11月3日、韓国・テジョン チュンム体育館で開催された
総合格闘技大会『ROAD FC 50』のセミファイナルに出場した藤田和之が、
同じく48歳、韓国MMA界のレジェンドであるチェ・ムベと初めて拳を交えた。
ここまで藤田はROAD FC2連勝と復活の兆しを見せつけてきた。
今回の相手、ムベに対しては特別な思い入れを抱いていたという。
「彼とは同い年で、アマチュア時代の歴史も被っているんです。
僕はアトランタ五輪を目指してナショナルチームにいたし、
彼はグレコの選手で一階級上なんだけど韓国ナショナルチームにいた。
その後、PRIDEのリングに上がったところも共通しているのでね」
今回も藤田はそうとう自分を追い込んで試合に挑んだという。
「10月アタマから1ヵ月ほど、ロスのマルコ・ファスのところ(ビバリーヒルズ柔術クラブ)へ行っていました。
ケンドー・カシンやマルコにはさんざんケツを叩かれていましたからね。
練習しないで勝てるわけがないだろ!って(苦笑)。
家族も一緒に行って練習漬けですよ。
やっぱり、練習は嘘をつかないって身に沁みましたねえ。
もう、身体の反応が違うし、パンチ1発1発に腰が入る。
僕なんか蹴りは使わないでしょ?
だけど、スパーリングしていてそういう間になると勝手に足が動いて蹴りも出る。
まあ、不格好でローキックなんて呼べるものじゃないんですけどね(笑)」
まさに、その言葉通りでコンディションの出来上がった藤田は、
圧倒的な強さを見せつけた。
開始早々の両足タックルはムベに切られたものの、
前へ前へと出てムベに圧力をかけていく。
首相撲からショートアッパーを連打。
とにかく動きにキレがあって止まらない。
ケージ際まで後退したムベに必殺の右フック。
「こするような感じだった」というが、ムベの腰が落ちる。
ここで勝負を急ぐことなく、ふたたび距離をとって打ち合う。
ムベの左フックもヒットしたが、その直後の一撃が強烈だった。
藤田の左のショートフックが完全に顎を捉えてムベはダウン。
亀の状態になったムベにパウンドを連打したところで、
レフェリーが試合をストップ。
1ラウンド、1分55秒、TKO勝ち。
圧勝だった。
「練習の成果がそのまま出て、おかげさまで結果を出すことができました。
今年は、これで仕事納めですね。次の予定は、未定ということで……(笑)」
試合終了後、すぐにムベに駆け寄った藤田は、
ムベを介抱しながら何事か話しかけ会心の表情で相手を称えた。
それからテレビカメラに向かって、
「まだまだオレたちできんだよ! 見てたろ、オイ‼」と吠えた。
見てたぞ、オイ!
さらに、「倒れても、オレたちは闘いつづける!」とシャウト。
紛れもなく、やるかやられるかのMMAの闘い。
それでいながら、こういうセリフが飛び出してくるところに、
藤田和之のプロレスラー魂を感じてしまうのだ。
野獣、凄玉、藤田和之、48歳。
MMAでもプロレスのリングでも、
まだまだこの男の闘いを見てみたい。
【おまけ】
じつは藤田が人気ドラマに準主役としてゲスト出演していた。
10月4日から、TOKYO MX、BS11、ファミリー劇場(CS)などで
放送開始となった『神ノ牙‐JINGA‐』のエピソード3にゲスト出演。
撮影したのは、7月中旬のことで、
藤田自身がメールでそのことを教えてくれたのが10月10日前後。
放送が終わってから知らせてくるのが、いかにも藤田らしい(笑)。
『神ノ牙‐JINGA‐』は、マニア人気を誇る特撮ドラマで、
魔戒騎士がホラーに憑依された人間を退治するというのが大まかなストーリー。
そこで、藤田は暴漢に妻子を殺された元プロレスラーで、
ホラーに憑依された男・石田を演じている。
残念ながら映像は観ていないのだが、
ネット上におけるエピソード3の評判は上々だ。
再放送、DVD化などのチャンスがあれば、
ぜひとも藤田の演技を観てみたいところ。
ただでさえ、ド迫力の藤田がホラー化したというなら、
この数倍は怖いメイクに出来上がっているのだろうなあ(笑)。