私が「しんちゃん」という愛称で呼ぶ

プロレスラーは2人いる。


ひとりは、先ごろWWEと契約し、

正式に入団が決定した中邑真輔。





これは、22日、東京・六本木のハードロックカフェ東京で

行なわれた真輔のWWE入団(契約成立)会見のときの模様。


グレーのスリーピース・ス―ツでバッチリ決めた真ちゃん、

長身で腕も脚も長くてカッコいい!

早くもWWEスーパースターの雰囲気が漂っているのだ。


もうひとり、20年以上前から「しんちゃん」と呼んできた

男がいる。こちらは「晋ちゃん」である。


                                  Ⓒ大川 昇

そう、大谷晋二郎。

見ての通り、ニッポンイチ熱い男なのだ。


その晋ちゃんと一緒に、2月25日に広島市で

講演会を行なってきた。


講演のタイトルは、

プ女子が急増中!? まだ知らない「プロレス」の魅力。


今回の講演会、その経緯を説明するとメチャクチャ長くなる。

というのも、労働組合トータル支援企業『j.union株式会社』さんから、

講演のオファーをいただいたのが、ちょうど1年前。


主催は広島市の『マツダ労働組合』さん。

ということは、受講対象は当然、マツダ労働組合関係の方々。


同組合の「やる気応援プロジェクト」では、

さまざまな旬のジャンル、旬の人物などを招待して

講演会を開き、やる気、元気の発信源としよう!

という企画を推進しているという。


そこで、最近のプロレス人気がクローズアップされたようで、

なぜか、ワタクシ金沢のもとへ講演の依頼が舞い込んできた。


それが昨年2月下旬のこと。

以来、担当の方といろいろと話し合ってきた結果、

9月になってようやく企画が本決まりとなった。


ただし、いくら「脱ぐこと以外のオファーなら何でも受けるぜ!」を

モットーとしているオイラでも、

おそらくプロレスを知らないであろうと予想される一般企業の組合員の人たちに向け、

1時間半、プロレスの魅力を1人で語るのは至難の業だと思った。


そこで、いっそのことプロレスラーも呼んで、

私と掛け合いのトークにしよう、

そのほうが絶対に盛り上がるだろう、

そういう結論に達した。


そうなると、対象となるべき男は、

もうこの男しか考えられない。


大谷晋二郎だ。


昨年9月下旬、私が直接、大谷に連絡を入れ

事情を説明したところ、一発OKの返答。


さすが、晋ちゃんだ。


晋ちゃん曰く、

「中身はすべて金沢さんにお任せします」

とのこと。


だから、私サイドでは臨機応変に話を切り替えられるように、

一応の流れを書き連ねた台本を作っておいた。


プロレスを知らない受講者の方々にもとどくキーワード。

じつは、大谷の周囲にはいっぱいあるのだ。


アントニオ猪木


アニマル浜口


馳浩(現・文部科学大臣)


佐々木健介(現・タレント)


長州力


橋本真也


こういった人物の名前が出てくるような話の流れへ。

というか、大谷に自身のプロレスラー人生を語ってもらったら、

彼らの名前は必然的に出てくるのだ。


同時に、大谷とZERO1が独自に行なってきた活動…

チャリティプロレス、被災地プロレス、家庭訪問(ホームステイ)など、

まさに『やる気応援プロジェクト』の趣旨にピッタリ当てはまるではないか?


もうひとつ、論より証拠というか、語るより映像という部分もあるので、

10分余に編集したVTRを用意した。

編集してくれたのは、サムライTVでZERO1を担当しているKクン。


Kクンは私の希望通りというか、それ以上のものを、

わずか10分の映像のなかに詰め込んでくれた。


小学校プロレス、家庭訪問、被災地プロレスの模様。

さらに、大谷の魅力が凝縮された3試合。


大谷晋二郎vs佐々木健介(2005年8月、『火祭り』優勝決定戦)


大谷晋二郎vs関本大介(2010年11月、世界ヘビー級選手権)


大谷晋二郎vs高山善廣(2011年3月、旗揚げ10周年両国大会)


どれも説明の必要はないだろう。


橋本真也急逝を受けての『火祭り』で、橋本の最大の宿敵にして

新日本時代の師匠である健介を大谷が初めて超えた一戦。

試合後には感情に溢れた「プロレスの教科書」が公開される。


大谷が挑戦者として敗れた一戦だが、この関本戦で衝撃のシーンが見られる。

怪物・関本の逆水平チョップに対し、大谷が自ら胸を突き出し突っ込んでいくのだ。

前代未聞の攻撃的ディフェンスに驚いた関本が一瞬怯む。

これがヒントとなり、その後、エルボーに対して突進していく選手などが出てきたのだ。


奇跡の大成功となった旗揚げ10周年記念の両国大会。

メインンのリングへ向かう大谷はすでに泣いていた。

そして、この5日後に日本を東日本大震災という悲劇が襲うことになる。


敗れて大の字となった大谷がようやく立ち上がり、

満員の観客への感謝と、負けた悔しさを全身で表現する。

国技館には大「オ―タ二コール」がこだまする…。


というわけで、やれることはすべて用意してきた。

そういう気概で迎えた当日の本番。


講演会場は、超満員札止め。

大谷入場の前に、私はお客さんの感触を確かめてみた。


「みなさんのなかで、プロレスが好きなかた、

プロレスファンだと言えるかたはどれぐらいいますか?」


なんと、7~8割の人が一斉に手を上げてくれた。

その目を見ればわかる。

たしかに、プロレスファンの目をしている。

期待感いっぱいで、キラキラしているのだ。


「では、まったくプロレスを見たことがない、

知らないという人はいますか?」


最前列に座っていた女性2人組のうちのひとりが

ちょっと照れた表情で手を上げた。


だけど、ニコニコしている。

ちなみに、お二人とも美人だった(笑)。


これなら、もう決まったな!


「みなさんしだいで、どんな話をしようかと考えていましたけど、

これはもうディープにマニアックにいきましょう!」


それから、入場テーマ曲とともに大谷を呼び入れて、

予定の1時間半を15分ほど超えてプロレスを語った。

いや、プロレスラーというものを語り合った。


終了後は、撮影会、サイン会、握手会へ。

そのとき、先ほど手を上げた女性が話しに来てくれた。


「プロレスのことを知らなかったのに、とても楽しかったです。

今度、ぜひ会場にプロレスを観に行きたいと思います」


こんな嬉しい言葉は他にない。




お客さんたち全員を見送ったあと、

講演をお手伝いしてくれたスタッフのみなさんと

笑顔で記念撮影。


たかが2時間、されど2時間。

だけど、ここに至るまで1年間を要している。

少なくとも、この2時間でプロレスファンを1人増やすことができた。


その夜、大谷と打上げへ。

大谷御用達のお好み焼き屋さんで、

またプロレス仲間が増えた。


最初は3人でお好み焼き屋さんに入ったのに、

二次会の居酒屋に向かうとき、

メンバーは合計9人に増えていた。


プロレスの力、晋ちゃんの人柄だろう。

朝の4時過ぎに、大谷とホテルへ戻った。

なんと、大谷は午前7時発の新幹線に乗るという。

この日も、福島県白河の小学校で講演会を行なうのだ。


広島から白河へ。

約6時間の旅となる。


こっちの晋ちゃんも、やっぱりスゲェーや!!