4・9両国国技館大会。

チケット完売で、観衆は1万231人(超満員札止め)。

メインイベントは、IWGPヘビー級選手権。

オカダ・カズチカvs柴田勝頼。

 

「男の根性、見せてやる!」

「生まれたときから、俺は新日本プロレス」

 

この柴田発言がキーワードとなり、

今回の両国への期待感は何倍にも膨れ上がった。

 

 

実際に試合は、根性比べの真っ向勝負。

38分09秒の大死闘となった。

勝者・オカダも、敗れた柴田もしばし大の字。

 

ようやく起き上がった柴田は、

若手選手が肩を貸そうとするのを拒否し、

ふらつく足取りで入退場口の花道を下がっていった。

 

いつまで待っても、西側控室前のインタビュースペースに柴田がやってこない。

シビレを切らして、正面方向の暗幕に覆われた入退場口まで行ってみると、

柴田がそこに寝ていた。

 

寄り添っていたのは、デビュー戦を間近に控えた海野翔太。

柴田は左手で、自分のタイツをすこし緩めたり、

マウスピースをはずしたり、また噛んだりを繰り返していた。

その後、海野の手を借りて2~3度起きようと試みたものの、

力が入らないのか、起き上がることができない。

 

昨年、負傷してから古傷となっている胸椎のダメージか? あるいは頸椎か?

それにしても尋常ではない様子。

数名のマスコミが集まってきた。

 

柴田を置き去りにして、海野が動くわけにはいかない。

私は自分の判断でトレーナー室まで走り、

三澤威トレーナーを呼んできた。

 

三澤トレーナーと現場に戻ると、

林督元リングドクターが先に到着し、柴田に話しかけ反応を確認している。

その後、救急隊がやって来て応急処置をすると、

担架に乗せて柴田を救急車へ。

 

ドア越しに様子を見るかぎり、

柴田の反応がどんどん鈍くなっていくのがわかった。

 

そこでべつの心配が頭をもたげてきた。

脳とかに異常がなければいいけれど…。

周囲のみんなも同じ心配をしていた。

 

翌日、新日本プロレスから正式発表があった。

 

「検査の結果、硬膜下血腫が見つかり手術を行ないました。

手術は無事に成功し、現在は安静状態です。」

 

命に別状なし。

ひと安心。

だけど、社会復帰はどうなのか?

プロレスラーとして、ふたたびリングに立てるのか?

 

いやいや、大丈夫!

生まれたときから新日本プロレス。

柴田の生き場所は、新日本のリングなのだ。

 

 

柴田勝頼の生きざまに魅せられた1万人余の観客。

 

王者・オカダもエールを送った。

 

「柴田さんは約束を守る人。

『またやりましょう!』という約束をここでするんで、

しっかり約束を守ってくださいね」

 

プロレスラー人生18年の集大成たる闘いを見せてくれた柴田。

だけど、まだまだこんなものじゃない。

柴田は、さらにもっと進化していくはずなのだ。

 

時間はかかってもいい。

みんな、待っているから。

 

親愛なる柴田勝頼へ。

男の根性、見せてくれ!