旅立った猪木さんに向けて、

最高の闘いを見せてもらいたい!

 

              ●写真提供/新日本プロレス

 

というわけで、今回の10・10両国『超実力派宣言』に関しては、

一大限りのスーパーヒーロー・アントニオ猪木をテーマにすえて

新日本プロレス・オフィシャルスマホサイトに寄稿させてもらった。

 

燃える闘魂よ、永遠に!

 

『“GK”金沢克彦の新日本プロレス通信』!

今回は「現代プロレスにおいても、新日本の原点、闘いに懸ける精神、魂は変わらない」

猪木さん逝去、10.10両国大会に言及!! | 新日本プロレスリング (njpw.co.jp)