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ノアの12・23大田区総合体育館大会は、

じつに4時間30分を超えるロングラン興行となった。


3度目の正直で鈴木みのるを破り、

メインイベントを勝利で飾った丸藤正道が

第24代GHCヘビー級王者に返り咲いた。


丸藤の共同インタビューが終わったのは、

午後7時40分。

次の取材目的地は後楽園ホール。

スターダムの興行は午後6時にスタートしている。


全5試合プラス安川惡斗の引退セレモニーがラインナップされていた。

果たして、メインイベントのワールド・オブ・スターダム選手権、

里村明衣子vs紫雷イオ戦に間に合うかどうか!?


雨が降りしきる中、大川昇カメラマン、三田佐代子さん、

ワタクシ金沢の3人はファンの波をかき分けながら、

タクシーを求め、傘もささずに赤坂♪…もとい、蒲田方面へと歩きはじめた――




GK  まさかの4時間40分興行だったねえ。

    まあ、全10戦だし、午後3時開始なら7時ぐらいまではやるだろうと思ったけど。

金沢 そうだね。だからスターダムのほうは午後6時開始で全5試合。

    セミファイナルに安川惡斗の引退試合が組まれていて、

    そのあと引退セレモニー。休憩時間があってメインという感じになっていたわけ。

    だから、惡斗の引退試合には間に合うだろうと予想していたんだけどね。

GK  あんた、週プロmobileをスマホでチェックしていたでしょ(笑)?

金沢 ハッハハハ、そうだよ。速報をやっていたから。

    で、体育館を飛び出したときには、引退試合が両軍リングアウト負けで、

    再試合に入っているころだったね。

    3人でズンズンと蒲田方面まで200メートルぐらい歩いて、

    ようやく三田さんがタクシーを掴まえたわけ。

    こういうとき、三田さんはすばしっこくて機動力があるから助かるんだよ(笑)。

GK  蒲田から水道橋ってけっこう距離あるよね?

    もし電車だったら、アウトだったろうね。

    1時間以上かかるだろうから。

金沢 そう、最初から大川カメラマンが「タクシーで行きましょう!」って言っていたから。

    だけど、高速道を使って、道はすいていたのにやっぱり30分はかかった。

    途中、週プロmobileをチェックしていたら、惡斗の引退セレモニーが終わっていたし。

    おもしろかったのはね、やっぱりタクシーの中でも三田さんは

    ずっとしゃべっていたんだけど、途中でしゃべらなくなったんだよ。

    「ネタが尽きたのかな?」と思っていたら、運転手がガンガン飛ばしたせいで、

    クルマ酔いしたんだって(笑)。 

GK  三田さんがおとなしくなったと(笑)。

    で、なんとか間に合って、ちょうどメイン前の休憩時間に到着したんでしょ?

    だけど、なんでそんなにスターダムに入れ込んでいたの?

金沢 いやいや、これはね、今年度の女子プロ界で最高峰カードと言っていいから。

    1年半前(2014年7月10日)、イオが王者で里村の挑戦を退けて、

    王座Ⅴ10に成功している。

    いい試合だったけど、それをもって里村を超えたとまでは言えない内容だった。

    実際、里村は今年7月、宝城カイリを破ってベルトを奪取し、

    11月には岩谷麻優にTKO勝ちと圧倒的な強さと安定感を見せて、

    女子プロ界の横綱ぶりを遺憾なく発揮していた。

GK  だから、アンタは『東スポ大賞』で女子プロレス大賞に

    イオが選出されたことに異議アリを唱えていたよね。

    アンタの『ときめきプロレス大賞』では、女子プロ大賞は里村で、次点が宝城だった。

金沢 そうだよ、その考えは変わらない。

    やっぱり今年は里村だよ。

    イオは昨年獲らせてあげたかったし、受賞するだけの実績と内容を残した。

    ただし、今年のイオは一歩退いていたから、大賞は里村で、その里村に

    やられてもやられても食らいついていった宝城が大賞候補の次点なんだよ。

    強い里村と3度シングルマッチをやって、1敗2引き分けだから大健闘だもんな。

GK  その一方で、イオを技能賞に選んでいるね。

    ロッキー・ロメロと並んで。

金沢 これはね、この1年半でイオは凄まじく成長しているから。

    むしろ、赤いベルトを落としてからのほうが断然上手くなっている。

    結果は出ていないけど、イオがからめば必ず好勝負になる。

    キャリアのない人間とやっても、正直まだまだ下手くそな選手が相手でも、

    イオは試合を成立させてしまうんだよ。

    あの天才的な運動神経のよさからくる受身の上手さで、

    見事に受けきるし、攻撃に移るタイミングも素晴らしい。

    逸女の上手さときたら、本家の逸材・棚橋も真っ青だよね。

GK  大絶賛じゃないか!

金沢 ただし、あまりに上手さのほうに走ってしまうと、ちょっと鼻につくわけ。

    そこを里村も指摘していたんだよ。

    なぜ、前面に出てこないのか!?って。

    やっぱり、スターダムはイオじゃないの?

    退いてる場合じゃないでしょう!?って。

GK  なるほど、そこで今回、里村の指名からイオが本気になったと。

    まして、スターダムとセンダイガールズの対抗戦もスタートしたわけだしね。

金沢 なぜ、今年の女子プロ大賞が絶対に里村かと言うと、

    実績はもちろんのこと、対抗戦に火を点けたのも里村だし、

    仙女の若い有望な選手を育てて、リングに3人も送り出しているから。

GK  ある意味、イオは雌伏期間にあったように見えて、その間、力を磨いていたと。

    だからこそ、今回、ひとり横綱である里村に、

    横綱の地位がハッキリ見えてきた大関のイオが挑戦する最高峰決戦となるんだね。

    で、試合はどうだった? イオがドラゴン・ス―プレックス(岩谷)、

    ダイビング・エルボードロップ(宝城)と里村に苦杯を舐めさせられた2人の大技から、

    完璧なムーンサルトプレスで里村を沈めたけど。

金沢 その前にね、入場で里村に釘付けになったよね。

    いつものガウンを着てリングインして、

    両手を上げて四方に向かってアピールするじゃない?

    あの立ち居振る舞いが、まるで横綱土俵入りのように見えてしまったんだよ。

    「カッコいい!男前だぜ!」ってね(笑)。

GK  イオは首のまわりに黒い羽のようなヒラヒラをまとっていたね。

金沢 あのコスチュームを見て、東スポの岡本記者が

    「あれはエリマキトカゲを意識したんですかね?」って…んなわけねーだろ!(笑)。

    それはともかく、1発1発の技が的確にビシビシっと決まって、

    里村の蹴りなんか壮絶なんだけど、なんか心地いい試合なんだよね。

GK  イオの受けの凄みも感じたし、空中戦になっても安心して観ていられる。

金沢 そう、南側客席の入口階段の上のバルコニーからケブラ―ダを放っても、

    ちゃんと着地してるんだよね。まるで猫のような運動神経だよ。

GK  敗れた里村は、イオの強さを認めたうえでまた挑戦すると。

    これで終わりじゃないんだって。

    負けても価値が落ちないし、スターダムのファンもそんな里村を支持している。

    さて、じゃあ、結論に入ろうか?

    紫雷イオはこの試合で横綱昇進を決めたのかな?




金沢 里村が、「女子プロ界のひとり横綱」と称されるのは、

    強さのほかに、品格、人間性といった横綱に必要なものを唯一備えているからでしょう?

    あとは、団体の代表として若い有望な選手を育てているけど、

    レスラーとしてだけじゃなく、人間としても育てている。

    仙女だけじゃなくて、女子プロ界全体を見たうえで、

    「絶対に女子プロブームを起こしてやりたい!」と宣言している。

    その里村と試合で互角以上にわたり合い、

    発言も団体のエースらしくなってきたイオは横綱昇進の資格は充分にあるよね。

    だけど、俺はこの試合、村田晴郎アナウンサーと並んで観ていたの。

    村田アナはサムライTVでスターダム中継の実況をしているし、

    俺なんかよりはるかにスターダムの試合を観ているわけ。

    そこでね、「村田さん、イオは横綱昇進決定でいいですかね?」と聞いたら、

    「横綱は二場所連続を求められるから、もうひと場所見ましょうか?」って。

    もちろん、笑いながらなんだけど、イオ本人も「自分にはまだノビシロがある」

    と言っているわけだから、もうひと場所、つまり来年の旗揚げ5周年記念大会、

    1・17後楽園ホールで宝城カイリの挑戦を受けた試合で決めたらいいのかなって。

GK  そう言えば、メイン終了後のリング上でイオにマイクを渡された宝城のアピールが、

    もうガッチガチのガチンコで、それはそれでよかったね。

    もうガチすぎて声が割れてるんだもん(笑)。

金沢 そうそう! 

    「私は2番は嫌だ、1番になりたい。今の試合を観ていて悔しくて悔しくて」ってね。

    痛いほど気持ちはわかるよね。

    里村に自分が奪われたベルトは自分が獲り返すと思っていたろうし、

    そこでイオがベルトを奪還した。

    しかも、自分が一度も勝っていない強い里村相手に堂々たる勝利。

    ふだんはおとなしい宝城だけど、リングに上がると一変するよね。

    ものすごい負けず嫌いだ。 

GK  その宝城の悔しさもイオは充分にわかっている。

    だから、来年の1・17後楽園ホールでのイオvs宝城の一騎打ちは、

    イオにとっても、宝城にとっても大きな宿題であり、必然の闘いになるね。

金沢 そこでイオが結果と内容をしっかり見せてくれたら、

    晴れて横綱昇進、新横綱誕生でいいんじゃないの?

GK  それにしても、アナタ、最近女子プロを語ると熱いねえ(笑)。

金沢 いや、ホントにこの仕事を始めて30年近くになるけど、

    いまになってようやく女子プロレスと女子レスラーの魅力に気付かされた感じかな?

    そういう点では、とくに里村とイオには感謝したいよね。