東京五輪開催、コロナ禍の影響によって、

昨年、今年と秋開催となった新日本プロレスの

『G1 CLIMAX 31』は、10・21日本武道館で幕を閉じた。

 

                                       ●写真提供/新日本プロレス

 

結果は、オカダ・カズチカが7年ぶり3度目の優勝。

しかも、31回目にして初めてレフェリーストップでの決着という

極めて珍しいエンディングシーンを迎えた。

 

優勝戦に駒を進めたのは、Aブロックから飯伏幸太。

4年連続のファイナル進出にして史上初の3連覇を懸けての出陣。

 

一方のオカダは優勝戦に進出することじたい、7年ぶり。

なぜか、こと『G1』に関しては運から見放されてきた。

 

また、『G1』ばかりではなく、IWGPヘビー級戦線からも

ベルトを失って以来、1年9カ月も同王座から離れている。

 

かつて、「レインメーカーの所有物」と自他ともに認められていた同王座も

いまはインターコンチと統一されてIWGP世界ヘビー級王座に生まれ変わっている。

 

オカダが頂点争いから一歩退いている間に

新日本マットではさまざまな動き、変化があった。

 

プロレス界も例外なくコロナ禍に見舞われるなか、

入場制限とはまたべつに観客動員の落ち込みが目立ってきたこと。

 

ビッグマッチにおけるバッドエンドの連続から、

ファンの批判、不満の声が渦巻きはじめたこと。

 

IWGPヘビーの歴史が封印されて、

インターコンチとの2冠統一王座が誕生したこと。

 

すべての混沌状態を力で制圧し、納得させられる男はレインメーカーしかいない。

この春先から「オカダ待望論」が沸き上がってきたことも事実なのである。

 

飯伏vsオカダの優勝決定戦。

『G1』の頂点を競うに相応しい顔合わせ。

 

過去のシングル戦績は、オカダの3勝2敗ながら、

最初の2戦は飯伏のジュニア時代に行なわれたものだから、

実質五分五分に近い戦績、内容を残しているといっていい。

 

開始から25分まで、素晴らしい攻防が展開された。

中盤では執ようなマネークリップでオカダが追い込んでいたものの、

20分過ぎから大爆発した飯伏がハイキック、カミゴェでフィニッシュを狙う。

 

25分経過のアナウンスがあったところで、

ダウンしたオカダを見て飯伏がむしろ向きにコーナー最上段へ。

「解禁」を予告していた、あのムーブを狙っている。

 

ジュニア時代に切札としていたフェニックススプラッシュへ。

これを反転したオカダが交わすと飯伏は壮絶に自爆。

うつ伏せ状態に倒れ込んだ飯伏は立ち上がることができない。

右手首のあたりを押さえたまま、動けないまま時間が過ぎていく。

 

その状態を確認した海野レフェリーがストップのゴングを要請した。

オカダはといえば、ニュートラルコーナーを背に座り込み憮然とした表情。

不満、不完全燃焼という感情を必死に抑え込んでいる様子。

 

林リングドクター、三澤、菅谷の両トレーナーが駆け込んでくる。

三澤トレーナーが応急処置で飯伏の右肩をはめ込もうとしている。

飯伏は重傷(右肩関節前方脱臼骨折および関節唇損傷=全治2カ月)を負っていた。

 

無表情で勝ち名乗りを受けたオカダだったが、

飯伏の容態を心配して近づいていく。

 

そのオカダに向かって、動くほうの左手で

3本の指をだし、「フォールしてくれ」と訴える飯伏。

オカダがそれをなだめている。

 

リング上ではサードロープが緩められて、

飯伏が退場できるような措置がとられていた。

ようやく正座して顔クシャクシャにしながらオカダに頭を下げる飯伏。

対するオカダは、「またやろう!」とその背中をかるく叩きながら再戦を誓った。

 

                                       ●写真提供/新日本プロレス

 

今回もハッピーエンドとはならなかった。

ただし、決してバッドエンドとはいえない。

むしろ、プロレスの怖さ、危険度がストレートに伝わってきた。

 

プロレスラーは超人、かといって不死身ではない。

飯伏ほどの高い身体能力誇る選手でも、

ときにはエアポケットに陥ることがある。

 

それを証明した格好であろう。

 

固唾を飲んで見守っていた観客も、

飯伏退場の際には大きな拍手でねぎらっていた。

 

では、ここからがオカダの腕の見せどころだろう。

彼の度量と器量が問われるのだ。

 

マイクを持ったオカダは堂々たる優勝宣言。

さらに、ファンへの御礼、新日本を自分がリードしていくこと、

不完全燃焼に終わった飯伏との再戦を誓った。

 

それと同時に爆弾を投下。

 

飯伏が封印、統一化させた4代目IWGPヘビー級ベルトを会社サイドにに要求。

つまり、年明け東京ドームでのIWGP世界ヘビー級王座挑戦権利証の代わりに、

慣れ親しんだ4代目IWGPヘビー級ベルトを象徴として巻きたいということ。

 

これを放送席のゲスト解説で聞いていた鷹木信悟が激高した。

「どこまで上から目線なんだ!」

IWGP世界王者である自分の存在が無視されたのだから当然だろう。

 

オカダがオカダらしくみごとに締めた。

ふたたび、天下を目指して突き進む準備は完了。

ようやく、ふたたび、時は来た!

そんな空気に包まれた日本武道館大会であった。

 

ところで、今大会では休憩時間明けに超サプライズが待っていた。

リング調整、消毒作業が終わり、セミファイナルの8人タッグ戦へ。

 

そう思ったところで、なぜか全身白のコスチュームに身を固めた

ザック・セイバーJr.がテーマ曲のなか入場してきた。

 

つづいて、あの曲が流れる。

「エッ!?」という戸惑いの空気が館内を包むなか、

本当にあの男が入場してきた。

しかも、ハーフパンツながら戦闘スタイルである。

 

                                       ●写真提供/新日本プロレス

 

グラップリングルールによるスペシャルエキジビションマッチを開催するという。

見る側の心の準備が整わないまま開始のゴング。

 

5分間のエキジビションマッチながら、

柴田勝頼は全盛期と変わらぬ動きを披露した。

ザックとはブリティッシュヘビー級王座をめぐってのライバル関係。

 

ザックのブリティッシュレスリングと、

柴田の新日本道場仕込み、さらに総合格闘技で船木誠勝、桜庭和志に師事し、

イギリス遠征で習得したブリティッシュ流を融合させたレスリング。

 

それがみごに噛み合う。

まるで水が流れるような、美しいレスリングだった。

あっという間の5分間、夢のような時間。

しかし、夢ではなかった。

 

「次、このリングに立つときはコスチュームで。以上!」

 

柴田勝頼、復帰宣言。

 

一旦リングを降りた柴田は忘れものをしたかのようにふたたびリングへ。

大きくバンプをとってから、ヘッドスプリングで軽やかに着地した。

 

                                       ●写真提供/新日本プロレス

 

いやはや、マイッタ、やられた。

他のレスラーたちもほとんど知らなかったというサプライズ。

そんな状況なのだから、我々だって知る由もなかった。

 

あの不運な事故(急性硬膜下血腫)から4年半、

いま、柴田が奇跡を起こそうとしている。

 

というわけで、今回も新日本プロレス・オフィシャルスマホサイトにて、

10・21日本武道館『G1 CLIMAX 31』最終戦を大総括!

 

オカダvs飯伏の優勝決定戦、

柴田の電撃復帰デモンストレーションにテーマを絞って検証。

是非、読んでみてね!

 

『号外!“GK”金沢克彦の新日本プロレス通信』!

「レインメーカーの本領発揮。オカダの器の大きさ、懐の深さを見せつけられた」

『G1 CLIMAX 31』優勝決定戦を大総括!!