8・10西武ドームで”空前絶後の夏”が終わった。

24年目にして初めて『G1 CLIMAX』最終戦の舞台は

両国国技館を離れ、国技館のキャパシティをはるかに

上回る1万8000人の大観衆を動員している。


立地条件の悪さと、熱中症対策ばかりがクローズアップされていながら、

終わってみれば、大成功と言いきっていい最終戦であったと思う。


それでは、前々回更新ブログのコメント欄・52番目に書いてくれた

サリ―さんの「早く漫才がみたい!」のリクエストに応え、

お馴染みのお二人に思う存分に漫才を…NO~!

真面目に語り合ってもらおうではないかい。



                   


GK  くそー、読者からこの対談を漫才呼ばわりされたぞ!

    もう、こうなったらブログを閉鎖してやるからな。

金沢 それ、もう通用しないから。

    いいじゃん、漫才で。

    おもしろいってことなんだから(笑)。

    それに、ウチらが同一人物だってことに

    まだみんな気付いていないみたいだし。

GK  気付いてるにきまってるだろ!

    モッキーとミキティコ以上に気付かれているって。

金沢 なら早く本題へ、どうぞ。

GK  まあ、プロレスは初上陸、格闘技界としてみたら、

    2000年の8・27『PRIDE.10』以来、

    じつに14年ぶりとなる西武ドーム進出となるわけだよね。

    当日、台風が温帯低気圧に変わったけど、それでも雨は降ったりやんだり、

    風は終始強くて、決して天候に恵まれたとはいえない大会だったのに、

    1万8000人とよく入ったよねえ。

金沢 今シーズン、プロ野球でもオリックスの糸井嘉男(外野手)なんかが

    ゲーム中に熱中症で途中交代してるでしょう?

    いったい誰がこんなスタジアムを考えたのか!?って思ってしまうよね。

GK  ああ、西武の堤さんでしょ!

金沢 よしなさい、具体名をあからさまに出すのは!

    そんなこんなで(笑)、スタンドと屋根の間が全周フルオープンで、

    冷房の利かない西武ドームだけど、いったい誰がこんな球場を考案したのかって。

GK  だ・か・ら・西武のつつ…。

金沢 もう、やめよう。

    ライオンズの選手たちはそれでもがんばっているんだから。

    オレも埼玉県民歴16年になろうとしているしさあ(笑)。

    マイカーのナンバープレートはもちろん”所沢”なんだから!

    ただね、14年ぶりに足を踏み入れると、

    とくに印象に残っているものがなかったんだよ。

    だけど、バックネット裏にあるあの長い長い階段を見た瞬間、

    甦ってきたねえ、14年前のうだるような暑さと喪失感が…。

GK  ああ、あのVIPルームへつながる階段だね。

    テレビ朝日の控室もあの階段を上って、さらに1階分上にあった。

    暑さはわかるけど、喪失感っていうのは?

金沢 このバカちんがー!

    14年前の8・27では汗という汗が噴き出し切って、

    Tシャツのところどころが塩分で白くなってしまったんだよ。

    そこにきて、セミファイナルに登場したカシンこと石澤常光が

    わずか136秒でTKO負け。

    新日道場最強と称されていた石澤が惨敗を喫したんだから、

    オレは目の前が真っ暗になったよ。

GK  しかも、ハイアン・グレイシーにタックルを取られて、

    タコ殴りだったからね。

    まあ、練習期間が1カ月もなかったし、2週間前に

    G1の試合に出てるんだから、勝てるわけがないんだけど。

    それだって、今だからみんな理解できることであってね。

金沢 そうなんだよ。

    だけど当時は、それでも強いのがプロレスラーなんだって。

    まったく無茶な話なんだけどさあ。

GK  まあ、その昔を思い出しつつ、西武ドームの階段を上ったと…。

金沢 そうだよ。

    試合後の石澤を探してあの階段を何往復もしたんだ。

    涙が出そうなぐらいの悔しさと喪失感に包まれながらね。

    でも、今回は3往復が限度だったな!

GK  それ、単にトシのせいじゃん。

    もうプロレスの話に戻るよ。

    まあ、熱中症対策であったり、立地条件がよくないだとか、

    そういう面ばかりがクローズアップされていた西武ドームだけど、

    悪天候のなかでもよく入ったし、興行の内容もよかったんじゃないの?

金沢 そうだね、Tシャツ1枚なら耐えられる暑さと湿気だったし、

    メインが始まるころには外野から薄暮がさしてきて、

    蝉しぐれが聞こえてきた。

    風情があるというか、いままでにないプロレス会場の空気が

    幻想的なものさえ感じさせたよね。

GK  西武ドームのスタンド席は3万人収容なんだよね?

    発表は1万8000人だったけど、いい感じで埋まっていたし。

    じゃあ、肝心の試合でコレと思ったのは?

金沢 IWGPジュニアタッグ選手権がよかったね。

    現ROH世界タッグ王者のREDRAGON(カイル・オライリー&ボビー・フィッシュ)と

    タイムスプリッターズ(KUSHIDA&アレックス・シェリー)のマッチアップ。

    さすがにヤングバックスを破ったチーム同士の攻防だった。

GK  REDRAGONは飛んで、蹴って、極めて…とまさに日本向きのチーム。

    クッシ―もサブミッションは得意だし、シェリーのチェーンレスリングは

    名人芸だからね。

金沢 それを考えると、あれだけお客さんが沸いたけどまだ序の口でしょう?

    オライリー&フィッシュはまだまだ手の内をすべて出していない。

    この先、ジュニア戦線は盛り上がるよ、とくにタッグがね。

GK  そうだね、タイムスプリッターズ、REDRAGON、ヤングバックス、

    フォーエバー・フーリガンズ、TAKA&タイチとジュニアタッグの人材はいくらでもいる。

    完全復活したゴールデン☆ラヴァ―ズ(飯伏&ケニー)あたりも参入してくれば、

    もの凄い盛り上がりを見せそうだよね。

金沢 いま、日本のプロレスが世界水準だからね。

    WWEは別格として、その他、アメリカもイギリスにしても、

    独自の世界観を作っているメキシコでも日本のプロレスがテキストになってきている。

    だから、サッと溶け込んでくる選手が多い。


                  


GK  事実上の3位決定戦として行なわれた棚橋弘至vsAJスタイルズは

    どうだった?

    最後に、ジェフ・ジャレットとバレットクラブの合体という

    オマケまでついてきたけどね。

金沢 これはもう純粋に、試合は素晴らしかった。

    タナとAJは過去の戦績で1勝1敗だよね。

    タナのAJに対する評価は半端なく高いわけ。

    「彼はベスト・イン・ザ・ワールド」と言い切ったからねえ。

GK  逸材がそこまで言ったかね?

金沢 うん、これは2日前の横浜文体での話なんだけど、

    たまたま、ある選手と控室の外通路で会話していたんだよ。

    その選手が「AJのフェノメナ―ルってどういう意味なんですか?」って。

    だから、プロレス用語にするなら「天才とか怪物とかいう意味になると思う」って。

    そうしたら、その選手が「でも怪物っていうイメージじゃないですよね」って言うから、

    「そうだなあ、じゃあ棚橋弘至の”逸材”ってのが近いのかな?」って。

    そうしたらね、ついたての向こう側にタナが出番待ちしていたんだよ。

GK  会話がまる聞こえだったと(笑)。

金沢 そうなんだよ。

    で、その選手がいなくなってから、

    タナがニコニコしながら近づいてきたわけ。

    「AJを逸材なんて失礼ですよ。彼は天才ですからね!」って。

    そのあと、「彼こそベスト・イン・ザ・ワールドですよ」っていう

    言葉が飛び出したんだけどねえ。

GK  へぇー、タナがそこまで言ったんだ。

    だけど、タナとAJの攻防は本当に見事だったよね。

    相手の攻撃を読んでの切り返しが素晴らしかった。

金沢 これはかなり前なんだけどね、

    AJが1発でオカダからIWGPベルトを奪取した直後だったと思う。

    棚橋とどこかの会場で顔を合わせたときに、

    「ああ、早くタナとAJの試合が見たいなあ」って言うと、

    「オカダvsAJの試合ほど複雑になるとは思わないんですよ。

    むしろ、わりと単純な試合になるんじゃないかな? 

    それにお客さんがどう反応するかな?

    そういう部分での興味はありますよね」って言うわけよ。

    それを聞いていたから、なるほどなあと思った。

GK  どう、なるほどなの?

金沢 単純ということじゃなくて、わかりやすいわけ。

    タイプが似ているしね。

    タナは謙遜していたけど、やっぱり棚橋弘至は凄いと思ったよね。

GK  そりゃあ、プロレスは1人じゃできないからね。

    2人の逸材だか天才だかが絡めば、こうなって当然といえば当然だよね。

金沢 とにかく心地よかったね。

    最後のJJ(ジェフ・ジャレット)によるギターショットがなければ。

    あれがなかったら、AJも自分のヒールという立場を忘れて、

    握手とかしちゃったかもしれないよね。

GK  それにしても…JJは相変わらずなんだけど、あのデブのオッサン、

    バレットクラブと記念撮影したらダメでしょう(苦笑)。

金沢 あれは、新団体『GFW』副社長のスコット・ダモールだね。

    たしかにバレットクラブのTシャツを着るにはデブすぎた(笑)。

    西武ドーム大会でイチバン格好悪い人だったな。

GK  そんなオチがついたところで、メインイベントだね。

    2年ぶりの中邑真輔vsオカダ・カズチカの一騎打ち。

    2年前、G1を制しているオカダが公式戦で負けたまま

    現在に至っている唯一の相手が真輔だからね。

金沢 実現しそうで実現しなかった、とくに今年のNJCを制した真輔が、

    オカダのIWGPではなく、棚橋に奪われたイヤォなインターコンチに

    照準を絞ったせいでまた実現が遠くなったと思われた一戦が、

    実力絶対主義のG1で実現するという価値は大きいよね。

GK  イヤォ…じゃなく否応なしにぶつかる運命なんだから。

    この極上マッチと棚橋vsAJ、柴田vs後藤が実現するということで、

    急遽テレビ観戦からライブ観戦へと変えたファンも多いかもしれない。

金沢 24年目にして優勝戦の舞台を両国から西武ドームへ変えたG1だけど、

    あの空気は格別だったよ。

    たとえば、1・4東京ドームのときは、放送席でヘッドセットを装着していると、

    お客さんの歓声とかあまり伝わってこなくて戸惑うわけ。

    だけど不思議なんだよね、西武ドームは密閉されたスタジアムじゃないのに、

    観客の声援とか熱がビンビン伝わってくるんだよ。

    これがもし両国だったら、とんでもない状況だろうなっていうぐらいにね。

GK  いやあ、確かに沸いていたね。

    前半は明らかに真輔ペース、もう掌で転がしているよう感じた。

金沢 ところが、オカダにはすべての積み重ねを1発でチャラにしてしまう

    本物の一撃がある。

GK  それが、あの超高角度ドロップキック。

金沢 しかも、真輔のガードした両手の間をすり抜けて決まった。

    どういうこっちゃ!って思ったよ。 

GK  それに、ここイチバンのジャーマンス―プレックスも素晴らしい。

金沢 あんな高角度から投げられて、しかも固められるジャーマンは

    なかなかないと思うよなあ。 

GK  もう最後は死に物狂いで正面レインメーカー2連発から正調レインメーカー。

    真輔が脳天を打つような感じで一回転したよね、。

    あれもまあ壮絶な受身というか、レインメーカーの威力を象徴していたシーンだね。

金沢 試合の率直な感想を言うなら、真輔は自分の世界を貫いた、

    オカダは少しだけ未知の世界へ足を踏み入れた――そんな感じがしたね。

    だけど、どっちにしろ完全無欠のファイターにしてアーティストの

    真輔を破ったんだから、オカダ恐るべしがますます強くなったね。


                   


GK  試合後のコメントも同門対決だからなのか、

    お互いに対する特別な気持ちがあるからなのか、よかったよなあ。

金沢 「やっぱりメチャメチャ強いですよ。

   やっと1回勝っただけですから。

   中邑さんのほうがハートは強い、そういう中邑さんを見て

   僕は横で学ばせてもらいましたし」とオカダが言えば、

   真輔はピュアだよ、あいつは。非常に伝わってきたよ。

   ただね、ぶちのめしてやるのがひとつの俺の仕事だったのに…

   それも人生、イヤォだ」ってね。



GK 蝉しぐれの激闘、死闘かあ…またひとつ歴史を刻んだね。

   誰だって、こういう舞台の主役に躍り出たいはずだよな。

金沢 そりゃそうさ。

   べつに、このメインの闘いに鈴木みのる、永田裕志が出てきたって

   何の違和感もないよ。

   だからこそ、後藤洋央紀、内藤哲也はもう一皮むけなくちゃいけない。

   今は柴田にも後れをとっている。

   柴田が優勝戦に出てきたって、違和感はないもんな。

GK それじゃあ、恒例の今年度の『G1CLIMAX24』MVPは誰でしょうか?

金沢 はい、AJスタイルズです!

GK では、ベストマッチは?

金沢 はい、8・1後楽園ホールでのAJスタイルズvs鈴木みのるですな。

GK さすがは、通のオッサンだな!

金沢 スコット・ダモールよりはやせているよ、オレだってね(笑)。


※追伸 『ゴング』の入稿に追われているため、

    当ブログはしばし開店休業中になるかもしれません。

    ただし、必要な情報などは掲載するつもりです。

    みなさま、悪しからず…。

    元気に今夏を乗り切ってくださいね!