すっかり取り上げるのが遅くなってしまい申し訳ない。

2月20日、東京・六本木のザ・オークラ東京で行なわれた

『日本プロレス殿堂会』&『日本プロレス殿堂会サポーターズ』

発足会見に関して、その概要をお知らせしておきたい。

 

 

会見には、天龍源一郎、藤波辰爾、長州力が並び、『日本プロレス殿堂会』(NPH=Nippon Puroresu Hall of fame)の設立を発表。プロレスラーの保障面を支援する組織づくり、さらに『殿堂入り式典』の開催も目指している。

事実上、発起人となったのは“二世”たち。天龍の長女である嶋田紋奈さん、藤波の長男であるLEONA、長州の娘婿である池野慎太郎さんが話し合いを重ねた結果、中立支援組織としての『日本プロレス殿堂会』設立に至った。

発足メンバーはそうそうたる顔ぶれとなり、アントニオ猪木、藤波、長州、天龍に加えて故・ジャイアント馬場さんの肖像権を管理する『株式会社H.J.T.Production』も賛同。新日本、全日本、ノア、DRAGON GATE、DDTといった国内主要団体も協力団体として名を連ねている。

今後発足メンバーのほかにも登録選手、元選手を増やしていく方針で、殿堂会入りの可否については推薦に基づく合議で決めていくという。また、猪木、藤波、長州、天龍は殿堂入りしているわけではなく、現状ではあくまで賛同メンバーだということ。

おもにファンから募る“年会費”が殿堂会を支えることになり、『日本プロレス殿堂会サポーターズクラブ』を同時に設立し、あらゆる特別コンテンツが閲覧できる会員制のWEBサイトを開設。ロイヤル会員(年額25000円)、ゴールド会員(年額10000円)、サポーター(月額600円)、法人会員(年額5000円)などの会員ランクに応じて、閲覧・参加できるコンテンツや受けられる特典が異なるという。同時にイベントも開催し、第一弾として今夏に都内で『プロレス展』を開く予定。

これらの収益を、“プロレスラー報酬”として登録選手や管理マネジメント組織に、独自の算出法で永続的に分配していく方式がとられる。事故などやむをえない事情でサポートが必要となったプロレスラーやその家族への支援費、チャリティーの運営費などにも充てられる。

当面は嶋田紋奈さんが代表を務めるルネッサンス株式会社が運営母体となって実行委員会を組織していくが、「10年、20年、30年と続けていくことを考えているので、ゆくゆくはしっかり法人化したい」と嶋田さんは言っている。

また嶋田さんは「私たちの父親たちだけにとどまらず、これまで歴史を刻んでこられた先輩方や、これから引退をされる世代の方にも目を向け、父親たちが人生をかけた生業であるプロレスという業界全体に少しでも貢献ができ、この業界におられる方々とともにすべきことをしていく時期にきたのではないかという考えに至りました。これまでプロレス界を創り、支え、貢献してきた方々を最大限に敬うべきではないのか、選手のセカンドキャリア、第二の人生にも着眼し、その思いを形にしました」と設立に至る趣旨を語っている。

アメリカが発祥の地でありながら、日本で独自の発展を遂げた日本のプロレスを文化として伝承していくことも、活動目的の柱のひとつとなる。そこで英語表記に関しても、『NPH』(Nippon Puroresu Hall of fame)と、あえて“ニッポン”と“プロレス”をローマ字で入れている。

会見に出席した天龍、藤波、長州は二世たちの心意気をバックアップする意向を示したうえで、過去の失敗を例にあげて叱咤激励するなど、含蓄のあるコメントを残している。また、この日77歳を迎えた猪木の『喜寿を祝う会』も、会見場と同じホテルオークラで開かれていたため、会見終了後にはスーパーレジェンドが4人そろい『殿堂会』の成功を祈って「1、2、3、ダァー!」を大合唱した。

☆日本プロレス殿堂会
▼運営
[二世会]嶋田紋奈(天龍プロジェクト代表)
[二世会]LEONA(プロレスラー)
[二世会]池野慎太郎(リキプロ代表、長州の娘婿)
日本プロレス殿堂会実行委員会

▼賛同メンバー
ジャイアント馬場(株式会社H.J.T.Production※故・馬場さんの肖像権を管理)
アントニオ猪木
藤波辰爾
長州力
天龍源一郎

▼特別協力
東京スポーツ新聞社
週刊プロレス
株式会社ブロンコス
ニコニコプロレスチャンネル

▼協力団体
新日本プロレス
全日本プロレス
大日本プロレス
DDT
DRAGON GATE
プロレスリング・ノア
2AW
WRESTLE-1

▼日本プロレス殿堂会サポーターズクラブWEBサイト
https://nippon-puroresu-hof.com

ロイヤル会員

■年会費:25,000円(税別)※別途事務手数料800円(税別)
■有効期限:12ヶ月

ゴールド会員

■年会費:15,000円(税別)※別途事務手数料800円(税別)
■有効期限:12ヶ月

サポーター

■月会費:600円(税別)
■有効期限:1ヶ月

法人会員

■会費:一口/50,000円(税別)※別途事務手数料800円(税別)
■有効期限:6ヶ月

以上が、『日本プロレス殿堂会』発足会見の概要をまとめたもの。

私は仕事の都合で、残念ながら記者会見の場に足を運ぶことができなかった。ただし、さまざまな媒体に目を通して感じたことがある。今回の”二世会”による行動は勇気あるものであり英断だと思う。どこか特定の団体が主導となり、協会や、コミッションを作ろうとした例は過去に何度かある。ライセンス制度が話し合われたこともあった。

ただし、ことごとく構想半ばで挫折、あるいは自然消滅という憂き目にあっている。その一番の要因は、構想を打ち出すまではよかったものの、結局、自団体の運営に四苦八苦して、そちらを守ることを優先せざるを得なかったから。

その点でいくと、今回は団体主導ではないし、興行を目的としたものではないというのが一番の特長。だから、レジェンドの超大物たちが賛同メンバーに名を連ねているし、協賛団体も偏ることなく、独走している新日本プロレスさえもしっかりと協力の意向を示したのだと思う。

なによりも、殿堂会の資金面をファン(サポーターズ)に募るという発想が斬新で素晴らしい。つまりファンの後押しを得て、華やかでありながら死と隣り合わせといっても過言ではない過酷な職業であるプロレスラーをサポートしていくということ。

会見では具体的な名前は出てこなかったが、例えば高山善廣選手(以下、高山)の場合などその最たる例だろう。彼が大怪我を負ったリングがDDTのリングであったこと、また親友に鈴木みのるという男がいたこと。それが不幸中の幸いであったと思うのだ。

高山は所属選手ではないものの、試合契約をしてDDTに上がっていた。そこで怪我を負ったことから、常識人であり企業人でもある高木三四郎社長は全力でケアに動いたし、フリーの鈴木みのるも行動を起こした。もし、鈴木がフリーではなく新日本所属レスラーであったとしたら、やはり行動に制限が掛かってしまうからだ。

DDT高木社長と鈴木が声を大にして支援を呼びかけたからこそ、各団体で高山支援募金活動が行なわれたし、特別興行の『TKAYAMANIA』には団体の垣根を越えて多くの選手たちが参戦してきた。

つまり、『殿堂会』とは、そういう有事の際に動ける組織でありたいーー。そのような発想から生まれたところもあると思うのだ。嶋田紋奈さん、LEONA、池野慎太郎さんの二世会には是非とも頑張ってもらいたい。

そういえば、会見翌日の2月21日付けの読売新聞朝刊では、今回の『日本プロレス殿堂会』発足のニュースをスポーツ面で扱っていた。風は吹いているし、プロレス界もそういう時代の分岐点に差し掛かっているのかもしれない。

いま現在、新型コロナウィルスの集団感染を危惧して、新日本プロレスをはじめ各団体が興行中止を迫られている。率直にいうなら、貯えのある新日本は心配ないかもしれないが、インディー団体などにとって興行中止→キャンセル料支払いは、まさに死活問題となるだろう。

そういうことにまで考えが及んだとき、やはり、『日本プロレス殿堂会』が発足したこと、そして殿堂会が果たすべき役割は本当に大きいと思う。