7月30日~10月1日まで、なんと2カ月にわたり激闘を展開する

長期リーグ戦となったスターダム『5★STAR GP 2022』が、

10・1東京・武蔵の森総合スポーツプラザ大会で閉幕。

 

昨年の同大会で怪我のため途中リアタイアを余儀なくされた

ジュリアが1年越しの雪辱を果たし、みごとに初優勝を飾った。

 

              ©スターダム

 

その裏で、おそらく誰も気付いていないであろう

もうひとつの快挙が!?

 

ガイドブックでの優勝予想で、

「レッドスターズ代表=中野たむ。

ブルースターズ代表=ジュリア。

優勝=ジュリア。」

 

そう書いた私の予想がピッタリ当たってしまったのだ。

過去に団体オフィシャルのWebサイトやパンフレットで、

『G1 CLIMAX』や『チャンピオン・カーニバル』の優勝予想など

何度も書かせてもらったことがあるのだが、ハズレてばかり。

 

これほど見事に予想が的中したのは初めてのこと。

うーむ、オイラもなんか持ってるなあ……。

そんなこともすこしだけ自慢しておきたい(笑)。

 

あの『G1』を上まわる21大会で覇を競った『5★STAR GP 2022』。

そのうち私が現場取材したのは、首都圏開催の7大会。

肝心の最終戦(優勝決定戦)が開催された10月1日は取材できなかった。

 

1日午前にアントニオ猪木さんが逝去。

急きょテレビ朝日『サタデーステーションSP』への生出演が決まり、

会場行きを断念したしだい。

 

それでも、やはり観たい。

何としてもラストを見とどけたい。

そこでPPV中継を初めて購入して、

2日後に全試合を動画観戦してみた。

 

いま、スターダムがイチバンおもしろい!

それが私の率直にして素直な意見。

過去、これほど女子プロレスに魅力を感じたのは初めてのこと。

 

ファンのかたには申し訳ない表現となってしまうのだが、

まさに「金を出して見る価値がある!」のが現スターダムである。

 

現場取材&PPV中継で観た『5★STAR GP』の熱闘。

素晴らしい試合がいくつもあった。

15分1本勝負という限られた時間のなかで、

決着をつけるための手段は選手それぞれ。

 

切り返し、丸め込みのクイック決着の試合も多かったが、

真っ向勝負で完全ピンフォール、タップを奪った試合もある。

 

格、キャリア、年齢など度外視して参加26選手が

正面からぶつかり合う姿勢がなによりも響いてきた。

 

そして、最終戦。

すべてを見とどけた印象をひとことで言うなら、

‟ジュリア劇場”だった。

 

ジュリアの人生劇場と言ってもいいかもしれない。

 

ブルースターズ公式リーグ最終戦となった

ジュリアvs鈴季すず。

アイスリボン時代の先輩後輩が袂を分けて以来、

初めてシングルで対戦する因縁の一騎打ち。

 

 

対峙した両選手が泣いている。

2人だけにしかわからない感情。

 

それを振り払うかのように、すずが張り手。

あっという間に火が点いた。

 

マウントをとったすずがパンチ、エルボーを乱打すると、

村山レフェリーが制止に入る。

ところが、ジュリアは「止めるな!」と叫んだ。

 

やはり、2人にしかわからない世界が垣間見える。

ノンストップでぶつかり合った15分間。

時間切れのゴングを聞いて大の字となった両選手。

 

互いに人差し指を立てて、再戦を誓い合う。

そのとき2人の顔には笑みが浮かんでいた。

 

この結果を受けて、ジュリアの優勝戦進出が決定。

ただし、リーグ戦の中の1試合では括れないドラマに溢れていた。

 

レッドスターズを勝ち抜いたのは、

同盟を結ぶSAKI(COLOR‘S)を破った中野たむ。

 

これにて優勝決定戦は、あの名勝負の再現カードに。

ジュリアvs中野たむ。

 

昨年の3・3日本武道館大会のメインカード。

髪切りマッチ(ワンダー・オブ・スターダム選手権)で

たむが勝利を収めベルト奪取、さらにジュリアが丸坊主となった。

 

この試合は『プロレス大賞』のベストバウトにもノミネートされた。

それほど中身が濃く、インパクト満点の名勝負だった。

 

私がガイドブックでこの優勝戦カードを予想したのも、

もう一度、あの闘いを見てみたいという願望からだった。

 

それにしても興味深かったのは、

対戦を控えた両選手へのバックステージインタビュー。

 

ジュリアにインタビューしたのは、

レイザーラモンRG。

 

「先ほどの試合のダメージがあると思うんですが?」

「ダメージ? あるに決まってんだろ!」

 

「大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫に決まってんだよ!」

 

「意気込みをお願いします」

「たむ、会いたかったよ!」

 

この様子をみて、ふと思い出した。

やっぱり、なんとなく似てるなあ。

 

あの東京ドームでの猪木のひとこと。

1990年の2・10東京ドームのメインイベント。

猪木&坂口vs橋本&蝶野。

 

試合直前のインタビューで不粋な問い掛けに対して、

「闘う前に負けることを考えるやつがどこにいる!?」

と怒鳴った猪木がアナウンサーに張り手を食らわせたシーン。

 

猪木さんが逝去した直後だからそう感じたわけではない。

じつは、スターダムに移籍してからのジュリアを見てきて、

私なりに感じていたことなのだ。

 

この子はだれかに似ている。

ふだんは礼儀正しく真面目だが、

入場からリングに上がり、観客の前に立つと一変する。

 

全神経が研ぎ澄まされて、

全方位360度に向けて自分を表現している。

 

欠場中でセコンドに付いているときでも、

観客に見られていることをしっかりと意識している。

 

バックヤードインタビューでも同様。

絶対に気を抜いた素振りは見せない。

 

ストイックにプロレスを追求する姿。

ときに狂気を感じさせる泥臭い闘いぶり。

強いていうなら、猪木さんに似ているなあ。

これは以前から、本当にそう感じていたことなのだ。

 

プロレスラーを志すまでの波瀾万丈な人生。

特筆するようなスポーツ歴がないままプロレス界に身を投じたこと。

そんな部分も似ているのかもしれない。

 

ムーンサルトプレスなど派手な空中戦はできなくても、

的確な技と受けと表現力でジュリア独自の世界観を作り上げる。

 

今回のリーグ戦で決定的なものを感じたのが、

岩谷麻優との公式戦(9・11横浜武道館)だった。

15分間、一歩も退かずに時間切れドロー。

 

もうすぐキャリア12年になる岩谷は完成されている。

とくに受けの上手さは天下一品。

いまや受けの達人の域まできていると思う。

 

相手に攻めさせて攻めさせておいて、

スタミナが切れたところで一気に仕留める。

 

やはり、スターダムにおいてアタマひとつ飛びぬけた実力者。

その岩谷を相手に受けも攻めもまったく遜色なく互角に渡り合った。

 

キャリア5年にして、

ジュリアが本物になったこと強く印象づける試合だった。

 

 

また、話がとんでしまった。

いよいよ優勝決定戦。

 

やはりライバル同士。

互いを認め合っているから、

かなり危険な技も繰り出していく。

 

最後は、北斗晶公認のノーザンライトボム。

これがパーフェクトに決まって決着。

 

優勝カップを受け取ったジュリアは、

さすがに感極まったのか涙を浮かべた。

 

ただし、締めのマイクパフォーマンスはパーフェクト。

ここでもプロレスIQの高さを見せつけた。

 

まさに、ジュリア劇場。

みごとな締めだった。

 

最後に、私が勝手に選んだ『5★STAR GP 2022』の

各賞を記してみたい。

 

これは自分が見た試合にかぎっているので、

他の意見もいっぱいあるのだろうけど、

私見なので参考程度にみてほしい。

 

●優勝(MVP)=ジュリア

 

●準優勝(準MVP)=中野たむ

 

●殊勲賞=白川未奈

 

 

●敢闘賞=世羅りさ

 

 

●技能賞=岩谷麻優

 

 

●ベストマッチ③

1=岩谷麻優vsジュリア(9・11横浜武道館)

2=林下詩美vs朱里(7・31大田区総合体育館)

3=ジュリアvs鈴季すず(10・1武蔵の森総合スポーツプラザ)

 

そんな感じです。

他にも、いい試合は山ほどあったし、

活躍した選手もいっぱいいる。

 

今回、赤のチャンピオン朱里、白のチャンピオン上谷沙弥、

前チャンピオン林下詩美は若干ふるわなかった。

 

その一方で、鈴季すず、MIRAI、葉月、

ひめか、舞華、鹿島沙希の健闘、躍進が光った。

 

 

いずれにしろ、本当にドラマチックにして、

スターダムの魅力が全開となった『5★STAR GP 2022』。

 

今夏、頑張った選手たちに拍手喝采なのだ。

 

 

というわけで……アリベデルチ!

またな!