1990年代の新日本プロレスにおいて、

反体制派ユニットとして約7年もの長きにわたり、

突っ走りつづけた反選手会同盟→平成維震軍。

 

決して主流を征くトップ選手たちが集ったわけではなかった。

むしろ窓際と言われかねない立場にいた男たちと、

空手家による潰し合いがスタート地点だった。

 

団体の垣根も超えて明日なき闘いを繰り広げる男たちは、

いつの間にか新日本マットの主役となり、

新日本隊とは一線を画し独立興行まで打つようになった。

 

リーダーである越中詩郎の生きざまそのものを投影するかのように、

泥くさく闘う姿は多くのファンの共感を呼んだ。

 

1999年2月に解散宣言をしてから、21年の歳月が流れた。

ところが、今でも武藤敬司が主宰する『プロレスリング・マスターズ』に

当時のメンバーが集結すると、ファンは大歓声で彼らを迎え入れる。

 

平成維震軍の歴史をメンバーに語ってもらうと、

90年代の新日本マットの状況が裏も表も見えてくる。

 

また、全日本プロレス出身の越中だからこそ、

同じく全日本、SWS、WARと渡り歩いたザ・グレート・カブキだからこそ、

2人の言葉から馬場体制・全日本プロレスの裏側も見えてくるのだ。

 

日本マット界にムーブメントを巻き起こした平成維震軍。

越中詩郎、小林邦昭、木村健悟、ザ・グレート・カブキ、青柳政司、

齋藤彰俊、AKIRA(野上彰)の7名が当時のすべてを語っている。

 

 

……と、なんとなくドキュメンタリーチックに書いてみたのだが、

このたび平成維震軍完全本といっていい書籍が刊行された。

 

平成維震軍 「覇」道に生きた男たち

 

いいねえ。

昔の東映映画のポスターっぽい。

表紙カバーからして維震軍らしさ全開。

 

残念ながら諸事情により後藤達俊、小原道由は参加できなかったようだが、

この7人の言葉だけで濃すぎるくらいに存分に濃いから大丈夫!

 

読み物としてかなり興味深い一冊となった。

90年代の新日本、そして維震軍とは何ものなのか?

それをまったく知らないビギナーファンの方でも、

この一冊を読破すれば、90年代の新日本の空気を感じ取ることができるだろう。

 

意外なのは、7年のうち僅か2年余ほどしか在籍していなかった

AKIRAの章がかなり面白いことだ。

 

本当に正直にストレートに、いっさい自分を飾ることなく、

彼が味わった挫折であったり、当時の新日本の状況であったり、

またAKIRA自身が考えるプロレス観などまで垣間見えてくる。

 

今回、かつて”越中番”であり、結果的に”平成維震軍”の名付け親となった

ワタクシ金沢も依頼を受けて編集に協力させてもらった。

 

「本気で天龍さんのところに乗り込むから!

金沢クン、ぜひ俺に協力してください」

 

1992年8月16日、福岡国際センター。

いまでも、この言葉は耳底に焼き付いている。

越中にそう言われた瞬間、私も腹を決めたのだ。

 

だから、平成維震軍への思い入れは強い。

コッテコテにおススメの一冊なのです。

  • 単行本(ソフトカバー): 280ページ
  • 出版社: 辰巳出版 (2020/1/23)
  • 定価:2000円+税