新日本プロレスの6・12大阪城ホール大会で、

大きな山が動いた。

 

新日本50周年イヤーの主役として、

IWGP世界ヘビー級王者として、

盤石の絶対王者ぶりを誇示してきた

オカダ・カズチカがⅤ5に失敗。

 

               ●写真提供/新日本プロレス

 

しかも、かつて見たことがないような完敗を喫したのだ。

オカダを下し新王者となったのは、ジェイ・ホワイト。

 

約1年ぶりに新日マットに帰ってきた29歳、

キャリア9年の男が、大仕事をやってのけた。

 

といっても、オカダはジェイを苦手としてきたのも事実。

過去のシングル戦績は、ジェイの3勝1敗。

ただ、オカダの1勝が米国ニューヨーク州MSGでのメインイベント、

IWGPヘビー級選手権であげたものだからその印象ばかり強く残ってきたのだ。

 

それにしても、この1年でまたジェイは腕をあげた。

試合前からオカダと観客を挑発しまくり、

徹底した場外戦術でオカダのペースを崩す。

 

その一方で、リング上の勝負では目を見張るようなスピードで動く。

ノラリクラリから一転してハイスピードの攻撃。

さらに攻め込まれると、間をとって連続攻撃を許さない。

この緩急の差にオカダはまんまとしてやられた。

 

 

              ●写真提供/新日本プロレス

 

気が付くと、脂汗を流して苦闘しているのがオカダで、

挑戦者はスタミナを温存し、余裕までのぞかせる。

 

まるで王者を小馬鹿にしたように、

「ホォー!」と奇声を発して水平チョップを連打していく。

 

いわゆるフレアーチョップなのだが、

ジェイは29歳にしてリック・フレアーばりの

インサイドワークまで身に付けているのだ。

 

本当に不思議な魅力と強さを兼ね備えた男。

1970年代のアメリカンプロレスを彷彿させるような

オーソドックスなヒール戦法を披露したかと思えば、

絞り込まれたグッドシェイプな肉体を駆使して、

現代プロレスにも順応していく。

 

受けの上手さも天下一品。

オカダの強烈な一撃を食らっても、

大きな受け身をとってダメージを最小限に抑えているのがわかる。

 

「こんなに苦戦しているオカダは見たことがない。

終始ジェイのペースなんですよ」(棚橋弘至)

 

「10分だけオカダペースだったけど、

あとの20分はずっとジェイのペースだった」(ライガー)

 

ゲスト解説についていた両巨頭も口をそろえた。

 

最後はトドメのレインメーカーを狙ったオカダとの距離を詰め密着すると、

必殺のブレードランナーを完璧に決めて3カウント奪取。

 

IWGP USヘビー級王座、IWGPインターコンチネンタル王座、

IWGPヘビー級王座、NEVER無差別級王座に次いで5冠達成。

 

史上初のグランドスラムを達成している。

 

              ●写真提供/新日本プロレス

 

これで、ますますBULLET CLUBの勢力は増すばかり。

この日、6年4ヵ月ぶりに古巣の新日本マットに帰ってきた

カール・アンダーソン&ドク・ギャローズの存在感も際立っていた。

 

また、試合後もジェイの独壇場だった。

 

「話は2016年6月19日までさかのぼる…。

この会場で俺はヤングライオンとして最後の試合をした。

みんなにお別れを告げて、『みんなは俺のファミリーだ』と言った。

オマエたちを俺のファミリーだと言ってやったんだぞ。

今日は2022年6月12日。

6年経って、俺はスイッチブレイド、ジェイ・ホワイトだ。

俺はプロレス界でもっとも価値のあるレスラーだ。

プロレス界は俺を中心に回っている」

 

この男の記憶力とパフォーマンスにはいつも驚かされる。

そう、6年前の大阪城ホール。

無期限の米国ROH遠征を控えたジェイは、

第0試合で壮行試合を行なっている。

 

当日、私はテレ朝の放送席で見守っていたからよく憶えているのだ。

将来を嘱望されていた好青年のジェイは、

流暢な日本語でこう挨拶した。

 

 

              ●写真提供/新日本プロレス

 

「また帰ってきます。

なぜなら、この新日本プロレスリングは俺の家だ!

そして新日本プロレスと新日本プロレスファンズ…

アナタ、アナタ、アナタ、アナタは私の家族です!

ありがとうございました、またね!」

 

最高のスピ―チに〝ジェイコール”が館内に鳴り響いた。

ただし、注目はバックヤードインタビュー。

それも私は間近で聞いていた。

 

「戻ってきたら、タナハシ、ナイトー、マカベ、オカダに

肩を並べる存在になりたい。

この間、ケニー・オメガとも試合したけど、

ケニーからベルトを獲りたい。

最終的にはオカダとやりたい。

それが大阪城ホールか、東京ドームかわからないけど、

オカダと闘いたい。

最終的には、オカダと肩を並べるようになりたい」

 

6年前、まだ幼ささえ残るベビーフェイスで、

ジェイは大言壮語していた。

意外にビッグマウスだなあと思った。

そのときは、その程度に感じていた話。

 

ところが、現実にはどうだ!

凱旋したジェイは本当にケニーからUS王座を奪ってみせた。

そして、本当に大阪城ホールでオカダからIWGP世界ヘビー級王座を奪取した。

肩を並べるどころか、堂々とオカダ超えを達成し通算戦績を4勝1敗としたのだ。

 

有言実行とは、このことを言うのだろう。

6年後の自分の姿をジェイはすでに予言(予告)していたのだ。

 

恐るべき男。

死角のない男。

難攻不落に映るほど強い男。

 

オカダに完勝したジェイ・ホワイトを切り崩すのは至難の業。

そう思わせるほど、ジェイはパーフェクトなレスラーとなりつつある。

 

今回の6・12大阪城ホール大会に関しての総括は、

新日本プロレス・オフィシャルスマホサイトにて。

 

オカダvsジェイをメインテーマに、

カール・アンダーソンの新日マット復帰戦(NEVER無差別級選手権)、

オスプレイvsSANADAのUSヘビー級王座決定戦にも触れている。

 

闘いの歴史、因縁関係についても記しているので、

まあ読んでみてくださいね!

 

『“GK”金沢克彦の新日本プロレス通信』!

今回は「ジェイ・ホワイト、恐るべし! 死角なき“難攻不落の王者”誕生か?

 6.12大阪城ホール決戦を大総括!!」 | 新日本プロレスリング (njpw.co.jp)