ブシロード体制になってから最初のビッグマッチとなった

スターダムの12・24後楽園ホール大会を取材した。

 

私的な話をすれば、ブシロード体制になったことに興味を抱いたから

会場に足を運んだわけではなく、スターダムに関しては5年ほど前から

できるだけ後楽園ホール大会には取材に出向くようにしている。

 

目的は、ぶっちゃけて言うなら紫雷イオの試合を観るためだった。

飛びぬけた運動神経で女子プロ界のトップに躍り出たイオが、

レスラーとして人間として成長していく姿を見ることが楽しかった。

 

なによりイオの試合内容の進化には毎回感心させられたし、

彼女であれば、「新日本ジュニアに参戦しても通用する!」

と私は本気で思っていたのだ。

 

そんなイオが昨年6月の試合をもってスターダムを卒業。

満を持してWWE(NXT)に入団した。

また、ひと足早く宝城カイリ(カイリ・セイン)も

2017年6月、WWEと契約しスターダムを卒業している。

 

正直、イオの抜けたスターダムに以前ほどの魅力を

感じなくなっていたのは事実である。

 

それでも、否応なく時間は過ぎていくし、

時代はかならず新たなスターを生み出す。

そのタイミングが、今回たまたま新体制スターダムの

船出と重なったような気がする。

 

セミファイナルのワンダー・オブ・スターダム選手権、

星輝ありさvs小波による白いベルト争奪戦。

 

メインイベントのワールド・オブ・スターダム選手権、

岩谷麻優vs花月の2試合はまずハズすことがない。

 

 

予想通り、スターダムらしい激しい闘いの末、

それぞれ王者が防衛に成功した。

 

イオ、カイリとともにスターダム3人娘と称されてきた岩谷。

ただ、天然すぎる性格のせいか(?)、なかなか真のトップに立つことができなかった。

今年は女子プロ大賞も獲得し、ようやくそれらしい風格も出てきたところ。

 

一方、メインで敗れた花月は翌25日、来年の1・26大阪大会をもって退団。

自主興行となる2・24大阪大会で引退試合を行なうことを発表している。

 

 

もちろん、これはスターダムが新体制に移行したこととは別件であり、

花月自身が1年半ほど前から考えていたビジョンだという。

それにしても、イオが去ったあと、トップの証である赤いベルトを巻いて

スターダムの底上げに尽力した花月の引退にも時代の流れを感じずにはいられない。

 

 

今回、もっとも注目されていたカード、

マスコミ間では裏メインと呼ばれていたのが、

セミ前の第4試合に組まれた木村花vsジュリアの遺恨対決だった。

 

いまさら説明するまでもなく、スターダムがブシロード傘下に入る

正式会見が行なわれるのと前後して、ジュリアはアイスリボンを電撃退団。

 

スターダムと選手契約を交わしている。

その一件からジュリアはお騒がせ女などとも呼ばれていたが、

そこに噛みついたのが木村花だった。

 

「あんたのせいでみんなが同じに思われる。

このリングにハーフは2人いらないんだよ!」

 

そこから両選手の遺恨闘争がスタートするわけだが、

いま思えばこの出会い、タイミングも運命的なものだったのかもしれない。

 

木村花はキャリア3年9カ月。

ご存知、木村響子の実娘で身長164㎝、センス、スタイルは抜群。

156㎝のイオが「花のスタイルが羨ましい」と言っていたこともある。

 

一方のジュリアは、162㎝。

キャリアはまだ2年2カ月。

私自身、じつはジュリアの試合を生で観たことがなかった。

 

彼女の存在を知ったのは、練習生からデビューまでのドキュメントを観たときから。

2017年11月に放送されたフジテレビ系の『オンナたちの分岐点』という番組だった。

 

たしか、新日本の11・8広島大会のときだったと思う。

スターダムのコーチを務めることになったミラノ先生(ミラノ・コレクションA.T.)に、

ジュリアの印象を聞いてみたとき、こんな回答をもらった。

 

「2年だから技術的にはもうすこし時間が必要でしょうね。

だけど、ビックリしたのはもの凄く気持ちが強いんです!」

 

なるほどなあ。

その言葉がずっと頭に残っていた。

 

はたして、素晴らしい試合……

いや、闘いが展開された。

 

                                           ●写真提供/スターダム

 

この入場の写真を見れば、すべてが伝わってくるかもしれない。

先に入場したジュリアは緊張しているのか、表情が硬かった。

 

しかし、花がド派手な入場でアピールしている瞬間この表情。

すでに戦闘モードに入っているのがわかる。

 

ゴングと同時に、2人が弾けた。

ボッコボコのエルボー合戦。

花がマウントポジションからエルボーを打ちこめば、

ジュリアは二段蹴りから場外戦で花をメッタ打ち。

 

中盤には、音が聞こえてきそうなヘッドバット合戦。

無論、ラフな攻防だけではなく、互いに固め技、投げ技と

的確に決めていくし、受身もしっかりとっている。

 

15分間、全力疾走のフルタイムドロー。

それでも向かっていく両選手をセコンド陣が引き離した。

にらみ合いながらもグータッチで再戦を誓った両選手。

 

いやあ、ヤバイ。

ヤバイほどおもしろい。

これなら初めて女子プロを観た観客にも存分に伝わったことだろう。

 

 

試合後のバックステージ。

コメントの内容云々よりも、両選手ともまったく息が上がっていなかった。

そこに驚いたし、試合の凄みがさらに増したように思えた。

 

技術だけなら、2人を上まわる選手は何人もいるだろう。

ただし、この日にかぎっていえば、

凄まじい気迫と醸し出すオーラは他の追随を許さなかった。

 

 

ひとことでいえば、カッコいい。

すべてがクールなのだ。

ジュリアの加入は明らかに劇薬となった。

 

結果、これまでのスターダムとは一戦を画す異色の闘いが日の目を見た。

こういう試合なら、女性ファンもついてくるのではないか?

女性ファンだって、カッコいい女には憧れを抱くものだ。

 

奇しくも、新体制スターダム第1弾で披露された新時代を予感させる闘い。

当然、ここにはあの選手も絡んでこなければいけない。

 

 

セミで白いベルトの防衛に成功した星輝に挑戦を表明した林下詩美である。

林下は2年目のジンクスではないだろうけど、今年は怪我に泣かされた。

166㎝の大型ルーキーも、ポテンシャルは抜群。

さらに大化けする可能性を秘めている。

 

そして、新日本プロレスの1・4東京ドームのダークマッチ。

岩谷麻優&星輝ありさvs木村花&ジュリアという注目カードがマッチメイクされた。

 

現スターダムと、未来の女子プロレスを

日本マット界最高の舞台でファンに見せつけることができるか?

 

紫雷イオの一強時代を経て、

スターダムの新時代が始まりそうな予感がしてきた。