「今年に入ってからサヨナラが多すぎる」


3・3大田区総合体育館で柴田勝頼がそう言った。


彼の言葉通り、日本人、外国人とここ数年、

新日本プロレスのトップ戦線を支えてきた選手たちが、

ゴソッと抜けた感は否めない。


それも含めて、新日本の底力をジャッジされる興行となった

4・10両国国技館大会『INVASION ATTACK2016』。


会場は、9078人(超満員札止め)の大観衆で埋まった。


トリを飾ったのはもちろん、IWGPヘビー級選手権。

オカダ・カズチカvs内藤哲也。


内藤支持の声が入場時からオカダを圧倒していた。

互いにキレキレの素晴らしい攻防を展開していくが、

予想通り、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンの

EVIL、BUSHIが介入する。


それでも内藤にブーイングは飛ばない。

ついに3人目のパレハが登場。

正体は、なんと真田聖也(SANADA)だった。

あまりのサプライズ。


真田の援護を受けてから、28分50秒、

レインメーカーを交わしのデスティ―ノで内藤が勝利。


試合後も4人の無法攻撃によって、

オカダと外道がリングで伸びてしまった。


「内藤、見損なったぞ!」という野次も飛んだが、

国技館の大勢を占めたのは拍手と内藤コール。


CHAOS勢が救出に飛び込んできた。

石井智宏が内藤に迫ると、内藤は「帰れ!」という仕草。

すると、すかさず場内には「帰れ」コールが鳴り響く。


聞いたことのない石井へのブーイング。

ここでは、内藤が正義なのだ。




マイクを持った内藤が、「トランキ―ロ!」と言ってから溜めを作ると、

会場一体となって、「あっせんなよー!!」の大合唱。


さらに、「ロス・インゴベルナブレ~ス」で溜めを作ると、

またも「デ・ハポン!!」の大合唱。


こんな光景、見たことがない。

30年近く現場を取材してきて、一度も見たことがない。

どれだけ内藤支持、内藤王者待望論が高まろうと、

ここまで介入があると、ブーイングが当たり前。


しかし、そんな常識を内藤が覆してしまった。

両国の磁場が狂ったのか?

両国大逆転現象…。


内藤哲也はここまでファンを掴んでいたのだ。


「蝶野さん、これ10年前ならファンの暴動騒ぎでしょう?」


放送席で私が特別ゲスト解説の蝶野正洋に振ると、

さすがの蝶野も驚いた様子。


「IWGPという最高峰のベルトを争う試合がこういうカタチになると

問題があるし、認められるのかどうか…」と言っていた蝶野も、

「まあ、内藤選手がお客の気持ちをしっかり掴んできたからじゃないかと」

とフォローせざるをえない感じで語った。


ずっと新日本を見てきた私が戸惑ったのだから、

蝶野が戸惑いを隠せないのは当たり前だろう。

なんせ蝶野は、暴動直撃世代のレスラーなのだから。





ビッグサプライズとなった真田の登場。

かつて、内藤とは団体の枠を超え比較されてきた。

また、全日本プロレス時代にはBUSHIと同期の間柄。




これは、約1ヵ月前の真田。

3・5ZERO1『旗揚げ15周年記念大会』(後楽園ホール)に

参戦したときの試合後の表情。


ヘアースタイルが一変していたので、

彼がマスクを脱いだ瞬間、私もすぐには分からなかった。


さらに強力な布陣となったロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン。

昨年6月下旬、メキシコCMLL遠征から帰国して9カ月…

新日本の主役どころか、カリスマ化しつつある内藤支持の声。


間違いなく言えるのは、4・10両国大会で

新日本プロレスが新たなステージへ突入したということ。


大会終了後の放送席。

4時間余のロングラン興行。

全9戦のうち、私は8試合の解説を務めさせてもらった。


完全燃焼。

燃えつきました!