――つづき――


GK  さて、次は10日のスターダムですか?

    なぜにスターダムが出てくるの?

金沢 いやいや、平日の夜の後楽園ホール興行だったし、

    ドクトル・ワグナーJrをひさしぶりに観たかったから(笑)。

GK  アナタがスターダムに行くのって、昨年4月、両国国技館での

    ゆずポン(愛川ゆず季)引退試合以来だよね。

    なにか発見はあった? 

金沢 平日の後楽園ホールなのに集客も健闘しているなと。

    会場の空気がいいし、若くてルックスのいい選手がいっぱいいる。

    あとは、風香GMのリングアナぶりが少しだけ成長していた(笑)。

GK  お目当てのワグナーは?

金沢 ビビって、たじろいだ…って、自分で言っておいて懐かしいセリフだなあ(笑)。

    49歳だっていうけど、あの身体は30代とか20代と言っても通用するよ。

    むしろ、2000年前後に新日本ジュニアの常連だったころより

    グッドシェープされていたし、動きもまったく落ちていない。

GK  注目のメインイベントはどうだったかな?

    王者が紫雷イオで挑戦者が里村明衣子。

    2度目のシングルで前回は里村が勝っていると。

    まあ、女子プロ界の横綱が挑戦する立場に回ったわけだけどね。

金沢 単純に強くなったなあと。

    だから、オレが最後にスターダムを観た去年の両国でイオはチャンピオンになった。

    相手は、アルファ・フィーメルだったよね?

    正直、体格差、パワーの差は歴然としていたし、

    勝利にもイマイチ説得力を感じなかったんだよね。

    だけど、あれから1年2ヵ月…耐久力、体力に格段の進歩があった。

    精神的にも自信があるからか、慌てないもん。                          
GK これがダメならこれ…という感じで次々に身体が反応しているよね。







金沢 ただ~し、試合後に里村がマイクで言ったよね。
    「このまま退いたら、ただのベテランの女子プロレスラーになってしまう。
    もう一度、挑戦させてください」って。
    これはある意味、まだまだスゴイ試合ができるよってことじゃないの?

    里村には自信があるんだよ。

    一方のイオはまだまだ伸びるし進化していける。

    オレ、本当はね、紫雷姉妹で活動しているころから

    イオの試合はけっこう見てるんだよ。

    ZERO1のリングによく上がっていたからね。

    当時の印象はただ運動神経がよくて、ハッとするような飛び技ができると。

    あの当時に比べたら、いよいよ本物になりつつあるなあと思った。 

GK  つまり、これで終わりじゃもったいないと。

    イオvs里村は、また観たいマッチアップだよね。

金沢 女子プロ高齢化社会といったら、いろんな人たちに怒られそうだけど、

    スターダムには若さと明るさと未来を感じる。

    そこがイチバン印象に残ったんだよね。






GK  さあ、いよいよ最後の話題だ。
    14日、後楽園ホールで開幕したZERO1の『火祭り2014』だけど、

    戦前に公式ツイッターで「開幕戦のチケットが売れていない」とフロントからの

    ツイ―トがあって、ちょっと物議をかもしたよね。

金沢 気持ちは分からなくもないけど、いや痛いほどに分かるけど、

    大谷晋二郎が絶対に弱音を吐かない、絶対に諦めないレスラーなんだから、

    やっぱりフロントサイドのアレはよくないよ。

    もっと違うやり方でアピールしてほしかった。

    何度も言うけど、気持ちは痛いほど分かるんだけど…。

GK  この1年の不入り、今年に入ってからの迷走ぶりを見ているからね。
    後楽園ホールはガラガラで、橋本大地が退団、去年の火祭り覇者にして

    ビッグプッシュしていたジェームス・ライディーンは契約解除と

    ネガティブな話題ばかりだった。 

金沢 ところがどっこいだったよね。

    ZERO1は生きていた。

    『火祭り』伝説は健在だったし、もう開幕戦で大炎上した。

    正直いって、オレだってブログで煽っていたくせに、

    半信半疑というか、ここまでやってくれるとは予想もしていなかったから。

GK  13日は日曜日だったから、南側や北側をクローズできない仕様になっている。

    全面開放のホールだけに集客がよけいに心配されたけど、

    7割方埋まったよね。今年イチバンの集客だったと思う。

金沢 そのお客さんたちに応えるため、またフロントのツイ―トが

    発奮材料になった部分もたしかにあると思うんだけど、

    公式戦5試合はすべて壮絶な熱い闘いだった。

    これはZERO1救済とか判官びいきとか、

    そんな失礼な感情じゃないよ。

    そんな気持ちで語ったところで大谷は喜ばないからね。

    今まで取り上げた新日本、ノア、W-1、スターダムの大会と

    あえて比べさせてもらうと、ZERO1の『火祭り』開幕戦が

    イチバン内容が充実していたと思うし、

    最高にオレ個人の心には響いてきたよ!

GK  選手たちの尻に火が点いた感じがあったね。

    遅ればせながら、まさに火祭り状態で。


                


    

金沢 オレはね、この後楽園ホール大会が終わってから、

    いろんなことを考えさせられたんだよ。

    戦前、耕平が耕平らしくない発言をしているんだ。

    「どこかの団体が置き忘れているストロングスタイルをお見せする」

    とか言ったんだけど、それってパッケージプロレスでいま独走中の

    新日本をさしていることは明らかじゃん。  

    のんびり屋の耕平は本来そんな言葉を絶対に

    口にしない男だからこそ、「えっ!?」っと思った。 

GK  たしかに、そうだよね。

    批判とかじゃくて、そういう発言で自分自身を追い込んでいるような…。

    まず、公式戦の初戦となった横山佳和vs橋本和樹(大日本)だけど、

    2人はアニマル浜口ジムに同時期に在籍していたんだけど、

    まずレスリングから始まってバチバチの攻防の末、

    両者KOという結果に終わった。

金沢 ふつう両者KOって不自然な終わり方が多いんだけど、

    これは納得だった。

    和樹の頭突きがゴッツンゴッツンと4連発で入ったのかな?

    3発目と4発目は横山も打ち返して合い打ちになったんだけど、

    3発目で横山の額が割れて大流血した。

    4発目で両者が大の字になった直後、両選手の状態を確認して、

    即レフェリーがゴングを要請している。

    あそこで悠長にダウンカウントなんか入れていたら説得力がまるでなくなる。

GK  そうだね、あの即時の判断はよかった。

    ブーイングだの野次だの延長コールだの起こる暇もない結末だよ。

    いきなり、やってくれたなあって。

金沢 ダメージはあるんだけど、ふらつきながら引き揚げてきた横山が

    血だらけで笑っていたんだよ。

    あの笑いは、ダメージより充実感からくるものものだろうね。

    横山も頼もしくなったなあって嬉しかったよ。

GK  次が崔領二と小幡優作の公式戦だけど、いきなり領二の左ハイキックが

    小幡のアゴに入って、小幡が腰から崩れ落ちた。

    あれも戦慄が走ったよね。

金沢 領二は胸板から首のあたりを狙ったんだろうけど、

    やっぱり身長差があるから、アゴに滑り込んで入ったんだと思う。

    あれはもう総合とかのKOシーンを彷彿させた。

    領二の蹴りは、いわゆるナイマン蹴りというやつだったよね?

    脚が遅れてせり上がってくるから軌道が読めない。

    もし、レガ―スを装着していなかったら、一撃KOだったかもしれない。

GK  その後の領二の攻撃も凄まじいかぎりだった。

    小幡を蹴りまくって、リフトアップして場外に投げ捨てたり…

    彼のポテンシャルが存分に発揮され、とにかく強い。

    小幡はよく心が折れなかったなあと思うよ。

金沢 極端にいうと、「崔領二、キミはいったい何年間眠っていたんだ!?」と言いたくなる。

    オレは、デビュー当初から領二を見ているし、彼が内臓疾患で

    レスラー生命の危機に瀕していたときの状況も知っている。

    だけど、領二というレスラーの持っている肉体的なポテンシャルは、

    あのジャンボ鶴田がかぶってくるぐらい恵まれていると昔から感じていた。

    身体全体のパワーが桁外れなんだよ。

    ただ、精神的なものなのか試合にムラがあるんだよなあ。

    明るくて、礼儀正しくて、頭もいいけど、トンパチでねえ。

GK  なるほどね。

    それにW-1ではデスぺラードに所属していて、

    ヒールとして縦横無尽に暴れていて、あれは向いているよね。

    彼はヒールで押し通したほうがいいかもしれない。

金沢 その強い領二に小幡は逆転勝ちで金星を奪った。

    小幡もこれまでの小幡とはひと味違った。

    折れなかったし、雑にもならなかったし、集中力も途切れなくて、

    最後のスワンダイブ式顔面ダブルニードロップにも説得力があった。

    目のあたりを直撃したこともあって、領二がしばらく立てなかったからね。

GK  公式戦3試合目が未知との遭遇…関本大介vs鈴木秀樹。

    これも、おもしろい試合になったよね。

    鈴木を相手に関本もちゃんとレスリングができるところを見せつけたし。

    途中から、思ったとおりで関本の極太チョップと鈴木のエルボーの打ち合いになった。

    ただし、鈴木はカチ上げ式の欧州式エルボーじゃなく、

    長身を生かして上から打ちおろすような強烈なエルボーで対抗していたね。

金沢 おもしろかったのは関本が先にダブルアーム・ス―プレックスを放って、

    そのあとに鈴木がジャーマン・ス―プレックスを見舞ったこと。

    腕十字にきた鈴木を関本が力づくでリフトしたシーンも

    柔vs剛の対比があってよかった。

    鈴木のドラゴン・ス―プレックスも見事なブリッジだったよ。

GK  そのあとには、ワンハンド・バックブリ―カ―&ショルダー・ネックブリ―カ―の

    ロビンソン殺法も出た。まあ、オールドファンにはたまらないよ(笑)。

金沢 最後は、ジャーマン、極太ラりアット、ぶっこ抜きジャーマンで、

    関本が辛勝した。鈴木のダブルアーム・ス―プレックスを

    完封したのが勝因なんだけど、気持ちのいい闘いだったよ。

    しっかり握手をして、互いに再戦を望んでいたしね。

GK  鈴木はおもしろい存在だね。

    ああいうオーソドックスな選手はいま反対に目立つ。

    IGFを離れてフリ―になったことが吉と出た感じ。

金沢 むかし、ああいう選手が国際プロレスにきていたなあって。

    ヨーロッパのまだ見ぬ強豪って感じで。

    コメントもカシンの名前を出したり、掴みどころのないところがまたいい(笑)。


                 



                 




GK  次は、耕平vsデーモン植田か…これも想像以上だった。

    デーモン水(毒霧)を浴びたあとの耕平が領二同様に鬼になったね。

金沢 もうメッタメタのメッタ蹴りに遭ってデーモンは七転八倒していた。

    小幡同様によくデーモンは折れなかったと思う。

GK  なにか船木戦での不完全燃焼を晴らすかのような暴れっぷりだったね。

    ところが、2度目のデーモン水からルシファー・ハンマー、ラりアットで

    デーモンが大逆転勝利。

金沢 最後のラりアットも説得力があった。

    ああ、デーモンも見かけだけじゃくて、成長してるなあと。

    なにか言葉にするなら、ここまでの4試合は勝者も敗者も落ちていないんだよね。

    闘った両選手とも評価できる試合が続いているなあと。

GK  そして、トリに組まれたのが大谷vs田中の炎武連夢対決。

    なんとなく、ここ数年の炎武連夢対決と雰囲気が違っていなかった?

金沢 まずハッキリ言えることは、ここ数年で田中の評価が急上昇していること。

    そりゃあ、ZERO1はもちろんのこと、新日本に上がろうがノアに上がろうが、

    つねにベストコンディションで底なしのスタミナと

    強さ、上手さを見せつけるんだから評価されて当然だよね。

GK  正直そんな田中に比べると、大谷はこのところコンディションもイマイチだし、

    名勝負と言われる試合もあまり見られなかった。

    大谷も丸藤同様に、リング外が忙しすぎるんだよ。

金沢 ところが、この日は大谷晋二郎の試合だった。

 勝ったのは田中だけど、大谷の試合だったよ。

    オレはひさしぶりに「大谷晋二郎を見た!」という思いがするよ。

GK  たとえば、どういうところで?

金沢 まず先に入場した大谷がリング中央でアグラをかいて、

    田中の入場を待ち受けていたよね?

    ヘビー級として海外遠征から帰国して、佐々木健介のIWGPヘビーに

    初挑戦したときのパフォーマンスだけど、その試合が新日本所属として

    最後の試合になった。直後に旧ZEROーONEへ移籍したからね。

    それから”蝶野デビュー25周年興行”のメインで

    中邑真輔のIWGP王座に挑戦したときも同じパフォーマンスを披露した。

    なにかの覚悟を持って挑むときだけ、大谷はアレを見せるんだよね。

GK  そういえば、試合でも懐かしいというか、ここ最近見ない技が出たよね。

    カウンターのドロップキックなんか新日本のジュニア時代以来でしょ?

    雪崩式フランケンシュタイナーもジュニア時代の得意技だし。

金沢 もっと原点の技も出ていたよ。

    田中の身体を両脚でコントロールしてから腕十字に入ったよね。

    あれなんか、新日本道場で覚えた腕十字の入り方だからね。

    遡れば、カール・ゴッチ式なんだけど…健介なんかも試合で使っていた。

    たしか鈴木みのるも見せたことがあるはずだよ。




 GK だけど、本当の大谷晋二郎が大爆発したのは試合後だったかもしれないね。

    この見事なまでの大の字を見てよ。これぞ”大の字”の見本みたいだよ。

    このあと起き上がってからも、「来いよ!田中」と言いながら、

    目に涙を浮かべながら迫っていった。

金沢 負けるときは大の字。

    これぞ大谷晋二郎ですよ!

    そして試合後の”大谷劇場”が待っていた。

    悔しがって涙を浮かべ、抑えようのない感情が爆発した…。 

※④へとつづく……。