新日本プロレス主催の1・8横浜アリーナ大会で、

新日本プロレスvsプロレスリングNOAHの全面対抗戦が実現した。

 

最大で1万7000人収容の横浜アリーナだが、

観客動員数はコロナ仕様のため7077人(主催者発表)。

 

ただし、早々にチケット完売という事実をもとに考えれば、

ひさびさの超満員札止めと言っていい大盛況だった。

 

 

驚いたのは、大会開始前に新横浜駅から

アリーナへとつづく陸橋を歩いていると、

「チケットを譲ってください」と書いたスケッチブックを

掲げたファンが立っていたこと。

 

おいおい、ジャニーズ系人気アイドルのコンサートかよ!?

プロレス会場の前でこんな風景は初めて見た。

 

そういえば、昨年の12・29スターダム両国大会のときは、

国技館の前を歩いていて、「チケットあるよ」とダフ屋に声を掛けられた。

両国国技館の前でダフ屋に会うなんて何年ぶりだろうか?

 

こんなコロナ禍においても、

やはり注目の興行となれば

チケットの売れ行きも比例するということを思い知らされたしだい。

 

なぜに突然、新日本vsノアなのか?

果たして、交流戦か? 対抗戦なのか?

戦前いろいろと言われてきた1・8横アリであるが、

間違いなく対抗戦、しかもバチバチの闘いが繰り広げられた。

 

ダークマッチ(第0試合)の2試合をふくめて、全11戦。

結果からいうと、戦績は新日本の6勝4敗1分け。

 

ただ、ファン、関係者の反応からいくと、

どちらが勝ち越したから強いとか、

そういう声はほとんど聞こえてこない。

 

つまり、ファン、マスコミ、団体関係者が一様に注目していたのは、

試合結果云々より試合内容そのものだということがわかる。

 

 

ダークマッチの第1試合は、藤田晃生vs矢野安崇の若手対決。

キャリア5ヵ月半の藤田(新日本)とキャリア1年2カ月の矢野(ノア)。

ともに高校レスリングで実績を残している者同士だけに、

レスリングでしっかりと渡り合い、気迫と意地をほとばしらせる。

 

小柄な矢野は空中戦も得意としている選手なのだが、

それを封印し基本技だけで挑んでいく姿勢もよかった。

 

10分時間切れの熱闘。

ある意味、これで対抗戦の成功は保証されたといっていいのかも。

2選手とも、よく務め上げた!

 

次に本戦の第1試合となった10人タッグマッチ

(石井&後藤&YOSHIーHASHI&田口&ワト

vs原田&大原&稲葉&稲村&岡田)で2人の男が弾けた。

 

 

戦前から予想していたのだが、

予想以上にぶつかり合った。

 

石井智宏と稲村愛輝だ。

 

キャリア3年余ながら、ごつい体で真っ向勝負を身上とする稲村。

最近の若手は絞ったバキバキ体型という流れに逆行しているところもおもしろい。

 

野獣・藤田和之に何度叩きのめされても、真っ向勝負。

その姿勢に関して、あのケンドー・カシンやシングル対戦経験のある

大谷晋二郎まで絶賛しているほど。

 

真っ向勝負のゴツゴツ、バチバチといえば石井である。

一目会ったその日から…これも運命的な出会いなのかもしれない。

 

真正面からのぶちかまし合戦。

試合終了のゴングが鳴っても、

場外でエンドレスなエルボー合戦がつづく。

 

 

このバックヤードでの石井の顔を見てほしい。

あの武骨な男が珍しく笑みを浮かべている。

 

「稲村! オメェとはまた今度リングで向かい合える、

そんな予感がするよ」

 

類は友(敵)を呼ぶ、

類はキャリアさえも凌駕する。

 

石井vs稲村の一騎打ち。

どちらのリングでもいいから見てみたい!

 

第3試合のジュニアタッグマッチ(石森&外道vsHAYATA&吉岡)では、

GHCジュニア&ジュニアタッグ2冠王のHAYATAが魅せた。

 

一瞬のヘデックで外道をマットに沈めてみせたのだ。

おそらく新日本ファンが初めて目にするであろう大技。

会場が「オオッ!」とどよめいたのは言うまでもない。

 

第4試合のジュニアタッグ戦(デスペラード&DOUKIvsYO—HEY&NOSAWA)では、

意外な2人の顔合わせが白熱した。

 

 

エル・デスペラードvsYO—HEYのマッチアップ。

 

ここ最近、ノアマットでは自身の方向性について悩んでいたYO—HEY。

チャラい外見とは裏腹に真面目な人柄が裏目に出ていた感もある。

 

ところが、IWGPジュニア王者を相手に身体能力の高さを存分に発揮した。

ダグ・ファーナス(※各自調査のこと)ばりのバク宙式ドロップキックを連発。

 

試合後、王者デスペラードはこう言った。

 

「YO—HEY、おもしろい。もっとやりてえな。

チヤンピオンがやりてえって言ってんだ。

どっかでチャンスねえかな」

 

現・新日ジュニア最強の男を振り向かせたのだから、

YO—HEYにとってはチャンス到来である。

 

 

第6試合のタッグマッチ(EVIL&東郷vs潮崎&北宮)もおもしろかった。

乱入・介入し放題で新日本マットを大混乱させているハウス・オブ・トーチャーは、

この対抗戦でもSHO、裕二郎を乱入させて4対2の局面を作り出し、

4人で潮崎豪をメッタ打ちにする。

 

ここで胸がすくような大暴れを見せたのがマサ北宮。

EVIL、裕二郎、SHO、東郷の順にスピアーで吹っ飛ばし、

さらにEVILにサイト―・スープレックスから監獄固め。

師匠のマサ斎藤直伝の大技攻勢で流れを変えた。

 

ここで、潮崎が豪腕ラリアット1発で東郷を沈める。

対抗戦ながら、新日ファンも留飲を下げたのではないか?

 

それしても、北宮のムーブはあらためてマサさんソックリ。

まるでマサさんが一夜だけ天国から舞い降りてきたようにさえ映った。

 

 

第7試合のタッグ戦(金丸&ザックvs丸藤&小川)は、

全員がノア出身という異色の同窓会カード。

 

小川良成とザック・セイバーJr.の師弟対決。

金丸義信と丸藤正道の新旧ノアジュニア・

エース対決と見どころたっぷり。

 

最後は完璧な不知火を決めた丸藤が、

金丸から貫禄勝利を奪っている。

 

なにか、対抗戦とは一線を画すような爽やかな風が吹いた。

ただし、私個人の感覚でいくと…金丸の上手さにシビれたね。

 

ダブルメインイベントⅠはロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン

vs金剛による10人タッグ戦のユニット対決。

 

戦前から舌戦を展開していた両ユニットであったが、

互いを強烈に意識しあっていたのが4選手。

 

 

内藤哲也、鷹木信悟と拳王、中嶋勝彦。

とくに、激しく応戦していたのが、内藤vs中嶋、

内藤vs拳王、鷹木vs中嶋という顔合わせ。

 

この日の最長タイム(26分33秒)となった試合は、

鷹木がラスト・オブ・ザ・ドラゴンで闘龍門同期のタダスケを沈めた。

 

試合後も、収まらない拳王が内藤に迫り、

鷹木と中嶋が一歩もひかずに睨み合う。

 

終わりの始まり。

その言葉がピッタリとくるユニット対決は、

スタート地点に立ったばかりだろう。

 

そして、ファイナルマッチとしてトリを飾ったのが、

オカダ&棚橋vs武藤&清宮という極上タッグマッチ。

 

この試合は、予想をはるかに超えるシビアな闘いとなった。

もとを辿れば、2020年5月に清宮海斗が

「レインメーカーを体感してみたい」と発言したのがはじまり。

 

ただし、その時点では新日本とノアに接点はなかった。

それから歳月を経て、その発言が生かされるカードが組まれたわけだ。

 

オカダ・カズチカvs武藤敬司の初遭遇にも興味津々。

武藤と棚橋弘至の師弟再会マッチも楽しみのひとつ。

 

それでも、このカードのイチバンの見どころは、

清宮がオカダ、棚橋にどこまで食い下がれるか?

あるいは、一気に金星奪取という結果を出せるのか?

そこにあったと思う。

 

 

つまるところ、主役は25歳の清宮なのである。

 

先発は、オカダと清宮。

いきなり清宮が見せた。

オカダのお株を奪うような打点の高いドロップキックを

カウンターで見事にヒットさせた。

 

「これはいけるかも!」

 

ノアファンは大いに期待を抱いたと思う。

もちろん、私のなかでも期待感が膨らんだ。

 

ところが、その後に待っていた現実は厳しいもの。

武藤は武藤で、さすがに要所を締めて見せ場を作る。

それでも、あくまで武藤の存在は清宮のお目付け役のように見えた。

 

極端にいうなら、3対1といっていい試合だった。

 

とくに、清宮に対するオカダの当たりは強烈。

1・4&5東京ドームのIWGPヘビー級選手権、

vs鷹木、vsオスプレイ戦とまったく変わらない厳しい攻め。

 

エルボーバット合戦からエルボースマッシュ(ヨーロピアンアッパーカット)の応酬。

仁王立ちするオカダの1発1発はあまりに厳しい。

それでも何度ダウンしても食らいつく清宮。

 

終盤、武藤の援護を受けて、高角度ジャーマンスープッレクス、

タイガースープッレクスの連発で追い込むシーンもあった。

 

ただし、オカダにはまだまだ余裕がある。

高角度ドロップキック、開脚式ツームストンパイルドライバー、

トドメのレインメーカーという必殺パターンで清宮を仕留めた。

 

 

レインメーカーは強かった。

いや、強すぎた。

 

新日本の象徴たるベルト(IWGP世界ヘビー級王座)を巻き、

日本プロレス界のトップに君臨する男は本当に強かった。

 

大の字に伸びたまま号泣する清宮を見下ろす。

なにかねぎらいの言葉をかけるのかと思いきや、

オカダは追い打ちの罵声を浴びせかけた。

 

「こんなんで泣いてんじゃねーぞ!

帰れ、邪魔だ、オラッ!」

 

悔し涙の止まらない清宮に「泣くな!」と一声かけた

武藤が抱き抱えるようにして退場していった。

 

エンディングはリング中央で並んだオカダと棚橋の両巨頭が、

新日ファン、ノアファンに向けて感謝のマイクパフォーマンス。

 

試合の厳しさ、殺伐感がもう過去のことであるかのような、

いつものノリでしっかりと興行を締めている。

 

見せつけられた現実、

見せつけられた力の差。

 

6年間で培ったキャリアをすべてぶつけていった清宮だったが、

オカダの前ではまるでイチ若手選手のように粉砕されてしまった。

 

だけど、これこそが清宮の望んだことなのだ。

本気のレインメーカーを体感できたのだから。

 

また、オカダも清宮のリクエストに全力で応えたことになる。

本気のレインメーカーを体感させてやったのだから。

 

清宮にとっては、レスラー生活最大の挫折を味わったことになるかもしれない。

だけど、この敗北はかならず彼の財産になる。

 

キャリア6年、25歳の清宮海斗。

真のトップ、真のノアのエースを目指し、

ここから再スタートを切ってほしい。

 

【※写真提供/新日本プロレス】

 

というわけで、今回もまたまた新日本プロレス・オフィシャルスマホサイトで、

1・8横浜アリーナ大会の新日本vsノア対抗戦を総括レポート。

 

新日本の過去と現在進行形、

ノアの過去と現在進行形、

その両方を知る者として総括している。

 

ただ、今回すこしばかりスペシャルなのは、

新日ファンが大多数となるサイトであるからこそ、

あえてノアの選手たちに関する基礎知識を織り込んでみた。

 

ノアは、丸藤、潮崎、中嶋、杉浦貴だけではない。

そういう意味も込めて書いているので、

是非とも読んでみてね!

 

『号外!“GK”金沢克彦の新日本プロレス通信』!

「新日本vsノアは交流戦にあらず。まさに真っ向勝負の対抗戦だった」

1.8横浜アリーナ決戦を大総括!!