すこし時間が経ってしまったけれど、

14日、スターダムの後楽園ホール大会を取材してきたので、

スターダムのことを書いてみたい。

 

じつは昨年度の最終戦となった

12・24後楽園ホール大会にも足を運んでいる。

 

気になる選手が2人いたからだ。

 

1人は東スポ『プロレス大賞』新人賞に選出された林下詩美

”ビッグダディ”の三女であるビッグルーキーの試合を

まだ生でこの目では見ていなかったから。

 

8月12日にデビューしたばかりで20歳の林下。

11・23後楽園ホールでは、渡辺桃とのコンビでジャングル叫女&刀羅ナツコを破り

ゴッデス・オブ・スターダム王者となっている。

 

12・24ホール大会ではその初防衛戦。

メインで鹿島沙希&中野たむの挑戦を受け、

林下が鹿島をフォールして初防衛に成功した。

 

 

正直、予想以上のルーキーだった。

柔道(初段)のベースがあるから下半身が強い、

すなわち体幹の強さが新人離れしている。

 

166㎝、65㎏と体格も理想的。

 

無論、まだリングでのポジションのとり方など、

細かい面までみれば課題はある。

ただし、それを補って余りあるパワーが垣間見えた。

 

フィニッシャーは、トーチャーラックボム

つまり、アルゼンチン・バックブリーカーからパワーボムのように叩き落とす投げ技。

この1発で動けなくなってしまった鹿島は、結局テーブルに乗せられて退場した。

 

決して危険な落とし方をしたわけではない。

基本通りだった。

それでも鹿島は受身をとり切れず後頭部をマットに強打してしまった。

 

林下のパワーが頭抜けていることと、

体格差がもろに出てしまったのだ。

 

 

面構えもいいねえ。

言ってみれば、老舗の全女から続く女子プロの伝統的なスターフェイス。

 

それから、1ヵ月も経たないうちに林下はさらに進化していた。

今年に入って、1・3新木場大会でスターライト・キッドを破って、

第2代フューチャー・オブ・スターダム王者となり、

14日には、バイパーの保持するSWA世界&EVEインターナショナルの二冠に挑戦。

 

いくらなんでも、バイパー相手では厳しいだろうと思ったし、

実際に100㎏あるバイパーの重さに苦しめられた。

 

何度も何度も圧し潰され、

トーチャーラックボムも崩れてしまう。

 

それでも執拗なスリーパーホールドから逆落とし。

最後は、完璧なジャーマンスープレックスホールドで決めてしまった。

バイパーをここまで綺麗なジャーマンで投げた選手は紫雷イオ以来かも。

イオの場合、クロスアーム式ジャーマンだったと記憶しているが。

 

 

いやはや、デビューから5ヵ月で4冠王になってしまった。

驚異的だ。

 

もちろん、会社サイドのプッシュはある。

だけど、それに十二分に応えてしまうのだから

文句のつけようもない。

 

もともとプロレスファンで新日本プロレスを中心に

男子のプロレスをずっと観てきたという林下。

 

プロレスが好きなんだろうなあ。

苦しいけど、楽しんでいるんだろうなあ。

そういう部分も試合を観ていると伝わってくる。

 

詩美を迎え入れた女子プロ界、

とくにロッシー小川社長の責任は重大だなあ(笑)。

 

一転して、もうひとり注目していたのが、

ジャングル叫女の存在だった。

 

いったい叫女はどうしてしまったのだろう?

すくなくとも2年ほど前までポスト・イオ、

ポスト3人娘(イオ、宝城カイリ、岩谷麻優)と

目されていたのは叫女だったと思う。

 

おそらく、関係者、ファンも総じてそういう目で叫女を見ていた。

もともと、叫女こそがビッグルーキーだった。

 

大卒で2年社会人の経験がある叫女は、

デビューが24歳と周囲に比較すると年長デビューとなる。

それでも入門から3ヵ月でのスピードデビュー戦。

しかも1年先輩の渡辺桃から勝利を収めているのだ。

 

ところが昨年5月、明らかに結果として桃に先を越された。

すでに米国WWE行きが内定していたイオの

白いベルトワンダー・オブ・スターダム王座)に挑戦したのは桃で、

難攻不落のイオを倒し、最高のカタチでイオに恩返しをしてみせたのだ。

 

現在27歳で、キャリア3年2ヵ月。

もちろん、イチバン焦りを感じているのは叫女自身だろう。

 

だから、14日の後楽園ホールで花月の保持する

最高峰の赤いベルトワールド・オブ・スターダム王座)への挑戦を

最後のチャンス」と言って自分自身を追い込んだ。

 

過去、白いベルトに3度挑戦したが3連敗。

赤いベルトには初挑戦となる。

 

それと同時に、こうも言った。

 

人生は変わるときは一瞬です。

すこしずつ物事がよくなるなんてない。

そのとき来たチャンスを掴めるかどうかだと思ってます

 

結果的に、21分37秒で叫女は敗れた。

花月の大江戸コースターからのデスバレーボムに沈んだ。

一瞬にして、人生を変えることはできなかった。

 

試合を観ていて正直な感想を言うなら…

叫女への声援が以前より少なくなったなあということ。

それは現状での観客の期待感をそのまま表しているのだろう。

 

ただし、終盤のラッシュはよかった。

右腕を徹底的に狙われながら、ラリアットの乱れ打ち。

超飛距離のダイビング・ボディプレス。

 

花月のウラカンラナを堪えてパワーボム。

キックアウトされてもそのままライガーボムへ。

 

このムチャクチャなまでのパワーラッシュがジャングル叫女の真骨頂。

その本来の姿を最後に垣間見ることができたし、

その時間帯に後楽園ホールはイチバン盛り上がった。

 

人生は一瞬で変わる。

それは、つまりターニングポイントをさす。

 

イオは、2013年4月愛川ゆず季の引退興行(両国国技館)で、

赤いベルトを初奪取して、ゆずポンと入れ替わるカタチでスターダムを背負った。

そこからプロレス人生が変わった。

 

もっと言うなら、その1年前に例の冤罪事件に巻き込まれて

一瞬にして人生のどん底を味わってもいる。

 

カイリ・セインこと宝城カイリは、

2015年3月、イオを破って赤いベルト初戴冠

同年6月、引分けながら里村明衣子を相手に2度目の防衛。

 

このへんからカイリのプロレス人生は激しく動きはじめた。

 

イオは22歳、キャリア6年

カイリは26歳、キャリア3年2ヵ月

 

2人の人生が変わったのはその年代、そのキャリア。

そして、なによりも大切なのは、そこから2人が進化しつづけたこと。

 

立場は人を変える。

その言葉通りに、実績を積んで底力を磨いていった。

 

 

叫女は、27歳、キャリア3年2ヵ月。

人生を一瞬で変えるのはこれからだし、

その後には立場は人を変えることも経験していかなくてはいけないのだ。

 

ジャングル叫女は終わった?

 

とんでもない。

まだ、始まってすらいないのだから。

 

【おまけ】

今年の正月シリーズにイギリスから初来日した選手が、とんでもない!

「とんでもない」って、いい意味でとんでもなく、飛んでいるのだ(スマン!)。

 

セイディ・ギブス。

 

初来日だからプロフィールはよくわからないのだが、

驚くべきハイフライヤーだった。

 

見た目はマッチョで頑丈そうなパワーファイター系。

ところが、空中戦となるとまるでウィル・オスプレイの女版だ。

 

 

これが、1・3新木場で披露したサスケスペシャル。

オフィシャルから借りました。

 

1・14後楽園ホール大会ではさらに高難度の空中戦を見事に成功させている。

トルニージョ式サスケスペシャル

 

 

あのさぁ、リング上でバック転してから、

こうやってトップロープを超えてひねりまくるのだよ。

しかも、このリングは大日本プロレスのリング。

つまり、男子プロ用だからトップロープも高い。

 

ロッシー社長は、「世界は広いねえ」と

してやったりの笑みを浮かべていた。

 

現在、新日本プロレスの『CMLL FANTSTICA MANIA 2019』が絶賛開催中だが、

こちらのセイディ・ギブスも要注目なのであーるクラッカー