新日本プロレス『NEW JAPAN CUP2015』(以下、NJC)決勝戦が

開催された3・15広島サンプラザホール大会。


私自身、広島を訪れるのはなんと12年ぶり。

その12年前に取材で来た場所も広島サンプラザなのだが、

取材対象は旗揚げしたばかりのWJプロレスだった。


まさに、隔世の感がある。


あのときは、天候が前夜から荒れ模様で、

羽田発の朝の飛行機は予想通り欠航となった。


そこで、慌てて東京駅から新幹線に飛び乗った。

ふと見ると、よーく知った顔を発見。

当時、参議院議員だった大仁田厚の大将だった。


話し掛けるか否か…しばし迷う。

というのも、前日からの徹夜仕事で私は一睡もしていない。

広島まで4時間の旅、しっかり寝ていこうと思っていたからだ。


そんな思いで躊躇っていると、

「おい、なんだよ、編集長じゃないか!」

と大声で呼びかけられた。


あ、見つかった!

ちなみに、当時の私は『週刊ゴング』編集長。

もう、これは観念するしかない。


「なんだよ、同じ新幹線かい?

じゃあ、一緒に行こうよ!」


有無を言わさず、グリーン車へと連れていかれ、

大将の隣席に座らされた。


あとはもう、推して知るべし(笑)。

話し好きの大将の口は止まらない。

広島駅到着までたっぷりと4時間、

大将の話し相手となった。


「いや、俺も議員になっちゃったからさあ、

周りも勉強しろ!ってうるさいんだよね。

だから、こうやっていつも日経新聞を持ち歩いているんだよ」


そう言って、これ見よがしに日経新聞を広げる大将だったが、

ふと気が付くと、いつの間にやら日刊スポーツに夢中だった(笑)。


他にも、この日の5・31WJ広島大会に関していうなら、

エピソード満載なのだが、キリがないのでやめておこう。


というわけで、NJC決勝戦の舞台となる広島サンプラザは

ギッシリと観客で埋まった。


まず、大会開始前に1発目のピークが訪れた。

もしかしたら、このファーストインパクトがイチバン強烈だったかも!?


少なくとも私が知る限り、館内放送で放送席のゲスト紹介が行なわれたとき、

ここまでの拍手、歓声が沸き起こったのを見たことがない。

なんせ、アリーナの観客の半分以上が立ち上がっての

スタンディング・オベーション状態となったのだ。



ハイ、その主役はこの御方。

広島東洋カープが生んだ”不世出の天才打者”

前田智徳さん


あのイチローをして、「本当の天才は前田さん!」と

言わしめた孤高の天才バッターである。


生放送前から、テレ朝『ワールドプロレスリング』チームでも

野球好きの面々はみんなソワソワ、ワクワク状態。

もちろん、ワタクシ金沢もジャイアンツファンのくせに、

かなり浮き足立っていた(笑)。


そんななか、まったく野球を知らない山崎一夫さんは、

周りの興奮ぶりを見てどうもピンとこない様子。

ところが、いきなりのスタンディング・オベーションにビックリ仰天。


「前田さんという方がどれだけ偉大なのか、

ようやく分かりましたよ」と感心しきりの山ちゃんだった。


肝心のNJCのエンディングは、超サプライズ!

いま、もっとも旬の男、飯伏幸太がついに

新日本ヘビー級戦線でトップの称号を獲得した。



準決勝では、内藤哲也をシットダウン式ラストライドで撃破。


迎えた決勝戦では、NJC男としてⅤ4を狙う後藤洋央紀と

正真正銘の初遭遇。


なんと後藤を相手にラりアット合戦を挑み、ハイキック、

シットダウン式ラストライドから完璧なフェニックス・スプラッシュでトドメをさした。



ついに、新日本ヘビー級の勲章を手にした飯伏は、

「ボクはAJとやりたい!

IWGPヘビーでお願いします」

と、AJスタイルズに宣戦布告。


かくして、4・5両国国技館のメインイベントで、

ドーム級のドリームカードと言ってもいい

AJスタイルズvs飯伏幸太の初一騎打ち、

IWGPヘビー級選手権の実現が決定。


いま、風は飯伏に吹いている。

思いっきり、ゴールデン・スターを後押ししている。

いまの飯伏なら、このままの勢いでやってのけるかもしれない。


いや、すでに時代は、AJ時代から

飯伏時代へ移り変わろうとしているのかもしれない。

そう思ってしまうほど、劇的なNJC初制覇だった。


ちなみに、準決勝で実現した飯伏vs内藤2度目の一騎打ちは、

1・4中邑vs飯伏戦に続いて、ベストバウト候補にあげたくなるような

素晴らしい攻防だった。


残念ながら、これで飯伏に2連敗となる内藤だが、

今回のNJCでもっとも試合内容を評価されているのが内藤。


1回戦=カール・アンダーソン

2回戦=バッドラック・ファレ

準決勝=飯伏幸太


3戦とも、じつにいい試合だった。

いま現在は同級生の飯伏に先を行かれた格好だが、

内藤も完全復活へ向け確実に動き出している。



そして、大会終了後に予想だにしないNJCスペシャル、

ダブルメインイベント第2試合が待っていた。


ワープロチームの打ち上げ&反省会に前田さんが緊急参戦。

聞くところによると、前田さんはお酒を飲まないし、

番組の打ち上げなどにはほとんど顔を出さない人だという。


そんな前田さんがウーロン茶で、

最後まで打ち上げに付き合ってくれた。


なんといっても面白かったのは、

生放送の最後に前田さんが思わずポロリと口に出した一言。


「これで、4・5(よんてんご)が、がぜん楽しみになってきましたね!」


もう、これ以上の酒の肴はない。

アナウンサー、解説陣、スタッフとみんなが、

「プロレス用語である『よんてんご』と言ったからには、

前田さんはもうこっち側、プロレス側の人ですよ!」

と言うものだから、前田さんも照れまくる。


「なにか、プロレスファンに怒られそうですね。

ボクみたいなプロレス素人がプロレス用語を使ってしまって」


現役時代は、孤高の天才として近寄りがたい存在と言われていた前田さん。

打撃の求道者も、いちプロレスファンの立場になると、

本当に気さくで、物腰も柔らかく、素敵な人だった。


最後は、スタッフたちと記念撮影。

私もツーショットをお願いした。


ところで、NJCの準決勝、決勝の試合以外で気になった選手を聞いたところ、

前田さんは、矢野通、本間朋晃、石井智宏の名前をあげた。


さすが、天才は視点が違う。

もう、完全にこっち側の人なのであーる!