12月29日、今年の仕事(取材)納めで、

ノアの後楽園ホール大会へ行ってきた。

 

この大会は、『杉浦軍興行 犬ども全員集合!? 杉浦貴デビュー20周年大会』

と銘打たれており、メインイベントとセミファイナルに杉浦軍が大集合した。

 

とにかく今年は例のコロナ禍によって、

会場で取材した回数は極端に少ない。

 

この12月にしても、11日の日本武道館(新日本)、

22日の後楽園ホール(新日本)、26日の後楽園ホール(スターダム)、

そして29日の後楽園ホール(ノア)と4回目。

 

ノアに関しても、コロナ禍での無観客試合がスタートしてから

会場に出向いていないから、今年2度目か3度目の取材になる。

 

しかも、10ヵ月ぶりくらいになるかも?

だから会場入口で検温と受付けをしているときから、

旧知のフロントの人たち、関係者に次々と冷やかされた(笑)。

 

「あっ、なんという珍しい御方が!」

「10年ぶりぐらいですかね?」

「あけましておめとうございます…」

 

かといって、気まずいわけではない。

現ノアのフロント陣、スタッフの皆さんとは

本当に20年、25年、30年といった付き合いになる人たちもいる。

 

ある意味、ツーカーだったりもするのだ。

 

試合はおもしろかった。

第3試合のジュニア6人タッグ戦から火が点いて、

セミ(第5試合)、メイン(第6試合)で大爆発。

 

セミのカードは、潮崎豪&稲村愛輝vs藤田和之&鈴木秀樹。

潮崎と藤田のマッチアップはプロレス大賞ベストバウトを1票差で逃した

3・29後楽園ホール(無観客試合)のGHCヘビー級戦以来となる。

 

 

そこで、また始まった。

リングで対峙した瞬間から、

潮崎と藤田の視殺戦がスタートし、そのまま先発。

 

両者、仁王立ちで睨み合う。

あのGHC戦では31分の睨み合いが伝説と化しているが、

今回も5分弱睨み合って微動だにしないのだ。

 

その両者をそれぞれのパートナーである鈴木と稲村が

強引にタッチして引き離した。

 

潮崎のチョップと藤田のエルボーが交錯し、

意地でも一歩も退かない両者。

 

かと思えば、至近距離からの豪腕ラリアットを

首筋に食らいタフな藤田がもんどりうってダウンする。

 

1発1発がド迫力で、

完全に噛み合っている。

 

稲村の成長度合も著しい。

つい1年前まで藤田のオモチャにされていた男が、

パワーと突進力で堂々と渡り合ってみせたのだ。

 

そんな中、勝負を決めたのは終始冷静だった鈴木。

ビル・ロビンソン直伝の完璧なダブルアームスープレックスから、

そのままガッチリとホールドして稲村からタップを奪った。

 

 

試合後のバックステージでなにやら不穏な空気を醸し出す藤田と鈴木。

 

「おまえ、なんか文句あんのか!」と怒鳴った藤田は、

鈴木に強烈な張り手を叩き込んで、「打ってこい!」。

 

IGF時代の師匠格である藤田にやられても、

動じることなく思いきりエルボーを打ち返した鈴木。

 

1発ずつ殴り合ったあと藤田が握手を求めると、

鈴木をハグして和解(?)した。

 

なんだかよくわからないけど、

この2人からは只者じゃない感がつねに溢れている。

 

メインでは、杉浦軍vs金剛の7vs7イリミネーションマッチが実現。

杉浦貴&桜庭和志&ケンドー・カシン&NOSAWA論外&カズ・ハヤシ&村上和成&中村大介

vs拳王&中嶋勝彦&マサ北宮&征矢学&タダスケ&覇王&仁王……濃いなあ!

 

とくに、杉浦軍は濃すぎる。

試合前、バックステージで久しぶりに再会する選手たちとしばし会話。

 

まず、カズ・ハヤシ。

2000年当時は「カズくん」と呼んでいたけど、

いまは大ベテランだから「カズさん」とつい呼んでしまう。

 

「頼むから、さん付けなんてやめてくださいよ(笑)。

だけど、杉浦軍に入っていま試合が楽しいんですよね」

 

そのあと、超イカツイ男とすれ違った。

平成のテロリストこと村上だ。

 

「うわー村上選手、元気ですか?」

 

「ハイ、元気です。大変ご無沙汰しています」

 

リングでは狂暴でクレイジーなキャラを貫く男は、

ふだんメチャクチャ礼儀正しいし、明るいのだ。

 

当然のように、7対7のリング上は大混乱の様相。

 

スイッチの入った村上と中嶋がボコボコの打撃合戦。

例によって不可解な行動を見せるカシンが、

ボスの杉浦と誤爆を繰り返して、杉浦にクレームをつける。

 

次々と選手が脱落していく中、

残ったのは杉浦軍が杉浦、NOSAWAの2人。

金剛は、中嶋、北宮、征矢の3人。

 

ここでNOSAWAが粘りまくって中嶋を場外心中に持ち込む。

1対2での決着に向けて、主役が闘志向きだし。

 

まず、征矢を一瞬のフランケンシュタイナーで丸め込み3カウント。

北宮との一騎打ちに持ち込むと、両者は延々とショルダータックル合戦。

これがあまりにハードヒットで、単純な攻防でありながら危険な香り。

 

どちらかが怪我をするのではないか?

そう心配になるほどぶつかり合う。

 

北宮が至近距離からゴツンと頭突きをかますと、

さすがの杉浦も膝から崩れ落ちた。

ところが、この一撃で仕掛けたほうの北宮の額がパックリと切れた。

予想以上の大流血に観客もビックリ。

 

しかし、両者引かずに45分が経過。

トドメとなったのは、やはり杉浦のオリンピック予選スラムだった。

 

このイリミネーションマッチでもっとも肉体を酷使した男が、

主役の杉浦だったことだけは間違いない。

 

 

デビューからまる20年となる。

30歳での遅いデビューだったから、いま現在50歳。

 

しかし、強い。

もしかしたら、いまがイチバン強いかもしれない。

 

そう思わせるだけのスタミナ、キレ、破壊力は健在。

だいたい、この身体を見れば一目瞭然だろう。

 

このように杉浦が健在だからこそ、

個性豊かでバラバラに見える杉浦軍のメンバーはそれなりに団結して、

じつにおもしろい試合を披露してくれるのだ。

 

ところで、29日の後楽園ホール大会に出向いた理由はもうひとつあった。

ぶっちゃけプライベートでは友人関係にある藤田、カシンと直接話す用事があったから。

 

大会終了後、知人と一緒に後楽園ホールのビルを出たところで、

10メートルほど先に異様にでかい物体を発見。

 

上下が純白のスポーツウェアで、顔は真っ黒。

その岩のような生き物がドームホテルの方へ移動している。

 

最初は、シロクマが出現したのかと思った(笑)。

そうしたら、同じ獣系だけど藤田和之だった。

 

会場ではあまり話せなかったので、歩きながら会話する。

そういえば、これから杉浦軍の大忘年会が開催される。

しかも、その忘年会までアベマTVで生中継されるという。

 

「カシンと一緒にこれから忘年会の会場に行くところなんですよ。

先輩(カシン)はドームホテルに部屋をとっているので、

いまから迎えに行くところなんです。

金沢さん、今年もいろいろとお世話になりました。

どうぞ、よいお年を!」

 

「じゃあ、カシンにも『よいお年を! またメールするから』って

伝えておいてくれるかな? 今日会うチャンスなかったからね」

 

相変わらず礼儀正しい藤田と今年最後のつもりであいさつ。

ただし、メインで脱落したあと、とっととホテルに戻ってしまったらしい

カシンとはまったく顔を会わせる機会がなかったので、

しょうがないから藤田にメッセージを託して別れた。

 

ところが……。

 

知人と1時間ほど軽く飲んで食事したあと、

大忘年会をやっている店を覗いてみることにした。

 

藤田に訊いたところでは、

私たちが食事した店から徒歩3分ほどの場所。

 

その店先でチラッと中を覗いてみると、顔見知りの映像スタッフにバッタリ。

先ほど中継(収録)が終わったところだという。

 

そこでもうすこし中に入ってみると、藤田、カシン、杉浦、NOSAWAが並んで座り、

飲んだり食べたりしていた。桜庭もいるし、中村もまだいた。

 

カシンにあいさつだけしてすぐ帰ろうと思って近づいていくと、

藤田が席をずらして、「せっかく来たんですから座ってくださいよ! 

すこし飲んでいってくださいよ」という。

 

あらら…と思ううちに藤田とカシンの間に座っていた。

なぜか、私の前に桝酒まで置かれている。

まあ、それから40分くらい、私は杉浦軍の即興メンバーのごとく、

杉浦、カシン、藤田、NOSAWAらとの小忘年会(?)に突入したのであった。

 

これが私にとって、今年唯一の忘年会でもあった。

 

それでは、もうすぐ年が明けますよ。

みなさん、よいお年をお迎えくださいね!!