「雪の札幌では何かが起こる」につづいて、

2・11大阪大会(エディオンアリーナ大阪)でも大波乱。

 

まず、第1試合の6人タッグで引退を間近に控えた飯塚高史と対したのが、

かつて飯塚と”友情タッグ”を結成していながら試合中に裏切られた天山。

 

あの事件が起こったのも、この大阪府立のリング上だった。

2008年4月27日の出来事。

ちなみに、私は山崎一夫さんと並んで放送席に座っていたが、

飯塚の突然の裏切り→GBHへの寝返りを目の当たりにビックリ。

 

というのも、天山&飯塚の友情タッグは当時話題の中心となっていて、

その大阪決戦直前に”友情タッグTシャツ”が発売されたばかりだった。

 

大会前日に闘魂ショップ大阪店(当時)で2人のサイン入りTシャッツ販売が行なわれ、

大会当日の試合前にも、2人が並んでTシャッツ購入者にサインを入れていた。

 

 

その超レアなサイン入りの一枚を着用して天山が入場してきた。

なんでも群馬県在住の天山ファンが、天山のために送ってくれたという。

 

飯塚、これを見て思い出せ! 目を覚ませ!

という天山の最後の願いがTシャッツに込められていた。

 

ところが…やはり飯塚は飯塚だった。

最初から最後まで怨念坊主の暴走キャラを崩すことがない。

パイプイスを天山に叩き込んで反則負け。

さらにアイアンフィンガーフロムヘルで一撃。

 

 

さらに、超レアもののサイン入り”友情タッグTシャッツ”を

鈴木みのるとともに引き裂いてしまった。

 

今回、個人的にワタクシ金沢も友情タッグTシャッツの捜索(?)に協力していたから、これには呆然。

群馬のファンのかた、本当に申しわけない…😢

 

さて、飯塚の引退試合(2・21後楽園ホール)のカードは、

飯塚&鈴木&タイチvsオカダ&天山&矢野と決定。

果たして、どんな展開、結末が待ち受けているのか?

 

第4試合終了後には、欠場中の飯伏幸太がサプライズで登場。

今後も新日本マットで闘っていくこと、

『NEW JAPAN CUP』からリングに復帰することを発表。

 

大阪ファンの大歓声を浴びた。

新団体AEWと契約したケニー・オメガが事実上、新日本を離脱した格好となり

飯伏の去就も注目の的であったが、これで一安心。

 

そう、飯伏にはやらなければならないことが山ほどある。

NEVER無差別級王者・オスプレイへのリベンジ、『G1』初制覇、

IWGPヘビー級王座初戴冠…などなど。

もちろん、それらをイチバンわかっているのは飯伏本人だろう。

 

IWGPジュニアヘビー級選手権、石森太二vs田口隆祐戦は、

予想以上の白熱戦となり館内が爆発した。

 

再生”をテーマに掲げ真面目に闘うことを宣言した田口が、

なんと石森にとって”黒歴史”とも言われるセーラーボーイズ(石森&佐藤兄弟)

ふうのコスチュームで登場し、セーラーボーイズのダンスパフォーマンスまで披露。

対する石森も、本家のダンスでお返ししてみせる。

 

そういったトッピングもありながら、試合そのものは

田口の実力者ぶりが遺憾なく発揮されていた。

Ⅴ1を達成した石森が次期挑戦者にライガーを指名すると、

ライガーは「オマエ、後悔するぞ、坊主!」と石森をボウズ扱い。

マイクを使った前哨戦では、ライガーの圧勝に終わった感がある。

 

セミファイナルでは、”天敵”バッドラック・ファレオカダ・カズチカがどう攻略するかが見どころ。

過去のIWGP戦ではジャーマンスープレックスからレインメーカーにつなげているが、

今回はカウンターのローリングラリアットからレインメーカーで沈めた。

 

無冠となって、はや8ヵ月。

4年ぶりの『NJC』参加からオカダの逆襲がはじまる。

 

メインはIWGPヘビー級選手権

ROH遠征から凱旋して1年余、ケニー・オメガからUSヘビー級王座を奪取し、

オカダには2戦2勝、棚橋に1勝2敗としっかりと結果を残してきたジェイ・ホワイト

IWGPヘビー初挑戦となる相手は、苦闘の末に新章をスタートさせた棚橋弘至

 

昨年、『G1』制覇により大復活して、1・4東京ドーム・IWGP挑戦権利証マッチでは、

オカダ、ジェイを連破し、『プロレス大賞』MVPを獲得。

さらに、1・4東京ドームでのケニーとのイデオロギー闘争を制して王者に返り咲いた。

 

この一戦に関しては、戦前から7年前の大阪大会がクローズアップされていた。

2012年2月12日、Ⅴ11のIWGP防衛レコードを持つ棚橋にオカダが初挑戦。

24歳のオカダが見事に一発で最高峰のベルトを奪取した。

それが「レインメーカーショック」としていまも語り継がれているのだ。

 

王者が棚橋、場所は2月の大阪府立。

レインメーカーショックならぬ「スイッチブレイドショック」は起こり得るのか?

ただし、当時のオカダは凱旋1ヵ月余での挑戦であったが、

ジェイはすでに実績を残している点がまったく違う。

 

 

それでも、ファン心理からいくと、棚橋が敗れる姿など想像もできなかったろう。

ところが、ジェイは強かった。

キャリア6年とは信じがたいインサイドワークを駆使して、

棚橋の爆弾箇所である右膝を狙い撃ちにする。

 

対する棚橋も、足殺しから勝負にいくのが必勝パターン。

ジェイの右膝、左膝と交互に攻めていく。

 

 

しかし、ラッシュしようとすると、ジェイが間を外す。

場外にエスケープしたり、ロープ際、コーナーでへたり込み、

棚橋ペースを許さないのだ。

 

まるで、全盛期のNWA世界王者スタイルのレスリングに見えてくる。

ジャック・ブリスコ、ハーリー・レイス、リック・フレアーなどにダブって映るのだ。

パワーが飛びぬけているわけでない、空中戦が得意なわけではない、

それでも終わってみれば王者の腰にベルトが戻っている。

 

いわゆる現代プロレス、アスリートプロレスと称される

派手で危険技を惜し気もなく繰り出すスタイルとは一線を画しているのがジェイ。

 

ベビーフェイス、ヒールという立場を超えていうなら、

棚橋のレスリングに共通するものさえ感じさせる。

 

飛べないのではなくて、飛ばない。

卓越したレスリング技術を持っていながら、

すべて姑息にヒールっぽく見せていく。

 

日本人選手に例えるなら、やはり蝶野正洋に似ている。

蝶野だって運動神経はいいからなんでもできた。

ドロップキックも上手かったし、ニールキックもできた。

プランチャやトぺだってやれたのだ。

 

だけど、武藤敬司がいるからドロップキックやプランチャは出さなくなったし、

橋本真也の十八番だからニールキックも半ば封印した。

そして、打撃では正面からのケンカキックを多発し、

フィニッシュには密着してのSTF、バタフライロックを使っていた。

 

こういう個性の見せ方を心得ていたからこそ、

闘魂三銃士はみんな成功したのである。

 

棚橋vsジェイは、サイコロジーの闘いでもあった。

30分を超える試合の幕切れは唐突に訪れた。

 

ハイフライアタックをサイドステップで交わしたジェイが、

そのまま棚橋を捕えてブレードランナー。

一撃でベルトを奪取してのけた。

 

 

ここ最近のIWGPヘビー級選手権の攻防、また危険な大技へのアンチテーゼ。

それを実際に見せつけられたような闘い模様だった。

だからこそ、観客にも戸惑いがあったのではないだろうか?

 

まさかの王座転落。

イデオロギー闘争ではなく、世代闘争に敗れた棚橋。

だから、右膝もそうだが、精神的ダメージも大きいだろう。

 

一方のジェイは、勝って当然とばかりにマイクアピール。

さらにバックステージでも、一夜明け会見でも、

よどみなくヒールっぷり全開の言葉で自分の時代を主張した。

 

 

New Era(新時代)へ、ようこそ!

 

原点回帰のクラシカルレスリングを

現代プロレスにアレンジして闘う男がジェイ・ホワイト。

 

ファンに媚びない、誰にもなびかない。

確かに、新時代が始まったのかもしれない。

 

今大会に関しても、新日本プロレス・オフィシャルスマホサイトの

不定期連載コラムで書かせてもらった。

 

とくに今回はメインのみにテーマを絞って、

ジェイ・ホワイトという男を分析・検証してみた。

 

『号外!“GK”金沢克彦の新日本プロレス通信』!

「 “得体の知れない可能性を秘めた男”ジェイ・ホワイトとは何者か?

 2.11大阪大会を大総括!!」https://www.njpw.co.jp/185824

 

とくに、2・11大阪大会の結末を消化しきれない方には、

ぜひとも読んでいただきたいと思う。